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【徹底解説】オフショア開発のリスク7選と失敗を防ぐための回避策

システム開発のコストを抑える有効な手段として、海外のリソースを活用するオフショア開発が注目されています。

しかし、「言葉の壁が不安」「品質は大丈夫か」といった懸念から、導入に踏み切れない経営者も少なくありません。

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進への投資は安価ではなく、失敗すれば企業の成長に大きなブレーキをかけてしまいます。だからこそ、リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。本記事では、オフショア開発に潜むリスクと回避するための実践的なノウハウを解説します。漠然とした不安を解消し、貴社のシステム開発を成功に導くための判断材料としてお役立てください。

記事監修者

DX開発パートナー

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

オフショア開発の現状とリスクを理解すべき理由

国内のIT人材不足が深刻化する中、多くの日本企業が開発拠点を海外に求めているのです。

かつては「コスト削減」が主目的でしたが、現在は優秀なエンジニアを確保するための「リソース確保」へと目的が変化しつつあります。

しかし、海外での開発には国内とは異なる特有のリスクが存在します

リスクを事前に把握しコントロールできれば、オフショア開発は強力な武器になります。まずは現状とリスク管理の重要性を正しく理解することから始めましょう。

なぜオフショア開発で「リスク管理」が成功の鍵を握るのか?

システム開発において、リスク管理はプロジェクトの成否を分ける最も重要な要素です。

特にオフショア開発では、物理的な距離や文化の違いがあるため、問題が発生した際の対応が遅れがちになります。

もしリスク管理を怠れば、バグの修正や仕様の変更といった「手戻り」が頻発します。手戻りが発生すると、修正のための追加費用や時間がかかり、当初見込んでいたコストメリットが消えてしまうでしょう。

利益率や回収期間を比較し、限られた資金を有効に配分するためにも、リスクによる損失を計算に入れる必要があります。

リスクを未然に防ぐ仕組みを作ることが、高い費用対効果(ROI)を実現するための近道です。

2025年以降の最新トレンド:円安や人件費高騰によるリスクの変化

近年の急激な円安や、新興国の経済成長に伴う人件費の高騰により、オフショア開発のコスト構造は大きく変化しています。

かつてのような「圧倒的な安さ」だけを求めて開発を依頼するのは難しくなってきました。

JETRO(日本貿易振興機構)の「2023年度 海外進出日系企業実態調査」によれば、2024年の昇給率見通しにおいて、ベトナムは5.8%、インドは9.4%など、主要国での賃金上昇率が高止まりしている現状が浮き彫りになっています。

エンジニアの単価が上昇傾向にあるため、単にコストを下げることだけを目的にすると、期待通りの成果が得られない可能性があります。

今後はコストだけでなく、「高度な技術力」や「開発スピード」といった付加価値を重視する必要があるのです。

市場の変化を見極め、どの国のどの企業とパートナーシップを組むかが、ビジネスの成長を左右するでしょう。

必ず押さえるべき「オフショア開発の主なリスク」7選

オフショア開発を成功させるためには、どのような落とし穴があるのかを具体的に知っておく必要があります。

漠然とした不安を明確な課題として認識することで、適切な対策を打てるようになるからです。

代表的なリスクとして、以下のリスクが挙げられます。

  • コミュニケーションの壁と認識の齟齬
  • 品質管理の難しさと納品物のクオリティ低下
  • 納期遅延と進捗管理の不透明化
  • セキュリティ・情報漏洩への懸念
  • 知的財産権(IP)や契約に関するトラブル
  • 想定外のコスト増加
  • 地政学リスクとカントリーリスク

オフショア開発で特に注意すべき7つの主要なリスクについて、詳細に解説します。

コミュニケーションの壁と認識の齟齬

海外のエンジニアと協業する際、最大の壁となるのが言語と文化の違いによるコミュニケーションの問題です。

日本語が話せる現地の担当者がいたとしても、細かなニュアンスまで正確に伝わるとは限りません。

例えば、発注側が「言わなくても分かるだろう」と考えていることでも、開発側には全く伝わっていないケースが多く存在します。

日本のビジネス現場に特有の「阿吽の呼吸」や「空気を読む」文化は、海外では通用しないと考えるべきです。

認識のズレを放置したまま開発が進むと、完成したシステムが思っていたものと違うという事態に陥ります。

小さな誤解が積み重なり、最終的に大きな手戻りコストを発生させる原因となるのです。

品質管理の難しさと納品物のクオリティ低下

日本と海外では、品質に対する意識や基準が異なる場合があります

日本人が当たり前と感じる「使いやすさ」や「見た目の美しさ」といった感覚的な品質は、明確に指示しない限り重視されないことが多いです。

「直感的に使えるシステムを」といった曖昧な要望では、機能としては動作しても、現場では使いづらい仕上がりになる場合があります。

仕様書に書かれていない部分は、開発側の独自の判断で作られてしまうからです。

どのような品質を求めるのかを明確にし、開発プロセスの中で確認する仕組みがなければ、品質をコントロールできません。

品質基準のすり合わせ不足は、納品後のトラブルに直結する深刻なリスクです。

納期遅延と進捗管理の不透明化

開発の全工程を現地に任せきりにしてしまうと、プロジェクトの進捗状況が見えにくくなるというリスクがあります。

現地の文化によっては、問題が発生していても直前まで報告が上がってこないことがあります。

定期的な報告の場を設けていないと、「順調です」という言葉を信じるしかなく、状況を正確に把握できません。

結果、納期の直前になって「実は終わっていない」と報告される最悪の事態を招きます。

プロジェクトの進捗を可視化する仕組みがない丸投げは、納期遅延のリスクを常に抱えています。物理的な距離があるからこそ、国内開発以上に頻繁な確認と管理が必要です。

セキュリティ・情報漏洩への懸念

システム開発では、顧客情報や機密データを扱うため、情報漏洩は企業の信用に関わる重大なリスクです。

開発会社が国際的なセキュリティ基準を取得していたとしても、個々の担当者の意識まで高いとは限りません。

外注先の管理が甘いと、サイバー攻撃だけでなく、内部の人間による不正な持ち出しのリスクも高まります。

特にオフショア開発においては、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2024」でも指摘されている通り、サプライチェーンの脆弱性を突いた攻撃が深刻化しています。 

特に海外では、データの取り扱いに関する法的規制や商習慣が日本とは異なる場合があるのです。現地のセキュリティ環境やデータの管理体制について、契約前に厳重にチェックする必要があります。

知的財産権(IP)や契約に関するトラブル

開発されたシステムやソースコードの権利が誰に帰属するかは、後々のトラブルの原因となりやすいポイントです。

国によっては、著作権や知的財産権に関する法律が日本とは大きく異なる場合があります。日本の常識で契約を進めてしまうと、法的な保護が十分に受けられず、不利な立場に立たされるかもしれません。

例えば、契約書に明記がない場合、開発会社側が著作権を主張し、自社で自由に改修できなくなる恐れがあります。

この場合は、どの国の法律を基準にするかを決める手続きが不可欠となります。日本の法律を選ぶのか相手国の法律を採用するのか、契約を結ぶ前に確定させておきましょう。

一般的には日本の法律が優先されますが、現地の企業から自国の法律を適用したいと提案される場面もあります。

不測の事態を防ぐためにも、双方が納得できる条件を丁寧に見つける作業が大切です。

想定外のコスト増加

コスト削減を期待してオフショア開発を選んだにもかかわらず、結果的に高くついてしまうことがあります。

なぜなら、目に見える開発費以外の「隠れコスト」を見落としている場合が多いからです。

例えば、コミュニケーション不足による手戻りが発生すれば、修正のための追加費用がかかります。

また、現地への渡航費や、通訳・翻訳にかかる費用、日本側の管理工数なども考慮しなければなりません。

費用対効果を計算する際は、費用の見積もりを正確に把握することが重要です。

初期費用だけでなく、運用費や人件費も含めた「総投資額」で判断しなければ、正しいROIは算出できません。

地政学リスクとカントリーリスク

オフショア開発特有のリスクとして、対象国の政治情勢や自然災害、インフラの不安定さが挙げられます。

急な政権交代やデモ、紛争などが発生すれば、開発業務が完全にストップしてしまう可能性があります。

また、電力供給が不安定な地域では、計画停電や通信障害によって作業が遅れることも珍しくありません。

日本とは異なる祝日や宗教的な行事(ラマダンなど)も、スケジュールに影響を与える要因となります。

一国に集中して開発拠点を置くと、その国のリスクを全面的に被ることになります。万が一の事態に備え、リスク分散の観点から複数の国や拠点を持つことも検討すべきでしょう。

オフショア開発のリスクを最小限に抑えるための対策

ここまでに挙げたリスクは、適切な対策を講じることで大幅に低減させられます。

「丸投げ」をせず、外部のプロと協力して事業を成功させる「戦略的パートナーシップ」と考えることが重要です。

発注者側が主体性を持ってプロジェクトに関わることで、失敗の確率は劇的に下がります。

以下、4つのオフショア開発のリスクを最小限にする対策を紹介し、それぞれを解説します。

  • ブリッジSE(BrSE)の選定と役割の明確化
  • アジャイル開発の導入による「早い段階での軌道修正」
  • 仕様書の徹底したドキュメント化と「図解」の活用
  • 強固なセキュリティ環境の構築と秘密保持契約(NDA)

ブリッジSE(BrSE)の選定と役割の明確化

日本側と現地エンジニアの間に入り、橋渡し役となる「ブリッジSE」の存在は極めて重要です。

彼らは単なる通訳ではなく、ビジネスの要件を技術的な仕様に翻訳して伝える役割を担います。

優秀なブリッジSEがいれば、言葉の壁を超えて正確な指示を出し、認識のズレを防ぐことができます。

選定の際は、日本語能力だけでなく、日本のビジネス習慣や開発プロセスへの理解度を確認しましょう。

また、ブリッジSEに任せきりにせず、自社の担当者とも密に連携を取れる体制を作ることが大切です。コミュニケーションのハブとなる人材の質が、プロジェクトの円滑な進行を左右します。

アジャイル開発の導入による「早い段階での軌道修正」

要件を最初に全て決めてから開発するのではなく、短いサイクルで開発と確認を繰り返す「アジャイル開発」の導入が有効です

実際に動くソフトウェアをこまめに確認することで、認識の齟齬を早期に発見できます。

仕様に関する小さな疑問や確認事項は日々発生するため、すぐに解消できる環境が必要です。

1〜2週間ごとに成果物を確認すれば、万が一方向性が違っていても、最小限の修正コストで済みます。

こまめにデモを確認することは、発注者側がプロジェクト管理をする上で最低限すべき行動の一つです。完成直前での大きな手戻りを防ぎ、実用性の高いシステムを作り上げることができます。

仕様書の徹底したドキュメント化と「図解」の活用

言葉での説明だけでは伝わりにくいニュアンスを補うために、詳細なドキュメントと視覚的な情報を活用しましょう。

画面の遷移図やワイヤーフレームなど、図解を多用することで、言語の壁を越えた理解が可能になります。

ボタンの配置やデータの表示方法といった細かい仕様についても、図で示すことで誤解の余地を減らせます。

さらに、ドキュメントは常に最新の状態に保ち、決定事項は必ず記録に残すことが大切です。

「言った言わない」のトラブルを防ぐためにも、仕様書は契約の根拠となる重要な資料です。手間はかかりますが、丁寧な資料作成が結果として開発効率を高め、品質の向上につながります。

強固なセキュリティ環境の構築と秘密保持契約(NDA)

情報漏洩リスクに対抗するためには、物理的な対策と法的な対策の両輪が必要です。

開発環境へのアクセス権限を厳格に管理し、不要なデータの持ち出しができないような技術的な制限を設けましょう。

例えば、VDI(仮想デスクトップ)を導入し、現地の端末にデータを保存させないといった対策が有効です。

また、開発会社とは必ず秘密保持契約(NDA)を締結し、違反時のペナルティを明確にする必要があります。

信頼できる開発会社は、ISMS認証などのセキュリティ基準を取得し、情報を厳重に管理しています。

契約前にセキュリティ体制をチェックシートなどで確認し、不安要素を取り除いておきましょう。

国別に見るオフショア開発のリスクと特徴の比較

オフショア開発の委託先として選ばれる国には、それぞれ異なる特徴とリスクがあります

自社のプロジェクトの性質や予算、求める品質に合わせて、最適な国を選ぶことが成功への第一歩です。

ここでは、主要なオフショア開発国であるベトナム、フィリピン、インドネシア、中国の4カ国について、その特徴と留意すべきリスクを比較解説します。

ベトナム:親日度が高く人気だが、人件費上昇と離職率に注意

ベトナムは親日的な国民性を持ち、勤勉なエンジニアが多いことから、現在日本企業に最も人気のあるオフショア先の一つです。

政府がIT教育に力を入れており、若くて優秀な人材が豊富に供給されています。

しかし、人気が集中しているため、近年は人件費が上昇傾向にあります。

また、エンジニアの流動性が高く、より良い条件を求めて短期間で転職してしまう「ジョブホッピング」のリスクには注意が必要です。

プロジェクトの途中で主要なメンバーが抜けると、引き継ぎに時間がかかり進捗に影響が出ます。

長期的な体制維持のためには、定着率の高い開発会社を選ぶか、人材のリテンション対策を確認しておきましょう。

フィリピン:英語力とホスピタリティが魅力だが、インフラ面に懸念

フィリピンの最大の魅力は、英語が公用語であり、コミュニケーションがスムーズな点です。

欧米文化の影響を受けているため、デザインやUI/UXの感覚も比較的日本や欧米に近いものを持っています。

一方で、台風などの自然災害が多く、電力や通信といったインフラ面での脆弱性が懸念されます。停電やネット回線の不具合によって、開発作業が一時的にストップするリスクを考慮しなければなりません。

明るくフレンドリーな国民性は魅力ですが、納期に対する意識が日本人ほど厳格でない場合もあります。

インフラのバックアップ体制が整っている会社を選び、進捗管理を丁寧に行うことが重要です。

インドネシア:豊富な若年層と市場成長性が魅力だが、宗教と文化の配慮が必要

インドネシアは東南アジア最大の人口を抱え、IT市場も急速に成長しています。

親日国であり、若くて意欲的なエンジニアが増えていることから、将来的なポテンシャルの高いオフショア先として注目されています。

注意点としては、イスラム教徒が多いため、宗教的な習慣への配慮が必要なことです。特にラマダン(断食月)の期間中は、業務効率が落ちたり、休暇取得が増えたりする可能性があります。

文化的な背景を理解し、スケジュールに余裕を持たせることがトラブル回避につながります。

また、法制度や税制が複雑な場合があるため、現地の事情に詳しいパートナーと組むことが推奨されます。

中国:圧倒的な技術力とスピードだが、コスト増と地政学リスクを考慮

中国はオフショア開発の歴史が長く、高度な技術力と豊富な実績を持っています。

地理的に近く時差も少ないため、日本企業との連携がしやすい点がメリットです。漢字文化圏であるため、仕様の理解も早いです。

しかし、近年は人件費が大幅に高騰しており、コストメリットは薄れています。また、カントリーリスクや政治的な緊張関係がビジネスに影響を与える可能性も否定できません。

単純な開発案件よりも、AIやビッグデータといった高度な技術を要するプロジェクトに向いています。コストよりも技術力やスピードを最優先する場合に、有力な選択肢となるでしょう。

よくある質問(FAQ)|オフショア開発のリスクを回避したい方々の声に回答

Q1. リスク対策にお金をかけると、国内の開発より高くなりませんか? 

A1. 管理を徹底することで、最終的な総コストは国内より低く抑えられます。 

初期の見積もりだけでなく、修正作業や意思疎通の手間を含めた全体予算で考える必要があります。

例えば、指示のズレで作り直しが発生すると、安いはずの開発費が大幅に膨らむのです。 管理体制を整える費用は、不要な出費を防ぐための保険のような役割を果たします。 

結果的に品質の高いシステムが予定通りに完成して、投資に対する効果を最大化できます。

Q2. 優秀なブリッジSEを見極めるために、何を確認すべきですか? 

A2. 言葉の壁を越えるだけでなく、日本の商習慣や技術的な背景を理解しているかを確認します。 

自社の要求をそのまま伝えるのではなく、現地の文化に合わせて翻訳して伝える能力が求められます。

見極め方法として、過去にトラブルが起きた際、どのように現場を動かして解決したかを具体的に質問してください。 

また、進捗状況を数字や図で論理的に説明できるかも、重要な判断基準となります。 技術と調整力の両方を兼ね備えた人材を選ぶことで、プロジェクトの成功率は飛躍的に高まります。

Q3. 日本と同等の品質を保つために、発注側ができる対策はありますか? 

A3. 「動くかどうか」だけでなく、使い勝手や詳細な動作条件を事前に数値で示す必要があります。 

日本と海外では、品質に対する考え方や「当たり前」の基準が異なるからです。 

「使いやすくしてほしい」という曖昧な表現ではなく、具体的な操作手順や反応時間を指定します。 

短い期間で成果物を確認したり修正したりする、こまめなレビューを繰り返してください。 基準を明確にして共有し続けることで、現地のエンジニアも求める品質を正確に理解します。

Q4. 海外拠点への情報漏洩を防ぐための、最も効果的な対策は何ですか? 

A4. 秘密保持契約(NDA)の締結と、現地の物理的なセキュリティ管理状況を把握することです。 

契約書に違反時の損害賠償額を明記することで、強い抑止力が働きます。 

また、開発に使用するパソコンの持ち出し制限や、アクセス権限の厳格な設定を相手に求めましょう。 

定期的に開発現場の様子をビデオ会議で確認したり、セキュリティ報告書を提出させたりします。 仕組みとルールの両面から対策を講じることが、企業の重要な資産を守るために不可欠です。

Q5. 従業員が少ない中小企業でも、オフショア開発を依頼するメリットはありますか? 

A5. 国内でエンジニアを採用する手間やコストを省き、迅速に開発体制を整えられます。 

中小企業は社内にIT専門家が不足している場合が多く、外部の豊富なリソースが大きな力となります。 

大企業のような大規模予算がなくても、必要な機能に絞って段階的に開発を進めることが可能です。 

自社の課題に寄り添って、戦略面から相談に乗ってくれるパートナーを選びましょう。

Q6. 開発したシステムの所有権やソースコードは、自社のものになりますか? 

A6. 契約を結ぶ段階で、知的財産権が自社に帰属することを明文化する必要があります。

あいまいにしたまま進めると、後から追加のライセンス料を請求されたり流用されたりします。 

特に、開発会社が保有する既存のプログラム部品の扱いについても、合意が必要です。 

ソースコード一式を納品してもらい、自社で管理できる状態にすることを条件に入れてください。 

権利関係をクリアにすることで、将来的なシステムの改修や他社への連携が自由に行えます。

Q7. アジャイル開発とウォーターフォール開発、どちらの手法が失敗しにくいですか? 

A7. オフショア開発では、少しずつ成果を確認できるアジャイル開発の方がリスクを抑えられます。 

仕様を一度に決めて進める手法では、最後に大きな認識のズレが発覚する恐れがあるからです。 

短い周期で開発と検証を繰り返したり、フィードバックを行ったりすることで、軌道修正が容易になります。 

進捗が見えやすくなるため、遠く離れた海外拠点との連携においても安心感を得られます。 

状況に合わせて柔軟に計画を変更できる手法を選び、着実に目標へ近づく体制を構築しましょう。

Q8. 納品後のシステム保守や運用も、同じ海外の会社に任せても大丈夫ですか? 

A8. 開発内容を最も理解している同じ会社に継続して任せることで、運用の安定性が高まります。 

別の会社に引き継ぐ手間がかからず、不具合が発生した際も迅速な原因究明と対応を期待できます。 

ただし、保守運用の費用や体制、対応可能な時間帯については、別途契約で定める必要があるのです。

夜間や休日のサポートが必要な場合は、あらかじめ現地の勤務体制を確認してください。 

信頼できるパートナーと長く付き合うことで、システムの成長を長期的に支える基盤が整います。

まとめ|オフショア開発のリスクと回避策

本記事では、オフショア開発の現状から7つの主要リスク、具体的な回避策まで解説しました。 

オフショア開発の成功は単なるコスト削減の手段ではなく、「戦略的なリスク管理」と「強固なパートナーシップ」の構築こそが本質なのです。

コミュニケーションや品質、セキュリティなど、海外特有の課題は確かに存在しますが、適切なブリッジSEの選定やアジャイル手法の導入で、リスクは克服可能です。

7つのオフショア開発で特に注意すべき主要なリスク

  • コミュニケーションの壁と認識の齟齬
  • 品質管理の難しさと納品物のクオリティ低下
  • 納期遅延と進捗管理の不透明化
  • セキュリティ・情報漏洩への懸念
  • 知的財産権(IP)や契約に関するトラブル
  • 想定外のコスト増加
  • 地政学リスクとカントリーリスク

4つのオフショア開発のリスクを最小限にする対策

  • ブリッジSE(BrSE)の選定と役割の明確化
  • アジャイル開発の導入による「早い段階での軌道修正」
  • 仕様書の徹底したドキュメント化と「図解」の活用
  • 強固なセキュリティ環境の構築と秘密保持契約(NDA)

経営者にとって、迅速なIT化は生き残りをかけた重要課題です。 海外のリソースを賢く使いこなし、投資対効果を最大化させる必要があります。 

情報の多さに惑わされず、自社の課題と向き合い、根拠を持って判断してください。 

さらに、オフショア開発会社を調べたい方は、こちらで2026年版のおすすめオフショア開発会社が確認できますので、併せてご覧ください。

自社のケースを深堀して相談したい場合は、ぜひ専門家への問い合わせをご検討ください。

正しい知識と備えがあれば、オフショア開発は貴社の飛躍を支える最強の武器となります。 まずは小さな一歩から始め、理想的なデジタルの未来を切り拓いていきましょう。

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DXの費用対効果は「測れない」は嘘?ROI計算方法と効果測定の6ステップ

「DXの費用対効果の測り方が分からない…」

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DX推進のための投資は決して安価ではないため、目に見える効果が出るのか不安になり、意思決定を先送りにしてしまう経営者も少なくありません。

この記事では、DX投資の費用対効果を数値で評価するための6つのステップを解説します。

紹介するステップに沿って整理すれば、DX推進の費用対効果を明確に測定できるようになります。

費用対効果を明確に測定できれば、DX推進に投資すべきかどうかを自信を持って判断できるようになるでしょう。

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DXの費用対効果の測定方法と目安数値

ここでは、DX投資の「モノサシ」となる基本的な費用対効果の測定方法を整理します。加えて、判断基準となる目安の数値を専門家の視点から解説します。

費用対効果(ROI)とは?DX投資における基本概念

費用対効果を測る最も代表的な指標が「ROI(Return On Investment:投資利益率)」です。

ROIとは、投じた費用に対してどれだけの利益を生み出したかをパーセンテージで示す指標です。

従来のIT投資(例:サーバーの入れ替え)は、「コスト削減」が主な目的でした。

一方、DX投資は業務効率化だけでなく、「ビジネスモデルの再構築」「新たな顧客価値の創出」といった収益機会を生み出す点が大きな特徴です。

中小企業庁「2024年版中小企業白書」では、DXに取り組む企業がまず期待する効果として「業務効率化(44.5%)」「人件費等の削減(30.3%)」「業務プロセスの改善(30.0%)」といった効率化が上位を占めています。

一方で、売上向上の効果が出ている企業は「既存製品・サービスの価値向上」や「新製品・サービスの創出」など、高付加価値の取り組みにも成果を感じている点が特徴です。

多くの企業はDXをコスト削減のための投資と認識しがちですが、成熟度の高い企業ほど新たな収益源を生み出す投資としてDXを活用していることが分かります。

ROIの計算式と結果の見方

ROIの計算式は非常にシンプルです。経営者であれば、ROIの計算式は必ず押さえておくべきでしょう。

  • ROI(%)=(利益額÷投資額)×100
  • 利益額=投資によって得られた効果(コスト削減額+売上増加額など)
  • 投資額=DXにかかった総費用(初期費用+運用費用+人件費など)

例えば、800万円を投資して新たな在庫管理システムを導入したとします。

  • 効果:在庫管理の工数削減(年間200万円)、過剰在庫の削減(年間300万円)
  • 利益額:200万円+300万円=500万円
  • 投資額:800万円

この場合のROIは「(500万円÷800万円)×100=62.5%」です。

DXでは、ROIのみを評価基準とするのではなく、複数の施策を比較して最適な投資先を選定する視点が求められます。

利益率・回収期間・業務改善幅を比較し、「限られた資金をどこに配分すべきか」を明確にすることで、経営判断の質を高められます。

DXで得られる定量・定性効果

費用対効果を計算する際、効果を「定量(数値化できるもの)」と「定性(数値化しにくいもの)」に分けて考えてください。

種類内容の例ROIへの算入方法
定量効果工数削減、作業時間短縮、ミス削減、運用コスト削減時給 × 削減時間、削減コストの年間換算
定性効果満足度向上、離職率改善、ブランド価値向上、顧客体験向上離職コスト削減、LTV改善、CPA改善などに換算

中小企業白書でも、DXに取り組む企業の多くがまず「業務効率化」や「コスト削減」といった定量効果を期待していると示されています。

一方で、DXの取組段階が進んだ企業ほど「既存製品・サービスの価値向上」や「新製品・サービスの創出」といった定性的な効果にも注目していると分析されています。

投資判断では、短期のコスト削減だけを重視するのは危険です。定性効果をどこまで数値に落とし込めるかが、DX投資の成否を大きく左右します。

定量効果

定量効果とは、コスト削減や業務効率化などの数値化しやすい効果のことです。

具体例は以下のとおり。

  • 人件費の削減(例:RPA導入で月50時間の作業を自動化→50時間×時給×12ヶ月)
  • 運用コストの削減(例:クラウド移行でサーバー維持費を年間100万円削減)
  • ミスによる損失削減(例:入力ミスによる手戻りコストを年間50万円削減)

特に人手不足が続く中小企業では、工数削減によって「増員せずに業務量を維持・拡大できる状態」をつくれる点も、大きな投資対効果と言えます。

定性効果

定性効果は「数値化が難しい」と言われますが、実務ではほぼすべて数値化できます。

具体例は以下のとおり。

  • 顧客満足度向上 → 解約率低下 → LTV向上
  • 従業員満足度向上 → 離職率低下 → 採用・教育コスト削減(例:1名100万円)
  • ブランド価値向上 → 新規獲得単価(CPA)低下

定性効果を数値に落とし込めないまま判断してしまうと、DX投資の本来の価値を見落としてしまいます。

また、DXは業務標準化を進める効果もあります。

担当者によって作業品質が異なる属人化を抑制し、業務のばらつきをなくすことで、長期的な生産性の安定につながるでしょう。

投資回収期間(Payback Period)の考え方と計算例

ROIとセットで確認すべきなのが、「投資回収期間(Payback Period)」です。投資回収期間とは、投資した費用を、何年で回収できるかを示す指標です。

「投資額÷年間のキャッシュフロー(利益額)」で計算できます。

ROIと同じ例(投資額800万円、年間の利益額500万円)で投資回収期間を計算してみましょう。

投資回収期間:800万円÷500万円=1.6年

つまり、このシステム投資は約1年半で元が取れる、という計算になります。

中小企業の経営判断では、投資によって得られる利益を示すROIの把握が欠かせません。

同時に投資額の回収年数を示す回収期間も確認することで、キャッシュフロー負荷を適切に評価できます。

DX投資は何%なら“合格”なのか?ROIの目安

「結局、ROIは何%なら投資すべきなのか?」という質問は、私たちがコンサルティング現場で最も多く受ける質問の一つです。

結論から言えば「すべての企業に共通する絶対的な合格ライン」は存在しません。しかし、判断の目安はあります。

IT投資のROIに関して、KPI Depot「20%を超えると強いパフォーマンス」と示しています。

KPI Depotの基準から見ると、3〜5年で投資回収できるROI20〜33%は実務上の妥当なラインと言えるでしょう。

なお、ガートナーの2024年調査では「ビジネス目標を達成した、あるいは上回った」と評価されたデジタル施策は48%にとどまったと報告されています。

成果を十分に出せるプロジェクトは半数弱であるため、事前にROIや投資回収期間を数値で設計し、「どの施策に資金とリソースを集中させるか」を見極める視点が不可欠です。

実際の事例:DX投資でROIを高めた企業の例

DX投資は業務効率化だけでなく、在庫最適化や工程管理の改善によって、投資対効果(ROI)を大きく引き上げています。ここでは、3つの事例を紹介します。

弊社実績:カード会社 | 業務自動化によりROI995%を達成

某カード会社に対し、UiPathを活用した業務自動化(RPA導入)支援を行いました。

従来、内部システムの手動操作や判断業務に多くの工数を割いており、属人化や業務負荷の増大が課題でした。

本支援では単なる自動化にとどまらず、データ分析に基づく業務統合までを包括的に推進しました。

「RPA導入の枠組み(自動化→横展開→処理データの可視化・蓄積(データマート構築)→業務統合)」を推進した結果、以下の効果が得られています。

  • 投資対効果:直近ROI 995%を達成し、極めて高い効果を創出(削減工数・人件費ベースで算出)
  • 業務プロセスの最適化:「システム改修・RPA・ハイブリッド」の最適な使い分け基準を確立
  • 運用管理の適正化:効果の低い業務や特殊な「例外業務」を明確に区分し、管理コストを抑制

弊社では、本事例のように成果につながる業務整理から着手する導入支援を行っております。

貴社業務における自動化・効率化の可能性について、まずはお気軽にご相談ください。

お問い合わせフォームでは「DX開発パートナーズ」をお選びください

日酸TANAKA株式会社|棚卸工数の75%削減・年間340万円のコスト改善

金属加工機器メーカーの日酸TANAKA株式会社では、棚卸作業が年2回必要でした。

棚卸作業の際、生産ラインを停止しながら「2日×複数名」で棚卸を実施しており、年間約500万円の機会損失が発生していました。

在庫管理を自動化するスマート棚卸システムを導入した結果、以下の効果が得られたようです。

  • 棚卸工数:6人×1.5日へ短縮(約75%削減)
  • 年間コスト削減額:約340万円

投資額は非公開ですが、投資額を仮に600万円と仮定すると、ROIは56.6%、投資回収期間は1.7年となります。

引用元:SmartMatCloud

ワークマン|AI発注により作業時間93%削減・在庫最適化を実現

全国のワークマン店舗では、1店舗あたり約10万SKUの商品を店長が毎日手入力で発注しており、1日30分の作業が常態化していました。

AIによる自動発注システムを導入したことで、以下の定量・定性効果が生まれています。

  • 発注作業:30分 → 2分(93%削減)
  • 欠品率の低下
  • 不良在庫の削減

投資額は公開されていませんが、同規模のAI発注システムを想定して投資額を5,000万円と仮定します。

作業時間削減や在庫最適化による年間便益を3,000万円とすると、ROIは60%となり、投資回収期間は約1.7年です。

引用元:IT Leaders

DX推進段階における費用目安と内訳

ROI(費用対効果)を計算するうえで、まず費用を正確に把握してください。費用の見積もりを誤ると、ROIの計算がすべて崩れてしまいます。

「DX」と総称しても、目的や進行段階によってコスト規模は大きく異なる状況です。

ここでは、経営者として押さえておくべき「費用の相場観」と「具体的な内訳」を解説します。

DX推進における段階別のコスト

DXの成熟度は、経済産業省IPAの資料でも示されているように、一般的に次の3段階に整理できます。

第1段階:デジタイゼーション(部分的な電子化)

紙の書類をPDF化したり、Excelによる管理をSaaSツールに置き換えたりするなど、アナログ業務をデジタルに置き換える段階です。

導入にかかるコストは数十万円〜数百万円ほどで、例えば勤怠管理ツールやWeb会議システムの導入がこのフェーズに含まれます。

第2段階:デジタライゼーション(プロセス全体の最適化)

特定の業務プロセス全体をデジタルで完結させ、効率化を図る段階を指します。

特に受発注や請求処理など、複数部門が関わるワークフローはデジタル化の効果が大きい領域です。

どの工程を自動化し、どの工程を人が判断するのかを整理することで、改善効果を最大化できます。

例えば、受発注から在庫管理、請求までを一気通貫でデジタル化するイメージです。

導入コストは数百万円〜数千万円ほどで、SFA/CRMの導入や、基幹システム(ERP)の刷新がこのフェーズに該当します。

第3段階:デジタルトランスフォーメーション(ビジネス変革)

デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルやサービスを生み出し、事業そのものを変革します。

例えば、データ分析を基にした新サービスの開発や、IoTを活用した製品のサブスクリプション化などに当たる内容です。

導入コストは数千万円〜数億円以上となり、極めて大きな投資規模となる段階です。

多くの中小企業が「DX」と認識している内容の多くは、第1段階と第2段階に該当します。

まずは自社の取り組みがどの段階なのかを把握することが重要です。

DX推進にかかるコストの内訳

ITベンダーの見積もりを精査するためにも、コストの「内訳」を理解しましょう。

DXの費用は、大きく以下の3つに分類されます。

  • システム導入費(初期費用)【例:SaaSツールの初期設定費など】
  • システム運用費(ランニングコスト)【例:SaaSツールの月額利用料など】
  • 人件費・人材育成費(隠れコスト)【例:DX推進担当者の人件費など】

特に「人件費」は、ベンダーの見積書に載らないケースがほとんどです。

しかし、投資対効果を厳密に計算する上では、人件費や人材育成費も含めて「総投資額」として捉える視点が、経営者には不可欠です。

また特定ベンダーの独自仕様に過度に依存すると、ベンダーロックインが発生します。

ベンダーロックインが発生すると、将来的な乗り換えコストや追加開発費が増加し、費用対効果を悪化させる要因になります。

DXの費用対効果の測定ステップ

DXの費用対効果は以下のステップで測定できます。

ステップ内容具体的にやること
1現状の評価現行工数・作業時間・ミス・人件費・機会損失を棚卸し
2目標設定(To-Be)削減したい工数・改善したい業務・KPIを数値で設定
3効果試算(数量ベース)削減できる時間・件数などを“数量”で算定
4コスト計算初期費用・運用費・人件費・育成コストを合算
5利益計算数量ベースの効果を金額に換算
6ROI・回収期間算出ROI%と回収年数を計算して投資判断

この手順に沿って数字を当てはめるだけで、誰でも論理的な投資判断が可能になるでしょう。

1.現状の評価

DXの効果を正しく測定するためには、業務の現状を数値で把握する作業が欠かせません。

スタート地点を明確にしなければ、改善幅を判断できず、投資判断も曖昧になるでしょう。

作業時間や担当者の負荷を定量化すれば、業務のどこがボトルネックかを明確にできます。

手入力作業の月間工数や、入力ミスによる手戻り時間を把握すれば、改善後の効果を数値で比較が可能です。

業務負荷と課題を数値で可視化する工程が、DXの投資判断と効果測定の基盤となります。

自社のDXの成熟度を客観的に把握する手段としては、IPAが公表している「DX推進指標」を活用する方法もあります。

自己診断フォーマットに沿って現状をスコアリングしておくと、DX投資の優先度や投資範囲を検討する際の基準として役立つでしょう。

2.目標設定

現状を把握したら、次に「目標設定(To-Be)」を行います。

DXで改善したい数値を明確にし、どの水準まで引き上げるかを定義してください。

目標設定では、改善後の状態を具体的かつ測定可能な指標(KPI)に落とし込む作業が重要です。

具体例

  • 受発注システムの導入により、手入力の工数(月80時間)を90%削減し、月8時間にする。
  • 入力ミスによる手戻り(月10時間)をゼロにする。

「業務効率化」といった曖昧なスローガンではなく、「工数を月72時間削減する」という明確なゴールを設定することが、DX成功の鍵となります。

3.効果試算

目標が定まったら、目標を達成することで「どれだけの効果(リターン)が生まれるか」を試算しましょう。

効果を試算する際、改善対象となる業務プロセスを細かく分解し、各工程がどれだけ短縮されるかを把握すると、効果を正確に算出できます。

プロセス単位で可視化することで、改善幅を見誤るリスクが減ります。

効果試算の段階では、まだ金額に換算せず「どれだけの業務が改善されるか」という物理的な効果を明確にしましょう。

4.コスト計算

次に、ステップ3で算出した効果を得るために必要な「コスト(投資額)」を計算します。

ベンダーから提示された見積書だけで判断せず、人件費や人材育成費もすべて含めて算出します。

具体例:

  • システム導入費(初期):300万円
  • 月額利用料(運用):5万円/月(=年間60万円)
  • 社員研修・教育費:40万円
  • DX推進担当の人件費:120万円
  • 投資額(1年目)=300万円+60万円+40万円+120万円=520万円
  • 投資額(2年目以降)=年間60万円

経営者としては、初年度の「初期投資額」と、2年目以降の「ランニングコスト」を分けて把握することが重要です。

5.利益計算

ステップ3で試算した「効果」を「利益(金額)」に換算します。

具体例:

  • 削減効果:合計82時間/月
  • 担当者の平均時給(諸経費含む):2,500円
  • 年間の利益額=82時間/月×2,500円/時×12ヶ月=246万円

ステップ3の「工数削減」という効果が、「年間246万円の利益」という、経営判断に使える数値に変わりました。

6.ROIの算出

最後に、ステップ4で算出したコストとステップ5で算出した利益の数字を使い、「ROI(費用対効果)」を算出します。

  • 利益額(年間):246万円
  • 投資額(初年度):520万円
  • ROI(%)=(246万円÷520万円)×100=47.3%

今回の事例の場合、ROIが47.3%ということになります。

ROIがプラスであり、かつ自社の目標利益率や資本コストを上回っていれば、経営判断として「投資を実行すべき」と判断しやすくなるでしょう。

DXの費用対効果に対するよくある質問

Question1:なぜDXの費用対効果は「測れない」「測りにくい」と言われるのですか?

主に3つの理由があります。

  • 効果が長期にわたる:ビジネスモデル変革など、効果が発現するまでに1〜3年かかる場合があるため。
  • 定性効果が多い:従業員満足度や顧客体験の向上など、すぐには金額換算しにくい効果が多いため。
  • 目標が曖昧:「DX推進」自体が目的化し、具体的な数値目標(KPI)を設定していないため。

この記事で解説した6つのステップを踏むことで、これら3つの課題は解決できます。

Question2:DXの効果が出るまで、どれくらいの期間がかかりますか?

DXの効果が表れるまでの期間は、投資規模や取り組み内容によって変わります。

RPAの活用やSaaSツールの導入による工数削減など、比較的シンプルな改善であれば、3ヶ月〜半年ほどで成果を確認しやすい傾向があります。

一方、データ分析を基盤にした新サービス開発や、事業全体の仕組みの見直しは、成果が出るまでに1年〜3年かかることが多いです。

短期で成果が見込みやすい施策と、中長期で成長に寄与する施策の両方を同時に進めることが、DXを成功させるうえで重要です。

Question3:定性的な効果(社員の満足度など)は、具体的にどう評価すれば良いですか?

「定量化(数値化)」する工夫が重要です。

例えば「従業員満足度」であれば、DX導入前後に匿名のアンケートを実施し、「業務のしやすさ(5段階評価)」や「会社への満足度(点数)」を比較します。

また、「離職率」や「有給休暇取得率」の変化を測定するのも有効です。

満足度が上がれば離職率が下がり、結果的に「採用・教育コストの削減」という定量的な利益としてROI計算に組み込めます。

例えば、DX導入で離職率が5%改善し、年間の退職者が2名減少したと仮定しましょう。

仮に1名あたりの採用・教育コスト(求人広告費、研修費、OJT担当者の工数など)が100万円かかっていた場合、『年間200万円の利益(コスト削減)』としてROI計算に組み込めるようになります。

Question4:ROIの計算はエクセルでもできますか?

はい、エクセルで十分可能です。ROIの計算式自体は「(利益÷投資額)×100」とシンプルです。

重要なのは計算式よりも、「利益」や「投資額」の根拠となる数値をどれだけ正確に洗い出せるかにかかっています。

まずはこの記事の「測定ステップ」に沿って、「コスト計算(初期・運用・人件費)」と「利益計算(工数削減×時給など)」の項目を一覧にしてみてください。

Question5:投資判断の基準として、ROI以外に見るべきものはありますか?

はい、最低でも「投資回収期間(Payback Period)」はセットで見るべきです。

投資回収期間は「投資した資金を何年で回収できるか」を示す指標で、キャッシュフローを重視する中小企業にとってROI以上に重要な場合もあります。

さらに厳密に評価するなら、将来のキャッシュフローの価値を現在の価値に割り引いて計算するNPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)も有効な指標です。

しかし、まずは「ROI(何%儲かるか)」と「回収期間(何年で元が取れるか)」の2つを確実に押さえることから始めましょう。

まとめ | DXの費用対効果は必ず測定しよう

この記事では、中小企業の経営者がDX投資で迷わないための基準として、費用対効果(ROI)の測り方、投資コストの考え方を解説しました。

DX推進で失敗する企業の多くは、導入前に「数字での評価軸」を持てていないことが共通点です。

まずは、自社で最も非効率だと感じる業務を一つ選び、この記事で紹介した費用対効果の測定6ステップを当てはめてみてください。

工数・コスト・効果を可視化するだけで、DX投資の判断精度は大きく向上するでしょう。

とはいえ、自社だけで費用対効果を設計しようとすると、「どこまでをコストに含めるべきか」「定性効果をどう数値化するか」で悩むケースが少なくありません。第三者の視点を入れたい場合は、DX投資のROI設計や効果測定の整理をサポートすることも可能です。必要に応じて、お気軽にお問い合わせください。

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DX

【徹底比較】アウトソーシングと外注の違い!失敗しない選び方

「業務の一部を外部に任せたいけれど、アウトソーシングと外注の使い分けがわからない」といった悩みを持つ経営者やIT担当者の方は多いのではないでしょうか。

特に、競合に負けないよう迅速にIT化を進めるプレッシャーを感じる中で、高額な大手Slerを信頼しつつも、費用面から手を出しにくいことが多くの企業が抱える共通の課題です。

言葉の定義があいまいなまま外部パートナーを選定すると、予期せぬコスト管理責任のトラブルが発生するリスクが高くなります。

アウトソーシングと外注は、依頼する業務の「範囲」「目的」「期間」において、明確な違いがあるのです。

本記事では、この二つの手法を契約形態や費用、リスクの観点から徹底的に比較します。

本記事を読むことで、貴社が抱える課題に対し、最も合理的で根拠のある外部依頼先を選定するための明確な指針を得られ、自信を持って次のステップに進められるでしょう。

記事監修者

DX開発パートナー

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

アウトソーシングと外注(業務委託)の基本的な違い

アウトソーシングと外注という用語は、日常会話やビジネスの場においてしばしば混同されますが、その意味合いには大きな違いがあります。

この基本的な定義を理解することで、費用対効果が高く、戦略的な相談ができるプロを選べるようになります。

それぞれの定義と、経営戦略上での位置づけを専門的に解説します。

「外注(業務委託)」の定義と一般的なイメージ

外注、または業務委託とは、特定の時期に発生する、明確に定義された単一の業務や作業を外部の専門家や企業に依頼する契約形態を指します。

外注は、「一時的に自社に不足する専門スキルを補う」ことを主な目的として利用されます。

つまり、迅速に専門家の力を活用できるメリットがあります。

例えば、「新しいサービスのロゴやウェブサイトのデザイン作成」や「特定の期間限定イベントで利用するシステムの開発」など、成果物と納期が明確なプロジェクトベースの依頼が典型となるのです。

契約形態としては、成果物の完成を目的とする請負契約や、労働力の提供を目的とする準委任契約が多く採用されます。

外注は、業務の進め方や時間管理は基本的に委託先に任せますが、指揮命令権は発注者から発生しない点に注意が必要です。

「アウトソーシング」の定義と経営戦略上の位置づけ

アウトソーシング(Outsourcing)とは、今まで自社で行ってきた業務プロセス全体を、長期かつ継続的に外部の専門企業へ移管することを指します。

野村総合研究所 (NRI)によれば、「ノンコア業務を切り離し、経営資源をコア業務(本業)へ集中させる」という、より戦略的な経営判断として位置づけられます。

例えば、総務部門の給与計算やIT部門のシステム運用・保守といった、定型的で継続的な業務が対象です。

アウトソーシングの目的は、単に人手不足を解消するだけでなく、外部の専門ノウハウを取り入れることで、業務品質の向上やコストの恒久的な削減を図る点にあります。

契約期間は年単位の長期になることが一般的で、社員の採用・教育コストの削減にも貢献します。

決定的な違い:依頼する業務の範囲と目的

アウトソーシングと外注の最も決定的な違いは、依頼する業務の「範囲」と「目的」にあります。

外注は「タスク単位」での依頼であり、アウトソーシングは「部門・プロセス単位」での依頼だと理解してください。

外注は、「このシステムを作ってください」「このデータを入力してください」といった、具体的な作業を依頼するものです。

一方、アウトソーシングは、「給与計算業務全般をすべてお願いします」「ITインフラの運用すべてを任せたい」といった、業務全体の責任と管理を含めて依頼します。

目的も、外注は専門性の短期的な補完であるのに対し、アウトソーシングは継続的な業務効率化や経営資源の最適化という、より広い戦略的意図を持ちます。

この「丸ごとの依頼」が、アウトソーシングの特徴です。

類似の用語:BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)との関係性

アウトソーシングと非常に近い意味で使われる用語にBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)があります。

BPOはアウトソーシングのより戦略的かつ専門的な形態です。

経済産業省の『DX支援ガイダンス』によると、BPOは、給与計算や経理処理、コールセンター業務など、特定の業務プロセスを外部に委託するだけでなく、そのプロセスの企画・設計・改善までを外部パートナーに委ねる手法です。

BPO事業者は、単に作業を代行するだけでなく、その業務に関するノウハウを豊富に持っており、業務効率化の提案や最新テクノロジーの導入までを一括して行います。

中小企業がバックオフィス業務を依頼する際は、多くの場合、このBPOが選択肢になります。

業務の改善や効率化を目的とする場合は、単なるアウトソーシングではなく、BPOサービスを検討すべきです。

類似の用語:オフショアとの関係性

アウトソーシングや外注が「業務を外部に任せる手段」であるのに対し、「オフショア(Offshore)」は業務を依頼する「場所」を指す言葉です。

オフショアとは、システム開発などの業務を海外の企業に委託することで、人件費の差を利用した大幅なコスト削減を主な目的とする手法です。

ただし、「言葉の壁」や「商習慣の違い」によるコミュニケーションリスクが高まり、品質管理が難しくなるという大きなデメリットも伴います。

一方、ニアショア(Nearshore)は、比較的時差が少ない近隣の海外諸国や国内の地方都市に依頼することで、コストとリスクのバランスを取る手段です。

費用対効果を追求する中小企業は、国内か海外かという場所の選択肢も同時に検討する必要があります。

アウトソーシングと外注、契約形態・期間・範囲から見る実践的な比較

中小企業の経営者やIT担当者が外部パートナーを選ぶ際は、目先の費用だけで判断してはいけません。

契約期間中のリスクや自社に残るノウハウなど、より実践的な視点から両者を比較検討する必要があります。

迅速なIT化のプレッシャーがある中で、自社の課題と開発イメージが一致する費用対効果の高いプロを見つけるためにも、この実践的な比較は不可欠です。

このセクションでは、アウトソーシングと外注を、契約期間、知見の移転、コスト構造など、実務における重要な側面から詳細に比較します。

契約期間と依頼の継続性

アウトソーシングと外注では、契約期間や依頼の継続性において明確な傾向が見られます。

外注は短期間の「点」の契約であり、アウトソーシングは長期間の「線」の契約となるのが一般的です。

外注は、システム開発やデザイン作成といった単発のプロジェクトが多いため、契約期間は数ヶ月から長くても一年程度になります。

このため、プロジェクトごとにパートナーを変えたり、協力者を変更したりするといった柔軟な対応が可能です。

一方、アウトソーシングは、業務プロセスを丸ごと任せるため、安定したサービスの提供が前提となり、契約は数年間にわたることが多くなります。

長期契約のアウトソーシングでは、契約の見直しや解約に関する条項を初期段階で明確にし、将来の変更に対応できる柔軟性を確保することが重要となります。

ノウハウ・知見の移転

外部に業務を依頼する際に、「自社にノウハウが残るかどうか」は、将来的な自立や競争優位性を維持する上で非常に重要な論点です。

外注はノウハウの移転が限定的であり、アウトソーシングはノウハウが外部に蓄積されやすいという傾向があります。

外注は、特定の成果物を受け取るのみで、その作成過程の技術的ノウハウは外注先に残りがちです。

ウェブサイトのコードをすべて自社で理解したり、使いこなしたりすることは難しい場合があります。

一方、アウトソーシングでは、業務プロセス全体を外部に任せるため、業務改善の知見や運用ノウハウが外部パートナー側に蓄積されていくのです。

将来的な内製化も視野に入れるなら、アウトソーシングの契約時に「ノウハウの共有」や「引き継ぎ期間」について具体的に取り決める必要があります。

業務プロセスの改善提案

外部パートナーからの業務プロセスの改善提案を期待できるかどうかは、依頼する手法の定義によって大きく異なります。

結論として、アウトソーシング(特にBPO)は業務改善提案を期待できるのに対し、外注では基本的に提案は期待できません。

外注の目的は特定の作業の完了であるため、依頼された範囲外の業務改善について提案したり、新しいテクノロジーの導入を提案したりすることは通常ありません。

対照的に、アウトソーシングは業務効率化や品質向上を目的としているため、外部の知見を活かした継続的な改善提案がサービスに含まれていることが一般的です。

貴社が戦略的なアドバイスを求めているなら、改善提案が契約に含まれるアウトソーシングを選ぶ必要があります。

管理責任の所在とリスク負担

業務を外部に依頼する際、業務の管理責任やトラブル発生時のリスクがどこにあるのかを明確にすることは非常に重要です。

外注は管理責任が貴社に残るのに対し、アウトソーシングは委託先の責任範囲が広くなるのです。

外注は、依頼した成果物に対して責任を負いますが、その業務全体のプロセス管理は発注者である貴社が引き続き行います。

一方、アウトソーシングは、業務プロセス全体を委託するため、品質管理やセキュリティ管理に関する責任の多くが委託先に移ります。

リスク回避のためには、アウトソーシング契約において、情報漏洩やサービスレベルの未達が発生した場合の損害賠償やペナルティについて、明確に取り決めることが不可欠です。大手であろうと無名な会社であろうと、契約書の内容がすべてです。

導入コストとトータルコストの違い

アウトソーシングと外注は、コスト構造にも大きな違いがあり、トータルコストで評価しなければ正しい判断はできません。

外注は初期費用として一括で支払う形が多く、アウトソーシングは月額の固定費用や従量課金となることが多いです。

外注は単発プロジェクトのため、見積もりが比較的容易で費用対効果を測りやすい傾向があります。

一方、アウトソーシングは月額費用が安価に見えても、契約期間が長いためトータルコストが膨らむ可能性があるのです。

さらに、アウトソーシングは変動費化できるメリットがある一方で、契約終了時の引き継ぎコストや新しいパートナーへの移行コストが発生することもあります。

短期的な予算でなく、数年間の総費用で比較検討すべきです。特に費用を抑えたい中小企業は、このトータルコストの視点を忘れてはなりません。

どちらを選択する?アウトソーシングと外注の失敗しない選択基準は?

アウトソーシングと外注のそれぞれの特徴を理解した上で、貴社が抱える具体的な課題を解決するためにどちらの手法を選ぶべきか、その判断基準を明確することが必要です。

「情報が多くてわからない」「どの提供者も選ぶメリット・デメリットがある」という不安を解消するため、このセクションでは、費用対効果(ROI)とリスクを最小限に抑えながら、合理的で成功に繋がる選択をするための具体的な判断基準を解説します。

「外注」が適しているケース:専門性の高い単発プロジェクト

外注、すなわち業務委託が最も適しているのは、自社にはない高度な専門性が必要とされる単発のプロジェクトです。

「特定のスキルを一時的に補う」ことが目的であれば、外注が最も効率的で低コストな選択となります。

例えば、「新しいサービスのロゴやUI(ユーザーインターフェース)のデザイン作成」や「複雑な機能を持つカスタムシステムの初期開発」といったケースが該当します。

以上の業務は、自社で専門人材を雇用したり、スキルを育成したりするよりも、外部のプロに一時的に依頼する方が、時間と費用のムダを抑える最善策になるのです。

さらに、成果物の完成をもって契約が終了するため、長期的な管理負担もありません。

ただし、単発の外注であっても、自社の課題とイメージを伝えるための準備は不可欠です。

「アウトソーシング」が適しているケース:定型的なノンコア業務

アウトソーシング(BPO含む)が適しているのは、定型的で継続的ながら、自社のコア業務ではないノンコア業務です。

「継続的な業務の効率化と品質維持」が目的であれば、アウトソーシングが最も戦略的な選択となります。

例えば、「毎月の給与計算・社会保険手続き」「ITシステムの保守・監視」「経理伝票の処理」といった、手間はかかるが売上に直結しない業務が該当するのです。

業務を外部に任せることで、経営資源を売上や顧客満足度に直結するコア業務に集中させられます。

外部パートナーの持つ業務改善ノウハウを活用し、人手不足の解消と業務品質の安定化を同時に実現することも可能です。

効果を最大化するための依頼前の準備事項

外部パートナーへ依頼する際に、最大限の効果を引き出し、失敗を避けるためには、依頼前に「何を解決したいのか」という自社の課題とゴール数値(KPI)で明確化することが不可欠です。

外注する場合でも、業務をアウトソーシングする場合でも、「現状の業務フロー」と「自動化や効率化で達成したい具体的な目標値」を文書化してください。

この準備ができていれば、外部パートナーの提案が貴社の課題に一致しているかを合理的に判断できます。

よくある質問(FAQ)|アウトソーシングと外注を見比べている方々の声に回答

Q1. 外注とアウトソーシングを併用することは可能ですか?

A1. はい、可能です。コア業務を外部に委託しない限り、戦略的に併用することで柔軟性とコスト効率を両立できます。

多くの企業は業務の性質に応じて両者を使い分けています。

例えば、「人事・経理といった定型的なバックオフィス業務全体(ノンコア業務)はアウトソーシング」し、「新商品のキャンペーンサイト制作や特定機能のシステム開発(専門的な単発プロジェクト)は外注」するといった使い分けが一般的です。

この併用戦略の鍵は、自社のコア業務を明確に定義し、そこに最も経営資源を集中させることです。

Q2. アウトソーシング契約の「サービスレベル合意書(SLA)」とは、具体的にどのような内容を確認すべきですか?

A2. SLAは、委託先が提供するサービスの具体的な「品質」と「責任範囲」を数値で保証するもので、特に「罰則」の有無を確認すべきです

SLA(Service Level Agreement)は、アウトソーシングの成否を分ける重要な文書です。

確認すべき具体的な内容は、「稼働率(システムのダウンタイム許容範囲)」や「問い合わせへの応答時間」といった品質に関する目標値に加え、その目標値が達成できなかった場合の「ペナルティ(罰則)」が盛り込まれているかどうかが重要になります。

罰則がない場合、委託先がサービスの改善に積極的でなくなるリスクがあります。事前に計測可能な数値として合意することが、アウトソーシングで期待通りの成果を得るための根拠となります。

Q3. オフショア開発を検討する際、コスト削減効果とコミュニケーションリスクのバランスをどう評価すべきですか?

A3. 削減できるコスト(人件費差額)が、コミュニケーションミスによる「手戻りコスト」と「納期遅延リスク」を上回るかを定量的に試算すべきです。

オフショアの最大のメリットはコスト削減ですが、コミュニケーションリスクは必ず発生すると認識すべきです。

失敗を避けるためには、国内の窓口担当者(ブリッジSE)の質を最重要視してください。

さらに、コスト削減額が20%未満であれば、リスクに見合わない可能性が高くなります。

オフショアの評価は、人件費の比較だけでなく、「品質管理体制」「文化的な理解度」「日本語対応の質」といった定性的な要素も合わせて、トータルコストとトータルリスクの観点から判断することが合理的です。

Q4. システム開発の発注の場合、外注先が提案してくる「準委任契約」と「請負契約」は、発注側にとってどのような違いがありますか?

A4. 成果物に対する責任の所在が異なります。リスクを抑えたいシステム開発では「請負契約」を基本とすべきです。

請負契約は「システムを完成させる」という成果物の納品に対して責任が発生するため、発注側は完成品を受け取ることのみに責任を負います。

一方、準委任契約は「エンジニアの労働力や作業時間を提供すること」に対して費用を支払う契約であり、成果物に対する責任は原則として発生しません。

つまり、システムが未完成でも費用を支払うリスクがあります。システム開発では、「完成」という明確なゴールがあるため、発注側のリスクが低い請負契約を優先的に採用することが、賢明な判断と考えられます。

Q5. アウトソーシングによってノウハウが外部に流出することを防ぐには、どのような対策が必要ですか?

A5. 契約書に「秘密保持契約(NDA)」と「知財帰属」を明記するとともに、「業務マニュアルの共同作成」を義務付けるべきです。

ノウハウ流出を防ぐ最も重要な対策は、契約による法的拘束力の確保です。

業務上知り得た情報や顧客データの取り扱いに関するNDA(Non-Disclosure Agreement)は必須です。

加えて、アウトソーシングによって改善された業務プロセス自体を、共同でマニュアル化し、その知的財産権の帰属を自社に残すよう契約で定めてください。

結果、契約終了時もノウハウを失わずにスムーズな引き継ぎが可能となり、将来的な内製化にも対応できるようになります。

Q6. 「外注」を選んだ場合、パートナーからの戦略的な業務改善提案は本当に期待できないのでしょうか?

A6. 一般的には期待はできません。もし提案が欲しいなら、依頼内容を「業務改善コンサルティング+外注」として切り分けて契約すべきです。

外注(請負契約)の範囲は「依頼された特定のシステムを納期内に完成させること」に限定されます。

そのため、外注先に「どうすればもっと業務が効率化するか」といった戦略的な提案を期待することは、契約の範囲外の要求になります。

もし戦略的な知見を求めるなら、契約を「コンサルティングフェーズ(準委任)」と「開発フェーズ(請負)」に分け、コンサルティング費用を別途支払うべきです。

Q7. アウトソーシング契約を途中で解約する場合、トータルコストはどのように変化しますか?

A7. 契約期間が満了していない場合、残存期間の月額費用の一部または全額が「違約金」として発生することが一般的です。

アウトソーシングは長期契約が前提のため、委託先は初期投資として貴社専用の環境構築や人材採用を行っています。

そのため、中途解約は委託先にとって大きな損害となるため、契約書に中途解約時の違約金が定められていることがほとんどです。

トータルコストを評価する際は、「月額費用×契約期間」だけでなく、「解約違約金の条件」と「次の委託先への引き継ぎ費用」も必ず含めて検討してください。

Q8. 大手Slerと中小の開発会社を比較する際に、特に重視すべき判断基準は何ですか?

A8. 大手は「安定性と信用力」、中小は「自社の課題への一致度」と「開発ノウハウの専門性」を重視すべきです。

大手Slerは経営の安定性や豊富な実績に裏打ちされた高い信用力が最大のメリットですが、高額な費用になりがちです。

一方、中小の開発会社は、特定の技術分野や業種に特化していることが多く、自社の課題と開発イメージが一致しているならば、大手よりも費用対効果が高くなる可能性を秘めています。

選定の根拠としては、「過去の類似案件の実績」「提案内容の具体的かつ合理的な根拠」「担当者との戦略的な相談が可能な関係性」を重視し、中小であっても専門性の高いプロを選ぶことが、正しい決断をするための基準となります。

まとめ|アウトソーシングと外注の違い!失敗しない選び方

本記事では、アウトソーシングと外注(業務委託)の基本的な違いから、契約期間、ノウハウの移転、コスト構造に至るまで、実践的な視点から徹底的に比較しました。

アウトソーシングは長期的な業務プロセスの移管による経営資源の最適化を目的とし、外注は単発のプロジェクトにおける専門性の補完を目的とすることが、それぞれの決定的な違いになります。

アウトソーシングと外注の違いのまとめ表

比較項目外注(業務委託)アウトソーシング
定義・単位単一の「タスク・作業」単位業務の「プロセス・部門」単位
主な目的一時的な専門スキル・人手の補完コア業務への集中、恒久的な効率化
契約期間短期・単発(点の契約)長期・継続(線の契約)
管理責任発注者にプロセス管理責任が残る委託先がプロセス全体の責任を負う
業務改善提案基本的に期待できない専門知見による継続的な提案がある
ノウハウの蓄積限定的(成果物のみ受け取る)外部に蓄積されやすい(共有の工夫が必要)
コスト構造プロジェクトごとの一括・スポット費用月額固定・従量課金(トータルでの評価が必要)
典型的な例ロゴデザイン、特定システムの開発など給与計算事務、ITインフラ運用保守など

この記事で得た知識を武器に、ぜひ自信を持って外部パートナーの選定を進め、貴社の競争優位性を確立する一歩を踏み出してください。

DX

【徹底解説】RPAとは?できること・できないことのまとめ!

「RPA(Robotic Process Automation)を導入すれば、業務が劇的に楽になる」という期待が高まる一方で、「結局、何ができるのか」「自社の業務に本当に適用できるのか」といった疑問や不安を抱える経営者やIT担当者の方は多いのではないでしょうか。

RPAは、特にリソースが限られた中小企業にとって、人手不足の解消や生産性向上を実現する強力な手段となります。

しかし、効果を最大限に引き出すには、RPAのできることと、できないことを正しく理解することが不可欠です。

本記事では、RPAの基本概念から、具体的な適用可能業務、そして適用してはいけない業務の特徴を専門的な視点から徹底的に解説します。

記事を読むことで、RPA導入の合理的な判断を下し、明確な指針を得られるでしょう。

記事監修者

DX開発パートナー

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

RPAとは?まず押さえておきたい基礎

RPAは、業務効率化や生産性向上を実現するためのデジタル技術の代表格です。

RPAがどのような技術であり、AIやマクロといった類似技術とどこが異なるのか、その基礎知識を分かりやすく解説します。

RPAの基本概念

RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略称であり、パソコン上で行われる定型的な事務作業を、ソフトウェアロボットが自動で代行する技術を指します。

RPAを導入する理由は、ヒューマンエラーの削減と作業時間の短縮による生産性の向上を目指すためです。

RPAは、人間がパソコンで行うマウス操作、キーボード入力、データ転記といった一連の手順を記憶し、正確に再現することを得意としています。

具体的には、人が行っていたルーチンワークをロボットに任せることで、24時間365日の連続稼働が可能となり、社員はより付加価値の高いコア業務に集中できるようになるのです。

RPAは、大規模なシステム開発を伴わず、比較的短期間かつ低コストで導入できるため、中小企業にも普及しています。

RPAとAI・マクロ・Botの違い

RPAと混同されやすい技術として、AI(人工知能)やマクロ、Botがあります。しかし、それぞれには明確な違いがあるのです。

技術特徴・得意分野自動化の範囲判断能力
RPA定型業務の自動化。ルールに従い高速・正確に実行する複数のアプリやシステムを横断できる基本的にない(ルール通りに動く)
AI非定型業務への対応。データから学習・予測するデータの分析や判断が必要な領域あり(自ら学習・判断する)
マクロ特定のアプリ内での操作の自動化単一のアプリ内(Excel内など)に限定ない
Botチャット対応など、特定のタスクの自動化特定の限定的なタスクない(設定された応答など)

RPAは「定型業務の自動化」に特化している点が他の技術と異なります。RPAは、決められたルールに基づいて動くため、自ら学習したり判断したりする能力は基本的にありません

一方、AIはデータから学習し、予測や判断を行う非定型業務に対応できる点が特徴です。また、マクロは特定のアプリケーション内での操作を自動化しますが、RPAは複数のアプリケーションやシステムを横断して操作できます。

そして、Botは主にチャット対応など特定のタスクを自動化しますが、RPAはより複雑で多岐にわたる業務プロセス全体を自動化できるのです。RPAの最大の強みは、「ルール化された手順を高速かつ正確に実行する能力」に集約されます。

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RPAでできること

RPAは「人間的な判断が不要で、繰り返しの多い作業」に最も適しています。以下がRPAでできることのまとめです。

  • 定型業務・ルールが決まっている作業
  • 繰り返しが多いルーチンワーク
  • 大量データの処理・転記・集計
  • メール配信・レポート作成などの定常タスク

RPAに向いている業務に適用することで、作業品質の向上と人件費の削減という二重の効果が期待できます。

定型業務・ルールが決まっている作業

RPAが最も得意とするのは、作業手順が標準化されており、イレギュラーな判断を伴わない定型業務です。

理由は、RPAが「人間が定義したルール」に厳密に従って動作するソフトウェアロボットだからです。

もし作業手順があいまいだったり、担当者によってやり方が異なったりする場合、RPA化は困難になります。

RPA化を検討する際は、まずその業務の手順書が明確に存在するか、あるいは手順を明確に定義できるかを確認してください。

例えば、毎朝決まった時間にシステムにログインし、特定のデータを抽出するような作業は、定型業務の典型例と言えます。手順を完璧にルール化することが、RPA導入成功の鍵となります。

繰り返しが多いルーチンワーク

頻繁に発生し、繰り返しの作業負荷が高いルーチンワークも、RPAの導入効果が非常に高く現れる業務です。

RPAは疲れを知らず、ヒューマンエラーなく同じ作業を何度でも実行できるからです。

もし社員が毎日数時間かけて行っている売上データを集計システムに転記する作業や、在庫状況のチェック作業があれば、その業務をRPAに代行させることができます。社員はその時間を顧客対応や企画業務といった、より創造的な仕事に充てられるようになります。

単純作業の繰り返しから社員を解放することで、組織全体の生産性向上につながります。

大量データの処理・転記・集計

総務省の『自治体におけるRPA導入のガイドブック』によれば、システム間で大量のデータを移動・加工する作業は、RPAの処理能力が最大限に活かされる領域とされています。

人間が手作業で行う場合、データ量が多ければ多いほど、入力ミスや転記漏れといったヒューマンエラーのリスクが格段に高まるのです。

しかし、RPAは事前に定義されたルールに従って処理を行うため、ミスなく正確に大量のデータを高速で処理できます。

例えば、複数のエクセルファイルからデータを集約して基幹システムへ登録する作業や、システムから抽出したデータを加工・集計する作業などにおいて、RPAは高い効果を発揮します。

RPAは正確性とスピードが求められるデータ処理において、人手による処理を大きく上回るパフォーマンスを発揮し、作業品質の保証と処理時間の短縮に大きく貢献します。

メール配信・レポート作成などの定常タスク

特定のタイミングで決まった相手に、同じ内容を送信・作成する定常的なタスクも、RPAによる自動化に適しています。

具体例としては、取引先や顧客への定期的なメールマガジンの一斉配信、毎大量データの処理、あるいは社内向けの週次レポートの決まったフォーマットへの転記などが挙げられます。

メール配信やレポート作成のようなタスクは、手作業で行うと担当者の業務負荷の偏りや作業忘れの原因となりますが、RPAに任せることで、業務の標準化と平準化が実現可能です。

担当者は、ロボットが生成したレポートの内容分析や、メールの開封率向上施策の検討など、より高度な業務に注力できるようになります。

RPAでできないこと

RPAは万能なツールではありません。RPAの導入効果を最大化するためには、RPAができないこと、つまり「人が行うべき業務」を明確に理解しておくことが重要です。

RPAができない業務に無理に導入を試みると、かえってシステムが不安定になり、運用コストが増大するリスクがあります。

  • 人の判断・創造性が必要な業務
  • 例外が多くルール化できない業務
  • 頻繁に仕様変更が発生する業務

人の判断・創造性が必要な業務

RPAは、決められたルールに従って作業を忠実に実行することは得意ですが、自ら判断し、新しい価値を創造できません

なぜなら、RPAはAIのような「学習能力」や「複雑な状況判断能力」を備えていないからです。

具体的には、顧客の状況や心理を読み取って行う高度なクレーム対応が挙げられます。また、市場トレンドの分析による新商品の企画・立案や、法的な解釈を伴う契約業務などもこれに該当します。

RPA導入の際は、「判断」を伴う工程は必ず人間のチェックや承認を挟む設計にしましょう。

例外が多くルール化できない業務

イレギュラーなケースや突発的な事象が多く発生し、その都度対応が変わる業務も、RPAには向いていません。

RPAは、ルールが明確に定義されているからこそ能力を発揮できます。そのため、例外処理が多い業務では、その都度設定を変更する手間が発生し、運用負荷が極端に高くなってしまいます。

例えば、取引先ごとに異なるフォーマットの帳票が送られてくる業務や、常に複数のパターンでシステムエラーが発生する可能性のある業務などが該当します。

もし、RPA化を検討する業務に例外が多い場合は、まず業務フローを標準化・簡素化し、例外発生の頻度を下げることが重要です。ルール化できるか否かが、RPA適用の是非を分ける大きな判断基準となります。

頻繁に仕様変更が発生する業務

RPAが操作するアプリケーションやシステムの仕様が頻繁に変わる業務は、RPAの安定稼働を妨げる原因となるため、不向きです。

RPAは、画面上の特定のボタンの位置や表示内容を記憶して動作します。そのため、操作対象のシステムで仕様変更があると、ロボットが意図した操作を行えず停止してしまいます。

例えば、Webサイトのレイアウトが頻繁に更新される情報収集業務や、提供元が頻繁にバージョンアップを行うクラウドサービスを操作する業務などが該当します。

ロボットが停止するたびに、設定を修正・メンテナンスする工数が発生し、自動化によるメリットを上回る手間がかかってしまうのです。

仕様変更が多い業務については、RPA化ではなく手作業を選択した方が結果的に効率的なケースもあります。

RPAでできる具体的な業務

実際に中小企業の様々な部署でRPAがどのような活躍をしているのかを具体的な事例で解説します。

バックオフィス全般(データ入力・帳票作成・照合作業)

バックオフィス業務は、定型的で大量のデータ処理が集中する部門であるため、RPAの最大の活躍の場となります。

具体的な例を挙げると、紙で届いた請求書の内容をOCR(光学的文字認識技術)と連携させ、データ化して会計システムに自動入力する作業が可能です。

また、複数のデータベース間での顧客情報の定期的な照合作業や、社内フォーマットへの帳票作成もRPAが行えます。

結果、データ入力ミスのリスクを大幅に低減し、月末月初に集中しがちな業務負荷を軽減することが可能です。

社員は、本来のコア業務である経営分析のサポートなどに時間を使えるようになります。

人事・総務(勤怠集計、従業員データ更新)

人事・総務部門においても、RPAは勤怠管理や従業員情報の更新といった、煩雑なルーチンワークの自動化に有効です。

人事・総務の業務は、法令遵守が求められる一方で、入力・集計作業が多いという特徴があります。

RPAの具体的な適用例としては、各部署から送られてくる勤怠データを集計システムに自動で取り込み、残業時間の上限チェックを自動で行う作業があります。

また、新入社員の入社時や従業員の異動・昇進時に発生する各種システムへのデータ更新(メールアドレスや役職名の変更など)もRPAが正確に実行できるのです。

個人情報を取り扱う業務をRPAが代行することで、入力ミスや情報漏洩のリスクを抑えつつ、総務担当者の管理業務を大幅に効率化できます。

経理・財務(請求書発行、売上集計、入金確認)

経理・財務部門は、期日が厳格に決まっているため、RPA導入によるミスの防止と納期遵守のメリットが特に大きい部門です。

具体的には、毎月の請求書データをシステムから抽出・整形してPDF送付する作業や、各拠点から届く売上データを自動集計して日報を作成する作業などが自動化できます。

銀行の入金データと売上データを照合し、未入金の取引先を自動で抽出する作業もRPAが得意とする業務の一つです。手作業では業務負荷の大きい月末月初の繁忙期でも、RPAなら24時間稼働で迅速に処理できます。

毎月の定型業務を迅速かつ正確に処理することで、経理担当者が資金繰りの分析や経営層への報告資料作成といった、より専門的な業務に集中できる環境を整えられるでしょう。

営業・マーケティング(リスト作成、競合調査、メール配信)

営業・マーケティング部門では、情報収集やデータ管理といった定型作業はRPA化の対象となります。

RPAはあらかじめ定義したルールに基づき、Webサイトからの見込み客リストの自動収集や、競合他社の価格やサービス内容の定期的なWeb巡回調査を自動化できます。

また、CRM(顧客関係管理)システムに登録された顧客の属性に基づき、キャンペーン案内やフォローメールなどの定型文を自動で一斉送信する作業も可能です。

手間のかかる業務をRPAで自動化することで、営業担当者は商談や顧客フォローといった本来注力すべき活動に時間を割けるようになります。

情報収集や配信といった煩雑な作業時間を削減し、営業活動の質の向上を図れることが、RPA導入の大きなメリットとなります。

受発注・在庫管理(発注処理、在庫照会、納品書作成)

商品の受発注や在庫管理業務は、企業のサプライチェーンの根幹に関わるため、RPAによるスピードと正確性の確保が重要です。

受注業務においては、取引先からメールやFAXで送られてきた注文情報を読み取り、基幹システムへの登録から納品書の自動作成・発行までを一気通貫で行うことが可能です。

RPAが受発注を自動化することで、人手による入力ミスや納期遅延のリスクを大幅に低減します。一方、発注業務においても、在庫が一定数を下回った際に自動で発注処理を行うアラートや、顧客からの在庫照会に対して最新情報を自動で返す作業も実現可能です。

特に、在庫管理においては、RPAがリアルタイムに近いデータを処理でき、欠品による機会損失を防ぎ、過剰在庫によるコスト増を抑制することに役立ちます

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どこまでRPA化すべきか

RPAを導入する際、「どこまで自動化すれば最も効果的か」という線引きは、中小企業にとって最も重要な経営判断の一つです。

RPA化の範囲を決定する上で考慮すべき、4つの重要な評価基準を解説します。

  • 投資対効果(ROI)が見込めるか
  • 例外対応の割合はどれくらいか
  • 属人性が高すぎないか
  • 業務フローが整理されているか

基準に基づいて現状を評価することで、無駄な投資を避け、持続可能なRPA運用体制を構築できます。

投資対効果(ROI)が見込めるか

RPA化の範囲を決定する上で、投資対効果(ROI:Return On Investment)の明確な試算は不可欠です。

RPAを導入・運用するためのコスト(ライセンス料、設定・メンテナンス費用など)が、削減できる人件費やエラーコストといった利益を上回るかどうかを計算すべきです。

例えば、月間10時間の作業を削減できても、そのロボットの月額費用が人件費を上回る場合は、ROIが見込めません。

ただし、判断基準は「コスト」だけではありません。ミスがなくなることによる「品質向上」や「社会的信用の獲得」、さらには社員がより生産性の高い業務に注力できるといった定性的な効果も、重要なROIの一部です。

定量面と定性面を総合的に判断し、ROIがプラスになる見込みのある業務に絞ってRPA化を進めることが、経営判断として最も合理的です。

例外対応の割合はどれくらいか

RPA化を検討している業務において、例外処理が発生する頻度を評価することは非常に重要となります。

例外対応の割合が高い業務は、RPA化の投資対効果が下がるため、自動化の範囲から除外すべきです。目安として、業務の8割以上がルール通りに処理できる場合、残りの例外を人が対応する設計(ハイブリッド運用)は有効です。

一方、例外が全体の3割、4割にも及ぶ場合は、例外処理のロジックが複雑になり、ロボットの開発・メンテナンス費用が大幅に増加するリスクがあります。

事前に業務フローを分析し、例外処理を極力減らすための業務改善を行った上で、RPA化の是非を再検討することが、効率的な進め方となります。

属人性が高すぎないか

担当者しか手順を理解していない「属人性の高い業務」は、そのままRPA化してはいけません。

手順が曖昧なままではロボットに正確な指示が出せず、担当者の異動や退職時にブラックボックス化し、運用が停止するリスクがあるからです。

RPA化を進める際は、まず業務手順を詳細なドキュメントとして記録し、複数の担当者でも同じ手順で実行できる状態にしてください。

標準化のプロセスこそが、DX推進におけるナレッジの共有という点で非常に大きな価値を生み出します。属人性が高いままRPAを導入しても、「人に代わる不安定なロボット」を導入するだけになってしまいます。

業務フローが整理されているか

RPAを適用する前に「業務フロー自体が最適化されているか」を評価することは必須条件です。

非効率な業務フローのままRPAを導入しても、「非効率な作業を高速で実行するロボット」ができるだけであり、真の効率化には繋がらないからです。

RPA導入の検討と同時に、現行の業務フロー(As-Is)を可視化し、ムダな工程や重複している作業がないかを徹底的に洗い出してください。

そして、最も理想的な業務フロー(To-Be)を設計し、その新しいフローにRPAを適用するべきです。

RPAは業務改善のツールであり、業務改革(BPR:ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の視点を持って取り組むことが、導入効果を最大化する合理的な手順となります。

よくある質問(FAQ)|RPAでできること・できないことまとめ

Q1. RPAを導入すると決めた後、最初に具体的に何を準備し、誰に相談すれば良いでしょうか?

A1. まずは「RPA推進の担当者」を決め、全社的な視点で「自動化したい業務リスト」を作成することから始めましょう。

  • 担当者の決定: IT部門か業務部門かを問わず、RPA導入に熱意のある社員を担当者に任命し、RPAで「何ができるか」「何を目指すか」を社内に説明し、理解を得ることが重要です。
  • 自動化対象業務の選定: 現場の社員から「面倒な作業」「ミスが多い作業」をヒアリングし、自動化対象のリストを作ります。
  • ツールのトライアル: リストアップした業務を元に、いくつかのRPAツールの情報を収集し、自動化対象業務に適切なRPAツールに決定します。

または、RPA導入支援サービスへ相談することです。弊社では、お客様のご予算に応じた最適なRPAツールをご提案・導入支援しております、まずはお気軽にご相談ください。

Q2. 多くのRPAツールがある中で、自社に最適なツールはどう選べばいいですか?

A2. 自社の「利用目的」と「ITリテラシー」に合わせ、「機能」「価格」「サポート体制」のバランスを見て選定すべきです。

RPAツールには、大規模な業務に耐える高機能なものから、個人のPCで簡単に使える安価なものまで様々あります。

特に中小企業においては、IT担当者だけでなく、業務部門の社員自身が簡単なロボットを作成・修正できる使いやすさが重要です。

また、導入後に技術的な質問やトラブルが発生した際に、日本語でのサポートが充実しているかも重要な判断基準となります。自社の業務に適合する機能と継続利用できる費用体系を総合的に評価することが大切です。

まずは無料版やトライアル版を使って、社内担当者が直感的に操作できるかを確認してください。

Q3. ロボットの管理・運用はIT部門と業務部門のどちらが担うべきですか?

A3. ロボットの「作成・日常管理」は業務部門が、「基盤の整備・技術サポート」はIT部門が担う「協働体制」が理想です。

業務フローを熟知している現場(業務部門)が主導してロボットを作成・修正することで、実態に即した的確な自動化が可能になります。

一方、IT部門は、セキュリティ管理、RPAツールのライセンス管理、サーバーといった技術基盤の整備、そして複雑なエラー発生時の技術サポートに徹することが合理的です。

両部門が協力し合う体制(CoE:Center of Excellence)を構築することが、RPAを全社的に拡大させるための必須条件となります。

Q4. ライセンス費用以外に継続的にかかる費用はありますか?

A4. ライセンス費用以外に主に「保守・運用人件費」「インフラ費用」「教育コスト」が発生します。

特に見落としがちなのが、ロボットの保守・運用にかかる人件費です。操作対象のシステムが更新されたり、業務手順が変わったりするたびに、ロボットの修正作業(メンテナンス)が必要になります。

また、ロボットを安定稼働させるためのサーバー代や、新しいロボットを作成するための社員の継続的な学習コストも、ROI計算に含めるべきです。

運用フェーズのトータルコストを見積もることが、正しい投資判断に繋がります。

Q5. 請求書などフォーマットが少し異なる書類は、RPA単体で自動化できますか?

A5. RPA単体では困難ですが、「OCR(光学的文字認識)技術」やAIと組み合わせることで対応の幅が大きく広がります。

RPAはルールベースで動くため、フォーマットが少しでも異なると正確なデータ抽出ができません。

取引先ごとに異なる請求書などの非定型書類を自動化するには、手書きや印字のゆらぎを認識し、データをテキスト化するOCR技術や、AIによるデータ抽出をRPAの前段に組み込むことが必要です。

RPAは、OCRやAIが抽出した「標準化されたテキストデータ」を、他のシステムに転記する最終的な作業実行役として機能します。

高度な自動化を目指す場合は、周辺技術との連携が不可欠です。

Q6. RPAロボットは人のアカウント情報を使ってシステムを操作しますが、セキュリティ上のリスクはどのように管理すべきですか?

A6. ロボットが利用するID/パスワードは、「ロボット専用アカウント」として分離し、厳格なアクセス権限とログ管理によってセキュリティリスクを最小化する必要があります。

RPAロボットに担当者の個人アカウントを使わせることは、権限の逸脱や責任の所在の不明確化につながり、大きなセキュリティリスクとなります。

  • 専用アカウントの作成: ロボット専用のIDを発行し、必要なシステム以外へのアクセス権限は付与しないように設定するのです。
  • パスワード管理: パスワードはRPAツール内の機能などで暗号化して管理し、担当者が直接知ることができないように徹底します。
  • 操作ログの監視: ロボットによる操作はすべてログとして記録し、「どのロボットが」「いつ」「何を」実行したかを追跡できる体制をIT部門を中心に構築することが必須です。

RPA導入は、効率化だけでなく、セキュリティに関する共通ルール(ガバナンス)の構築もセットで考える必要があります。

Q7. 業務手順書はどの程度の粒度で作成すればRPA化が可能になりますか?

A7. 「誰が」「いつ」「何を」「どこで」「どうする」の五つの要素が、画面上の操作レベルで正確に記録されている粒度が必要です。

手順書は、初めてその業務を行う人が手順書を見ただけで完全に再現できるレベルが必要です。

具体的には、「どのシステムにログインし」「どのボタンを押し」「どのフィールドに何を入力し」「何秒待つか」といった、画面上の操作をすべてキャプチャ画像付きで記録する粒度が求められます。

RPAは、人間のように文脈を読んで推測する能力を持たないため、業務手順は極めて詳細かつ明確でなければなりません。

詳細なドキュメント作成自体が、業務フローのムダを見つけるための優れた分析プロセスにもなります。

Q8. 一部の業務で成功した後、全社にRPAを拡大する際の注意点は何ですか?

A8. 全社的な「共通ルール」と「中央管理体制」を構築し、ロボットの「野良化」を防ぐことが最重要です。

部門単位の成功をそのまま広げると、管理者のいないロボット(野良ロボット)が増殖し、トラブルの原因になります。

全社展開する際には、まず「RPAの利用ルール」「セキュリティ基準」「ロボットの命名規則」といった共通ガバナンスを策定してください。

また、部門ごとのロボットを一元管理するための「中央管理サーバー」の導入も検討すべきです。「中央管理サーバー」を導入することで、ロボットの動作状況やエラー発生を一箇所で監視できるようになり、属人化を防ぎつつ、安定した運用が可能となります。

まとめ|RPAのできること・できないことのまとめ

本記事では、RPAの基本概念から、RPAでできること・できないこと、そしてRPA化の範囲を決定するための4つの判断基準を詳しく解説しました。

改めて、重要なポイントを振り返ります。

RPAでできること

  • 定型業務・ルールが決まっている作業 
  • 繰り返しが多いルーチンワーク 
  • 大量データの処理・転記・集計 
  • メール配信・レポート作成などの定常タスク 

RPAでできないこと

  • 人の判断・創造性が必要な業務
  • 例外が多くルール化できない業務
  • 頻繁に仕様変更が発生する業務

RPAでできる具体的な業務

  • バックオフィス全般(データ入力・帳票作成・照合作業)
  • 人事・総務(勤怠集計、従業員データ更新)
  • 経理・財務(請求書発行、売上集計、入金確認)
  • 営業・マーケティング(リスト作成、競合調査、メール配信)
  • 受発注・在庫管理(発注処理、在庫照会、納品書作成)

RPAは、特に中小企業のバックオフィス業務における人手不足の解消と生産性の向上に極めて有効なツールです。

成功の鍵は、RPAを「万能な解決策」と捉えるのではなく、「定型業務の自動化に特化したツール」として正しく位置づけ、ROIが見込める業務に限定して適用することにあります。

また、導入前に業務フローの整理や標準化といった「人の手による準備」を徹底することも、失敗を避ける上で不可欠となります。

以上の知識を基に、貴社の業務の中からRPAが最も活躍できる領域を見極め、効率的かつ戦略的なRPA導入をぜひ始めてみてください。

「どの業務から手をつけるべきか迷っている」「自社に最適なツールがわからない」といったお悩みがあれば、ぜひ一度弊社へご相談ください。貴社の業務フローの整理からROIの算出まで、専門のコンサルタントが導入成功に向けてトータルでサポートいたします。

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