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コンサル業界の情報メディア「コンサルのあんなこと、こんなこと」を手掛ける、コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社のコラム記事に当社をご紹介いただきました。
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国内外の市場調査や市場参入コンサルティング等を手掛ける、「AXIA Marketing株式会社」のコラム記事、「【2025年最新】人気のコンサルティング会社まとめ 」に当社をご紹介いただきました。
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現役コンサルタントが業務、ITに役立つ情報を発信中
「DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めなければ」と頭ではわかっていても、「何から手を付けていいのか」と不安を感じている経営者・担当者の方は多いのではないでしょうか。
IPAの「DX推進指標」によれば、DXは単なるITツールの導入ではなく、ビジネスモデルや組織文化を根本から変革することを意味します。しかし、社内に専門人材が不足する中で、DX推進への第一歩を踏み出す道筋が見えないことが、多くの中小企業の共通課題です。
本記事では、DX推進への悩みを抱える中小企業の皆様のために、DXを成功させるための具体的な7つのステップと、変革を阻む「見えない壁」を乗り越える方法を徹底的に解説します。
記事の最後まで読めば、貴社が自信を持ってDXの実現に向けた合理的な計画を立て、最初の一歩を踏み出せるでしょう。
記事監修者

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

DX導入を早めるべき、主に2つの理由を解説します。
結論から言うと、DXは現代のビジネスにおいて、生き残りと成長のために不可欠な取り組みです。デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルそのものを変革することが、DXの核となります。
企業は市場の変化に迅速に対応できる柔軟性と、競合他社には真似できない独自の価値を生み出す力を得ることができます。
例えば、顧客データを活用して一人ひとりに最適化されたサービスを提供することで、顧客満足度とロイヤリティを飛躍的に向上できます。
また、属人化していた業務をシステム化することで、担当者が変わっても高品質なサービスを維持できるようになり、企業全体の生産性と持続性が高まります。
一方、デジタル化の遅れは、企業に深刻なリスクをもたらします。最も大きなリスクは、競争力の低下です。
競合他社がデジタル技術で業務効率化を進める中で、自社が旧態依然としたやり方に固執していては、コストやスピードの面で圧倒的に不利になってしまいます。
さらに、古いシステムはセキュリティリスクが高く、情報漏洩やサイバー攻撃の被害に遭う危険性も無視できません。早めのDX着手は、リスクから企業を守る防御策でもあるのです。

DXを成功させるためのロードマップは、闇雲にツールを導入することではありません。
成功するには以下の具体的な7つのステップがあります。
それぞれのステップを解説します。
DXは単なるIT部門の改善ではなく、経営戦略そのものです。経営層がDXの意義を理解し、実現に強くコミットすることが成功の絶対条件となります。
経営層が「なぜDXをやるのか」「DXで会社をどう変えたいのか」というビジョンを明確に示し、全社的な意識改革を主導しなければなりません。
IPAのDX導入手順によれば、オーナーや共同創業者の方がIT担当者や現場の従業員に対して、この取り組みが短期的なコストではなく、長期的な成長投資であると繰り返し伝え、理解を得ることが不可欠です。
開発を外部に依頼する前に、「何のためにシステムが必要なのか」を徹底的に言語化することが重要です。
目的が曖昧だと、開発途中で方向性がブレて、完成しても現場で使われないシステムになってしまうリスクがあります。
具体的には、「売上を10%アップさせる」「問い合わせ対応時間を20%削減する」「製品不良率を5%以下に抑える」といった、具体的な数値目標や達成後の状態を定義してください。目的が、後述するプロバイダー選定や、開発中の意思決定の基準となるのです。
外部に導入支援や開発を依頼するとしても、社内にも必ずプロジェクトの当事者となる担当者を明確に決める必要があります。
担当者は、外部のパートナーとの窓口となり、社内の要望や疑問を正確に伝える役割を果たします。
ITの専門知識よりも、自社の業務プロセスを深く理解し、決定権を持つ人物であることが重要です。担当者を決めることで、外部への「丸投げ」によるリスクを減らし、プロジェクトの進捗を見える化しやすくなります。
DX導入の一環として「システム開発」を外部委託される際の、メリット、リスク、失敗を避けるための対策について、詳しくお知りになりたい方は、ぜひこちらの記事もご参照ください。
関連記事: システム開発を外注に丸投げするのは危険?リスクと対策を徹底解説 – ビュルガーコンサルティング株式会社
目的が明確になったら、現状の業務プロセスにおける「ボトルネック(最も非効率な部分)」や「IT化すべき優先度の高い課題」を特定します。
具体的には、紙ベースで行われている業務、複数のシステム間で手動入力が発生している業務、ベテラン社員にしかできない属人化している業務などを洗い出してください。
この現状分析を外部の開発パートナーと一緒に行うことで、自分たちだけでは気づけない客観的な視点で、本当に必要な機能を見極められます。
現状の業務プロセスにおける課題と、それを解決することで得られる「実現したいビジネス成果」が明確になったら、次はデジタル技術や変革手法を検討します。
現段階で、導入する技術要素や変革テーマの優先順位付けを行うことが不可欠です。限られた予算とリソースの中で、「変革の目的達成に不可欠な要素(Must)」と「あればさらに良い要素(Want)」を区別しなければなりません。
技術選定においては、SaaSやAI、IoT、あるいはカスタム開発といった多様な選択肢の中から、最も費用対効果が高く、目的を達成できるものを選びます。
優先順位付けと技術の選定は、後のパイロット導入や全社展開の成否を左右する重要な判断基準となります。
DXの取り組みは、いきなり全社的に大きな投資を行うと、失敗した際のリスクが非常に高くなります。
そこで、まずは特定の一部署や特定の業務範囲に限定してデジタル技術を導入し、変革のアイデアを試す「パイロット導入(スモールスタート)」を強く推奨します。スモールスタートにすると、多額の初期コストを避けつつ、小さな成功体験を積み重ねることが可能です。
小さく始めることで、変革に対する社内での抵抗感も減り、全社展開に向けた貴重な知見と推進力を得られます。現段階で、導入した技術が本当に業務に適合しているかを確認すべきです。
また、外部パートナーがいる場合に、そのパートナーとの連携がスムーズかを確認することも重要な目的となります。
デジタル技術や新しい業務プロセスをパイロット導入したら、当初設定した目的(数値目標)が達成されているかどうかを具体的に測定することが必須です。
例えば、「顧客満足度が何パーセント向上したか」「データ分析にかかる時間が何時間削減されたか」といった具体的な指標で変革の効果を検証します。もし目標が達成できていなければ、導入した技術や変革の運用方法を見直す「振り返り」を行い、継続的に改善を進めます。
DXは一度変革したら終わりではなく、ビジネス環境の変化に合わせて常に進化させていくものという意識が重要です。サイクルを確立することが、持続的な競争力を生み出す鍵となります。

クラウドサービスは、サーバーなどの物理的な設備を持たずにシステムやサービスを利用できるため、中小企業にとって初期投資と運用コストを大幅に抑える上で不可欠な技術です。
この柔軟で拡張性の高い環境は、新しいサービスやツールを迅速に導入し試行することを可能にし、DXの取り組みを加速させる変革の基盤となります。
クラウド上で蓄積される顧客データ、販売データ、在庫データなどを一元的に管理し、分析ツール(BIツールなど)を使って活用することで、経験や勘に頼らず、経営の意思決定をデータに基づいて行うことが可能になります。
これは、単なる効率化を超え、ビジネスの成長戦略そのものをデータ駆動型に変革する、DXの核となるアプローチです。
RPA(Robotic Process Automation)は、パソコン上で行う定型的な作業をソフトウェアのロボットが代行し、業務を自動化するツールです。
これにより、データ入力や集計、メール送信といった間接業務の負担を大幅に削減できます。また、AI技術を組み込むことで、より高度な判断や予測をシステムが行えるようになり、例えばカスタマーサポートの自動応答や需要予測の精度向上が期待できます。
これらのツールは、社員をルーティンワークから解放し、コア業務に集中させる上で大きな役割を果たします。
製造業や物流、建設業など、現場を持つ業種において、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)は非常に強力なDXツールとなります。
現場の機器や設備にセンサーを取り付け、温度、稼働状況、振動などのリアルタイムデータを収集・分析することで、故障の予知保全や、作業効率の改善に役立てられます。
データに基づいた現場改善は、経験や勘に頼る属人化を解消し、品質の安定とコスト削減に直結します。
SaaS(サース)とは、クラウドを通じて提供されるソフトウェアサービスであり、自前でサーバーを用意したり、システムをインストールしたりすることなく、インターネット経由で必要な機能を利用できる仕組みです。
中小企業にとって、SaaSはDXの最初の一歩を踏み出す上で現実的かつ有効な選択肢となります。
その利点は、初期投資の劇的な削減と導入スピードの速さにあります。契約すればすぐに利用できるものが多いため、数日〜数週間で業務に組み込むことが可能です。
しかし、SaaSは多くの企業に向けた汎用的な仕様である反面、自社の特有の強みや業界の独自性に基づいた深い業務変革には対応しきれない可能性があります。
システム開発は、SaaSのような既製ツールでは解決できない「自社独自の課題」を解決するための、最も戦略的かつ強力なDXのアプローチの一つです。
システム開発には、以下のような、ビジネス変革に直結する具体的な例が含まれます。
このように、システム開発は、単にIT化を進めるだけでなく、ビジネスモデルそのものを強化し、他社との差別化を図るための重要な投資となります。

企業は、DX推進中に様々な障壁に直面し、変革が途中で頓挫してしまうケースが少なくありません。
単に技術的な問題だけでなく、以下のように様々な失敗するきっかけがあります。
ここでは、そういった失敗しやすい場面を紹介します。中小企業が特に陥りやすい落とし穴を事前に把握することで、成功確率を飛躍的に高められるでしょう。
中小機構の『中小企業のDX推進に関する調査(2023年)』によると、多くの中小企業にとって、DXの推進を担う専門人材の不足は最大の壁となります。
自社内に高度なIT知識を持つ人材や、デジタル戦略を立案できる人材(デジタル人材)がいない場合、DXは企画段階から停滞してしまいます。
外部パートナーに依頼する場合でも、自社の課題や要望を正確に伝え、外部の提案を評価・判断するための社内IT部門や担当者の存在は不可欠です。専門人材がいないと、外部ベンダーの言いなりになってしまい、ベンダー依存に陥るリスクが高まります。
この問題を解決するためには、外部のプロの力を借りつつも、社内担当者が主体的にプロジェクトに関わり、ノウハウを蓄積する体制づくりが求められます。
DXは「デジタル技術の導入」が目的ではなく、「ビジネスモデルや競争力の変革」という目的を達成するための手段です。
しかし、「流行っているから」「競合もやっているから」といった曖昧な理由でDXをスタートさせると、プロジェクトは必ず失敗します。
「何のためにDXをするのか」「どのような数値目標を達成したいのか」目的や数値目標が不明確だと、開発がブレて「使えない」結果になりかねません。
特に、費用対効果(ROI)が見えない状態では、経営層の関心が持続しにくくなり、途中で予算がストップしてしまう大きなリスクとなります。
新しいデジタルシステムを導入しても、それを実際に使う現場の従業員が「今までのやり方が楽だ」「なぜ変える必要があるのか」と抵抗感を持つことで、DXの取り組みが停滞してしまうケースが非常に多く見られます。
単にシステムの問題ではなく、既存の業務文化や企業風土の問題です。長年培ってきた業務フローや習慣を変えることへの心理的な抵抗感は、想像以上に大きな壁となります。
既存文化の壁を乗り越えるためには、経営層がDXのビジョンを明確に示し、「なぜ変わる必要があるのか」を繰り返し説明し、現場を巻き込むための丁寧なコミュニケーションと教育が不可欠です。
DXの失敗例として最も多いのが、RPAやクラウドサービス、AIといった特定の技術を導入した時点で満足してしまうケースです。
DXを「ITツール導入」と誤解していることに起因します。
ツールはあくまで道具であり、導入しただけでは業務変革や競争優位にはつながりません。重要なのは、そのツールを使って業務プロセスをどう見直し、データから何を読み解き、新しい顧客体験をどう創造するかという点です。
技術導入後に、継続的な効果測定と改善(効果測定と改善のステップ)を行わなければ、結局は高額なツールを導入しただけで終わってしまいます。
さらにDX推進における具体的な課題や、うまくいかない要因、そしてその解決策について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
関連記事: 中小企業のDXが進まない理由5選|失敗する会社の共通点と成功ステップ – ビュルガーコンサルティング株式会社

A1. 可能です。むしろ、小規模企業の方が意思決定が迅速で、DXの成功確率が高いと言えます。
DXは企業の規模ではなく、変革への意思が最も重要となります。大企業のように巨大なシステムを導入する必要はありません。
まずは「スモールスタート」を徹底し、自社のコア業務や顧客体験に直結する最も非効率な一点に絞ってデジタル技術を適用してください。
例えば、営業活動における顧客情報の一元管理や、在庫管理の自動化など、小さい投資で大きな効果が見込める領域から始めましょう。
A2. 導入する技術やシステムの範囲によって大きく異なりますが、数10万円から数100万円以上の幅があります。
初期投資は、単に「コスト」と捉えるのではなく、「将来的な競争優位性を得るための戦略的投資」として考えることが大切です。多額の初期投資が難しい場合は、SaaSのような既存のクラウドサービスを利用することで、初期費用を抑えられます。
一方、貴社の独自の課題を解決するためのカスタムシステム開発には、要件にもよりますが数100万円単位の初期投資が必要になる場合があります。重要なのは、投資対効果(ROI)を必ず試算し、その根拠を明確にすることです。
A3. 経営層からの丁寧な「対話」と「巻き込み」によって、不安を「期待」に変えることが重要です。
社員が抵抗するのは、「自分の仕事が奪われる」という不安や、「新しいことを覚えるのが面倒」という心理的な壁があるからです。
壁を乗り越えるには、「なぜDXが必要なのか(企業の未来)」と、「DXが社員一人ひとりにどのようなメリットをもたらすのか(ルーティンワークからの解放、コア業務への集中)」を、経営層が繰り返し説明する必要があります。
また、システムの導入初期から、現場の「キーパーソン」をプロジェクトに巻き込み、彼らを「社内推進役」として育成することも有効な手段です。
A4. 効果の種類によって異なりますが、早いものでは導入後数カ月で実感できます。
ルーティンワークの自動化(RPAなど)や、データ入力の一元化(SaaSなど)といった業務効率化に関する効果は、比較的早期、導入後3ヶ月〜6ヶ月程度で数値として現れやすいです。
しかし、DXの本質である「ビジネスモデルの変革」や「企業文化の醸成」といった戦略的な効果は、半年から1年以上の継続的な取り組みを経て徐々に現れてきます。事前に測定可能なKPI(重要業績評価指標)を設定し、短期的な成果と長期的な成果の両方を追跡することが重要です。
A5. 「顧客接点」と「業務のボトルネック」という二つの視点から、効果が最大化する領域を優先すべきです。
まず、顧客体験(CX)を向上させる領域(例:Webサイトでの顧客情報取得、オンラインでの問い合わせ対応)は、売上に直結するため優先度が高いです。
次に、社内業務の「ボトルネック」となっている領域(例:データ入力の手作業、複数部署をまたぐ紙ベースの承認フロー)は、改善によって全社的な効率が向上するため、こちらも優先すべきだと思われます。
この二つの視点を持ち、「効果が高く、着手しやすいスモールスタートの領域」を初期フェーズとして選定してください。
A6. はい、社内にデジタル人材が不足している中小企業においては、戦略立案から開発まで伴走してくれる「戦略的パートナー」の活用は非常に有効であり、成功への近道です。
外部パートナーは、貴社にはない専門的な技術と客観的な視点を提供してくれます。導入支援や開発だけでなく、貴社のビジネス課題を深く理解し、戦略的な提案ができるパートナーを選ぶことが成功の鍵となるでしょう。
大手Slerにこだわらず、類似業種での実績があり、費用対効果の高い提案ができる「伴走型」の開発パートナーを探すことが、費用面・信頼面で最も合理的な選択となります。
A7. DXは「作って終わり」ではなく、「運用しながら改善を続ける」という体制を確立することが極めて重要です。
導入後も、システムが最大限に活用されているか、当初の目的に対して効果が出ているかを定期的に効果測定してください。
現場からのフィードバックを収集する仕組みを作り、使い勝手の改善や機能の追加を継続的に行うことが成功の秘訣です。
外部パートナーがいる場合は、導入後の保守運用契約を結び、システムの安定稼働と、ビジネスの変化に合わせた継続的な改修をサポートしてもらう体制を構築しましょう。
A8. セキュリティ対策は、DXの取り組み全体の「設計段階」から組み込むべき必須要件であり、単なるIT部門の責任ではありません。
デジタル技術を活用したデータの収集・利用は、DXの核となりますが、同時に情報漏洩やサイバー攻撃のリスクも増大させます。
セキュリティ関連のリスクを管理するためには、導入する新しいデジタルツールやプロセスが、個人情報保護法などの関連法規とセキュリティ基準を事前に徹底確認し、リスクを管理する必要があります。
また、最も重要なのは、社内体制の整備です。全従業員に対してセキュリティ教育を定期的に実施し、アクセス権限を厳格に管理することで、人為的なミスによるリスクを最小限に抑えられます。
外部のデジタルサービスやツールを活用する場合も、その提供元の情報セキュリティ管理体制(例:ISMS認証の取得状況)を確認し、信頼できる基盤の上でDXを推進することが不可欠です。
今回は、「DXは何から始めるか」という問いに対して、中小企業が取るべき具体的な7つのステップとを解説しました。
DXを成功させるための核は、「デジタル技術の導入」ではなく、「ビジネスの変革」という目的を達成するために、発注者側が主体性を持ってプロジェクトに関わり、戦略的パートナーシップを築くことです。
改めて、重要なポイントを振り返ります。
なぜDX導入を早めに進めるべきか
成功するDX推進の進め方
【成功のための重要ポイント】
これらのポイントを押さえることで、課題解決と競争優位の確立に向けたDXをスムーズに導入できるでしょう。
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『DXが進まない…』と悩む中小企業の経営者は少なくありません。
変化の激しい市場環境では、DXの遅れはそのまま「競争力の喪失」につながります。
社内からも「頭では分かっているが、現場が動かない」「何から手をつければいいか分からず、後回しになっている」といった声が多く聞かれます。
中小企業のDX推進の鍵となるのが、中小企業基盤整備機構が2024年に発表した調査レポートで明らかになった「DXがうまく進まない中小企業に共通する課題」です。
この記事では、なぜDXが現場で止まってしまうのかを構造的に整理し、中小企業でも実行できる具体策を解説します。
DX推進が「進まない状態」から「少しずつでも前に進む状態」へと変わるための道筋をまとめました。
記事監修者

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が2024年12月に公表した「中小企業のDX推進に関する調査」によると、DXに取り組む上での課題として、人材不足や予算の問題が上位を占めていることが明らかになりました。
日本の中小企業でDXが進まない主な理由は、以下の5つです。
どれか一つだけが原因ではなく、5つが複合的に絡み合うことでDXの取り組みが前に進まなくなってしまいます。
DXが進まない最大の要因は、システム導入や運用を現場レベルで担う「IT人材」の不足です。
中小機構の調査でも、DXに取り組むに当たっての課題として最も多くの企業が挙げたのが「ITに関わる人材が足りない(25.4%)」でした。
社内に専任の情報システム担当者がおらず、総務や経理の担当者が兼任しているケースも少なくありません。
社内に担当者がいないため新しいツールを導入しようとしても、セキュリティ設定やデータ移行といった技術的なハードルを越えられず、検討段階で頓挫してしまうのです。
また、知識がないまま外部のシステム会社(ベンダー)に丸投げしてしまい、自社の規模に合わない高額なシステムを契約してしまう失敗ケースも後を絶ちません。
「分からないから任せる」という姿勢が、結果としてDXを複雑化させているのです。
技術的なスキルを持つIT人材に次いで深刻なのが、プロジェクト全体を牽引する「DX推進人材」の不足です。
中小機構の調査では、24.8%の企業が「DX推進に関わる人材が足りない」ことを課題として挙げており、IT人材不足とほぼ同水準の深刻さとなっています。
DX推進人材は単にツールに詳しいだけでなく、自社の業務フローを深く理解し、現場を説得して抵抗感を和らげるリーダーシップが必要です。
しかし、従来の日本企業では、変革を断行できるタイプの人材が育ちにくい傾向があります。
社長が号令をかけても、現場レベルでプロジェクトを回せる「翻訳者」が不在なため、DX推進の計画が頓挫してしまうのです。
中小企業にとって、即座に売上に直結しないDX投資への予算確保は、経営判断として高いハードルとなります。
調査結果でも「予算の確保が難しい」との回答が24.5%に上り、人材不足と並んでトップ3の課題となっています。
特に老朽化した基幹システムの刷新は高額な投資を伴いますが、現状のアナログ業務でも「なんとか回っている」ため、経営層の意思決定が先送りにされがちです。
投資に踏み切れない状況が続くことで「とりあえず無料ツールで」といった部分的な対応に終始し、全社レベルの変革には結びつきません。
特に中小企業では、目先の資金繰りや固定費の捻出が優先されやすく、中長期視点での投資判断が後回しになりがちです。
経営層や現場がDXに消極的になる大きな心理的要因のひとつは「苦労して導入しても、本当に効果があるのか?」という疑念です。
実際に、DXに取り組む予定がない企業に理由を尋ねたところ「具体的な効果や成果が見えない(23.9%)」が上位の理由として挙げられています。
特に導入初期は、これまでの紙業務と新しいシステム入力の「二重管理」が発生しやすく、一時的に業務量が増える傾向にあります。
導入時期に効果が見えず「前のやり方のほうが早かった」と現場が回帰してしまうのです。
デジタル化の恩恵は、事前に数値で正確に予測することが困難です。
「投資対効果(ROI)」を厳しく問われる中で、担当者が明確な答えを出せず、企画が却下されるという悪循環が多くの企業で起きています。
DX投資における費用対効果の考え方については、「DX化の費用対効果」を解説した記事で詳しく整理しています。合わせてご確認ください。
関連記事:DXの費用対効果は「測れない」は嘘?ROI計算方法と効果測定の6ステップ
ツールや予算が揃っていても失敗する根本的な原因は、変化を拒む「企業文化・風土」にあります。
中小機構の調査の課題ランキングにも「DXに取り組もうとする企業文化・風土がない」という項目が挙げられました。
長年、アナログでの調整で業務を回してきた現場には「今のやり方が一番早い」という強力な現状維持バイアスが働いています。
従来のやり方に囚われる背景には、失敗を許容しない減点主義の評価制度や過去の成功体験への執着があるのが実情です。
現場の理解を得ないままツールだけを導入すると、「また上から押し付けられた」と反発を招き、結果としてツールが定着しないまま形骸化してしまうリスクが高まります。
心理的障壁を取り除かない限り、どんな高機能なツールも定着しません。
弊社に寄せられる相談でも「ツールは入れたが、結局使われなくなった」というケースは多く、原因を掘り下げると、ほとんどが技術ではなく「組織の空気」の問題に行き着きます。

「うちは中小企業だし、アナログでも十分回っている」「ITなんて導入しても、現場が混乱するだけだ」
現場から上がってくる声には、的を射ている部分もあります。目先の業務効率に限って言えば、慣れ親しんだ紙と電話のアナログな手法が最も効率的かもしれません。
しかし、短期的な視点ではなく数年単位で業務効率化を考えると「DXは必要ない」という判断は、企業の存続に直結する重大な判断ミスになります。
DXが進まないことによる3つのリスクを「市場からの退場」「人手不足倒産」「若手人材に選ばれない職場」という観点から整理します。
「今のやり方でも何とか回っている」という感覚こそが、実は気づきにくいリスクであり、少しずつ衰退に向かう入り口になってしまうのです。
競合他社はデジタル活用によって見積もりの回答スピードを半減させ、在庫状況をリアルタイムで顧客に共有できる体制を整えています。
一方、アナログな業務体制の企業では、電話やFAXでの確認業務に多くの時間を割かざるを得ない状況です。
顧客の立場になれば「対応が早い」「手続きがスマホで完結する」企業を選ぶのは当たり前です。
品質や価格に大差がなければ、利便性の高い方へ顧客は流れていくでしょう。
気づかないうちに失注が増え、長年の取引先からも「あそこは対応が遅い」と敬遠され始める可能性があります。
ビジネスのルールがデジタル前提に書き換わっている現代において、アナログへの固執は「現状維持」ではなく「退化」を意味します。
市場から退場を宣告される前に、変化に適応する体質へと転換しなければなりません。
少子高齢化が進む日本において、人手を確保できないことによる「人手不足倒産」が過去最多ペースで増加しています。
実際に帝国データバンクの調査によると、2024年には人手不足倒産が342件に上り、前年比で1.3倍となりました。さらに、2025年度上半期だけでも214件と、上半期として過去最多を記録しています。
これまで人力で回してきた事務作業や在庫管理、配送手配も人手そのものが足りなくなり、従来のやり方では立ち行かなくなる場面が増えていくでしょう。
人手不足が深刻化する状況でDXが果たす役割は、単なる「業務効率化」ではありません。限られた人員でも事業を継続できるようにする「省人化」こそが本質です。
RPAで定型業務を自動化したり、AIチャットボットで問い合わせ対応を省力化したりすることは、単に業務を楽にするためではありません。
人手が不足しても業務が止まらない体制を作るための備えといえます。
若手人材にとって、企業のデジタル環境は、給与や福利厚生と並ぶ重要な選定基準になっています。
スマートフォンやSNS、クラウドツールが当たり前の環境で育った「デジタルネイティブ世代」にとって、アナログな職場環境は想像以上のストレスです。特に手書き書類や電話・FAX中心の業務は負担が大きくなります。
実際に株式会社カミナシが行った調査によると、企業がデジタル化・DXをほとんど進めていない職場では、若手の入社・転職意向が約9割下がるという結果も出ています。
「この会社は時代遅れだ」「ここで働いても市場価値のあるスキルが身につかない」と判断されれば、優秀な若手から敬遠されてしまうでしょう。
面接の逆質問で「リモートワーク環境はありますか?」「どのようなITツールを使っていますか?」と聞かれるケースも増えているようです。
DXへの取り組みは、顧客サービスの向上だけでなく、未来を担う人材に選ばれるための「採用ブランディング」にもなりうるのです。
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リソースに限りのある中小企業が確実に成果を出すためには、身の丈に合った正しい順序で進めていく必要があります。
失敗リスクを最小限に抑えつつ、着実に変革を実現するためのステップは以下の5つです。
それぞれ詳しく解説します。
DXはツール選定から始めるものではありません。
必要なのは、経営層が「なぜDXに取り組むのか」「自社はどこを目指すのか」を明確にし、自分の言葉で社内に発信することです。
目的が曖昧なままでは、現場はDXを「よく分からない追加業務」と捉えてしまいます。
「危機感」と「DXで実現したい未来」をセットで語り、社員にとってのメリットまで具体化することが重要です。
さらに経営層自らがデジタルに触れ、学ぶ姿勢を見せることで、DXは組織全体に浸透していきます。DXの出発点はツールではなく、経営者の意志と行動です。
ビジョンが固まったら、次は業務の棚卸しと課題の見える化です。
どの業務に時間がかかっているのか、どこが属人化・非効率になっているのかを整理し、無駄な業務は、デジタル化する前に「やめる・減らす」といった削減・見直しを行います。
すべてを一気に変えるのではなく「現場の負担が大きく」「効果が見えやすく」「導入しやすい業務」から小さく始めることが重要です。
たとえば勤怠管理や経費精算、簡単なデータ集計などを対象にし「残業が減った」「作業が楽になった」という成功体験を作ることで、DXは社内に広がるでしょう。
中小企業のDX事例を分析すると、成功している企業ほど「完璧な計画」ではなく「小さな一歩の積み重ね」を重視している傾向があります。
DXはツールではなく「人」で決まります。
どれだけ優れたシステムを導入しても、使いこなす人材が育っていなければ成果は出ません。
社内では、デジタルリテラシー向上の研修やノーコードツールの実践教育を通じて、業務とITをつなぐ人材を育成していくことが重要です。
「IT人材がいないから」と外部に丸投げするのは失敗のもとになります。
DXの主導権はあくまで自社が持ち、外部のパートナーにはあくまで伴走してもらう形が理想です。
外部パートナーには運用ノウハウが社内に残るよう依頼し、最終的には自走できる体制づくりを目指しましょう。
「予算がない」からといって、DXを諦める必要はありません。
国や自治体は中小企業のDXを後押しする補助金・助成金を多数用意しており、これらを活用すれば初期投資の負担を大きく軽減できます。
申請には手間がかかりますが、支援機関や専門家の力を借りることで現実的に進められるでしょう。
また、申請に必要な事業計画書の作成は、自社のビジネスモデルや投資対効果を見直す良い機会にもなります。
資金不足を理由に止まるのではなく、使える制度を活用し、DXへの一歩を踏み出しましょう。
DXはツールを導入した瞬間に終わるのではなく、導入してからが本番です。
新しいシステムを入れると、慣れない操作によって一時的に生産性が落ちる「Jカーブ」と呼ばれる現象が起きるケースが少なくありません。
Jカーブの局面で「業務が遅いじゃないか」と諦めるのではなく、「最初の半年」を定着期間と捉え、継続的なフォローを行いましょう。
具体的には、マニュアル整備や現場向けの勉強会、定期的なヒアリングと改善の繰り返しなど、使われ続ける環境を整えることが欠かせません。
DXはツール導入ではなく、業務のやり方と社内文化を変える取り組みです。社員が当たり前にデジタルを使い、改善が日常になる状態こそがゴールです。
定着指標の一例としては「ツール利用率80%以上」「対象業務のデジタル化率70%以上」などをKPIに設定するケースもあります。
導入直後にフォローが途切れると、DXは定着せずに形骸化しやすくなります。DXは一度きりではなく「使いながら育てていくもの」と考えましょう。

5つの要因が複合的に絡み合うことで、「必要性は感じているのに、前に進めない」という状態に陥っている企業が少なくありません。
最近では月額数百円〜数千円で利用できるSaaSや、プログラミング不要で使えるノーコードツールが数多く提供されています。
例えば、勤怠管理、経費精算、顧客管理、社内情報共有などは低コストのクラウドツールでも十分に改善可能です。
まずは身近な業務のデジタル化から着手し、そこで削減できた時間やコストを次の投資に回すことで、無理のない形でDXを段階的に進められます。
DX人材が社内にいない場合は、まず外部の専門家(副業人材・DXコンサルタントなど)の力を借りてプロジェクトを立ち上げることが有効です。
同時に社内からITへの関心や改善意欲の高い若手社員をアサインし、外部人材とペアで動かすことで、OJT形式で育成できます。
重要なのは、外部に「丸投げ」するのではなく、知見を社内に残す形で進めることです。
外部人材とペアで動かす体制をとることで、短期的な推進力と中長期的な人材育成の両立が可能になります。
DXに対する反対は、理屈よりも「不安」や「面倒」という感情が原因で起こる場合が多いです。
まずは一部の部署で小さく試験導入し、「残業が減った」「作業が楽になった」といった具体的な効果を体験してもらうことが最も効果的でしょう。
次に、現場で影響力を持つキーマン(古参社員・リーダー格など)をプロジェクト初期から巻き込み、意見を反映しながら進めることで、「自分たちの仕組みだ」という当事者意識が生まれます。
成功体験とキーマンの協力が揃えば、反対は自然と減り、全社展開がスムーズになります。
建設業なら図面や工程管理のデジタル化、農業ならセンサーを使った水やり・温度管理など、アナログ要素が多い業界ほど「ムダな作業」や「手間のかかっている業務」が残りやすく、改善の余地が大きい傾向があります。
DXの目的は、日々の業務をもっと楽にすることです。
まずは「時間がかかっている作業」「面倒だと感じている作業」から見直すことで、自社なりのDXはどんな業界でも必ず見つかります。
経済産業省の「DXレポート」では、老朽化したシステムの放置により、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告しています。
多くの企業では、古く複雑化した基幹システムがブラックボックス化し、維持費の増大や新技術への対応遅れを招いているのが現状です。
放置すると、DXが進まず、国際競争力の低下につながると指摘されています。
「2025年の崖」はIT部門だけの問題ではなく、経営課題です。早めにシステムと業務の見直しに着手することが重要です。
この記事では、中小機構の2024年のデータに基づき、DXが進まない構造的な理由とその対策について解説しました。
重要なポイントは以下の3点です。
「うちには無理だ」と諦める前に、まずは目の前の小さな業務課題をデジタルで解決することから始めてみてください。
小さな一歩が、やがて会社全体を救う大きな変革へと繋がっていきます。社内の業務を一度洗い出し、「一番ムダな作業は何か」を見極めるところから着手してみるのがおすすめです。
「自社のどの業務から着手すべきか分からない」「現場の説得に自信がない」とお悩みの場合は、専門家の視点を取り入れるという選択肢もあります。
まずは無料相談で、貴社の現状における「DXのボトルネック」を診断することから始めましょう。
お問い合わせフォームでは「DX開発パートナーズ」をお選びください
「DXの費用対効果の測り方が分からない…」
「数値での評価方法が分からず、DX推進をためらってしまう…」
DX推進のための投資は決して安価ではないため、目に見える効果が出るのか不安になり、意思決定を先送りにしてしまう経営者も少なくありません。
この記事では、DX投資の費用対効果を数値で評価するための6つのステップを解説します。
紹介するステップに沿って整理すれば、DX推進の費用対効果を明確に測定できるようになります。
費用対効果を明確に測定できれば、DX推進に投資すべきかどうかを自信を持って判断できるようになるでしょう。
記事監修者

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

ここでは、DX投資の「モノサシ」となる基本的な費用対効果の測定方法を整理します。加えて、判断基準となる目安の数値を専門家の視点から解説します。
費用対効果を測る最も代表的な指標が「ROI(Return On Investment:投資利益率)」です。
ROIとは、投じた費用に対してどれだけの利益を生み出したかをパーセンテージで示す指標です。
従来のIT投資(例:サーバーの入れ替え)は、「コスト削減」が主な目的でした。
一方、DX投資は業務効率化だけでなく、「ビジネスモデルの再構築」「新たな顧客価値の創出」といった収益機会を生み出す点が大きな特徴です。
中小企業庁「2024年版中小企業白書」では、DXに取り組む企業がまず期待する効果として「業務効率化(44.5%)」「人件費等の削減(30.3%)」「業務プロセスの改善(30.0%)」といった効率化が上位を占めています。
一方で、売上向上の効果が出ている企業は「既存製品・サービスの価値向上」や「新製品・サービスの創出」など、高付加価値の取り組みにも成果を感じている点が特徴です。
多くの企業はDXをコスト削減のための投資と認識しがちですが、成熟度の高い企業ほど新たな収益源を生み出す投資としてDXを活用していることが分かります。
ROIの計算式は非常にシンプルです。経営者であれば、ROIの計算式は必ず押さえておくべきでしょう。
例えば、800万円を投資して新たな在庫管理システムを導入したとします。
この場合のROIは「(500万円÷800万円)×100=62.5%」です。
DXでは、ROIのみを評価基準とするのではなく、複数の施策を比較して最適な投資先を選定する視点が求められます。
利益率・回収期間・業務改善幅を比較し、「限られた資金をどこに配分すべきか」を明確にすることで、経営判断の質を高められます。
費用対効果を計算する際、効果を「定量(数値化できるもの)」と「定性(数値化しにくいもの)」に分けて考えてください。
| 種類 | 内容の例 | ROIへの算入方法 |
|---|---|---|
| 定量効果 | 工数削減、作業時間短縮、ミス削減、運用コスト削減 | 時給 × 削減時間、削減コストの年間換算 |
| 定性効果 | 満足度向上、離職率改善、ブランド価値向上、顧客体験向上 | 離職コスト削減、LTV改善、CPA改善などに換算 |
中小企業白書でも、DXに取り組む企業の多くがまず「業務効率化」や「コスト削減」といった定量効果を期待していると示されています。
一方で、DXの取組段階が進んだ企業ほど「既存製品・サービスの価値向上」や「新製品・サービスの創出」といった定性的な効果にも注目していると分析されています。
投資判断では、短期のコスト削減だけを重視するのは危険です。定性効果をどこまで数値に落とし込めるかが、DX投資の成否を大きく左右します。
定量効果とは、コスト削減や業務効率化などの数値化しやすい効果のことです。
具体例は以下のとおり。
特に人手不足が続く中小企業では、工数削減によって「増員せずに業務量を維持・拡大できる状態」をつくれる点も、大きな投資対効果と言えます。
定性効果は「数値化が難しい」と言われますが、実務ではほぼすべて数値化できます。
具体例は以下のとおり。
定性効果を数値に落とし込めないまま判断してしまうと、DX投資の本来の価値を見落としてしまいます。
また、DXは業務標準化を進める効果もあります。
担当者によって作業品質が異なる属人化を抑制し、業務のばらつきをなくすことで、長期的な生産性の安定につながるでしょう。
ROIとセットで確認すべきなのが、「投資回収期間(Payback Period)」です。投資回収期間とは、投資した費用を、何年で回収できるかを示す指標です。
「投資額÷年間のキャッシュフロー(利益額)」で計算できます。
ROIと同じ例(投資額800万円、年間の利益額500万円)で投資回収期間を計算してみましょう。
投資回収期間:800万円÷500万円=1.6年
つまり、このシステム投資は約1年半で元が取れる、という計算になります。
中小企業の経営判断では、投資によって得られる利益を示すROIの把握が欠かせません。
同時に投資額の回収年数を示す回収期間も確認することで、キャッシュフロー負荷を適切に評価できます。
「結局、ROIは何%なら投資すべきなのか?」という質問は、私たちがコンサルティング現場で最も多く受ける質問の一つです。
結論から言えば「すべての企業に共通する絶対的な合格ライン」は存在しません。しかし、判断の目安はあります。
IT投資のROIに関して、KPI Depotは「20%を超えると強いパフォーマンス」と示しています。
KPI Depotの基準から見ると、3〜5年で投資回収できるROI20〜33%は実務上の妥当なラインと言えるでしょう。
なお、ガートナーの2024年調査では「ビジネス目標を達成した、あるいは上回った」と評価されたデジタル施策は48%にとどまったと報告されています。
成果を十分に出せるプロジェクトは半数弱であるため、事前にROIや投資回収期間を数値で設計し、「どの施策に資金とリソースを集中させるか」を見極める視点が不可欠です。
DX投資は業務効率化だけでなく、在庫最適化や工程管理の改善によって、投資対効果(ROI)を大きく引き上げています。ここでは、3つの事例を紹介します。
某カード会社に対し、UiPathを活用した業務自動化(RPA導入)支援を行いました。
従来、内部システムの手動操作や判断業務に多くの工数を割いており、属人化や業務負荷の増大が課題でした。
本支援では単なる自動化にとどまらず、データ分析に基づく業務統合までを包括的に推進しました。
「RPA導入の枠組み(自動化→横展開→処理データの可視化・蓄積(データマート構築)→業務統合)」を推進した結果、以下の効果が得られています。
弊社では、本事例のように成果につながる業務整理から着手する導入支援を行っております。
貴社業務における自動化・効率化の可能性について、まずはお気軽にご相談ください。
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金属加工機器メーカーの日酸TANAKA株式会社では、棚卸作業が年2回必要でした。
棚卸作業の際、生産ラインを停止しながら「2日×複数名」で棚卸を実施しており、年間約500万円の機会損失が発生していました。
在庫管理を自動化するスマート棚卸システムを導入した結果、以下の効果が得られたようです。
投資額は非公開ですが、投資額を仮に600万円と仮定すると、ROIは56.6%、投資回収期間は1.7年となります。
引用元:SmartMatCloud
全国のワークマン店舗では、1店舗あたり約10万SKUの商品を店長が毎日手入力で発注しており、1日30分の作業が常態化していました。
AIによる自動発注システムを導入したことで、以下の定量・定性効果が生まれています。
投資額は公開されていませんが、同規模のAI発注システムを想定して投資額を5,000万円と仮定します。
作業時間削減や在庫最適化による年間便益を3,000万円とすると、ROIは60%となり、投資回収期間は約1.7年です。
引用元:IT Leaders

ROI(費用対効果)を計算するうえで、まず費用を正確に把握してください。費用の見積もりを誤ると、ROIの計算がすべて崩れてしまいます。
「DX」と総称しても、目的や進行段階によってコスト規模は大きく異なる状況です。
ここでは、経営者として押さえておくべき「費用の相場観」と「具体的な内訳」を解説します。
DXの成熟度は、経済産業省やIPAの資料でも示されているように、一般的に次の3段階に整理できます。
紙の書類をPDF化したり、Excelによる管理をSaaSツールに置き換えたりするなど、アナログ業務をデジタルに置き換える段階です。
導入にかかるコストは数十万円〜数百万円ほどで、例えば勤怠管理ツールやWeb会議システムの導入がこのフェーズに含まれます。
特定の業務プロセス全体をデジタルで完結させ、効率化を図る段階を指します。
特に受発注や請求処理など、複数部門が関わるワークフローはデジタル化の効果が大きい領域です。
どの工程を自動化し、どの工程を人が判断するのかを整理することで、改善効果を最大化できます。
例えば、受発注から在庫管理、請求までを一気通貫でデジタル化するイメージです。
導入コストは数百万円〜数千万円ほどで、SFA/CRMの導入や、基幹システム(ERP)の刷新がこのフェーズに該当します。
デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルやサービスを生み出し、事業そのものを変革します。
例えば、データ分析を基にした新サービスの開発や、IoTを活用した製品のサブスクリプション化などに当たる内容です。
導入コストは数千万円〜数億円以上となり、極めて大きな投資規模となる段階です。
多くの中小企業が「DX」と認識している内容の多くは、第1段階と第2段階に該当します。
まずは自社の取り組みがどの段階なのかを把握することが重要です。
ITベンダーの見積もりを精査するためにも、コストの「内訳」を理解しましょう。
DXの費用は、大きく以下の3つに分類されます。
特に「人件費」は、ベンダーの見積書に載らないケースがほとんどです。
しかし、投資対効果を厳密に計算する上では、人件費や人材育成費も含めて「総投資額」として捉える視点が、経営者には不可欠です。
また特定ベンダーの独自仕様に過度に依存すると、ベンダーロックインが発生します。
ベンダーロックインが発生すると、将来的な乗り換えコストや追加開発費が増加し、費用対効果を悪化させる要因になります。

DXの費用対効果は以下のステップで測定できます。
| ステップ | 内容 | 具体的にやること |
|---|---|---|
| 1 | 現状の評価 | 現行工数・作業時間・ミス・人件費・機会損失を棚卸し |
| 2 | 目標設定(To-Be) | 削減したい工数・改善したい業務・KPIを数値で設定 |
| 3 | 効果試算(数量ベース) | 削減できる時間・件数などを“数量”で算定 |
| 4 | コスト計算 | 初期費用・運用費・人件費・育成コストを合算 |
| 5 | 利益計算 | 数量ベースの効果を金額に換算 |
| 6 | ROI・回収期間算出 | ROI%と回収年数を計算して投資判断 |
この手順に沿って数字を当てはめるだけで、誰でも論理的な投資判断が可能になるでしょう。
DXの効果を正しく測定するためには、業務の現状を数値で把握する作業が欠かせません。
スタート地点を明確にしなければ、改善幅を判断できず、投資判断も曖昧になるでしょう。
作業時間や担当者の負荷を定量化すれば、業務のどこがボトルネックかを明確にできます。
手入力作業の月間工数や、入力ミスによる手戻り時間を把握すれば、改善後の効果を数値で比較が可能です。
業務負荷と課題を数値で可視化する工程が、DXの投資判断と効果測定の基盤となります。
自社のDXの成熟度を客観的に把握する手段としては、IPAが公表している「DX推進指標」を活用する方法もあります。
自己診断フォーマットに沿って現状をスコアリングしておくと、DX投資の優先度や投資範囲を検討する際の基準として役立つでしょう。
現状を把握したら、次に「目標設定(To-Be)」を行います。
DXで改善したい数値を明確にし、どの水準まで引き上げるかを定義してください。
目標設定では、改善後の状態を具体的かつ測定可能な指標(KPI)に落とし込む作業が重要です。
具体例
「業務効率化」といった曖昧なスローガンではなく、「工数を月72時間削減する」という明確なゴールを設定することが、DX成功の鍵となります。
目標が定まったら、目標を達成することで「どれだけの効果(リターン)が生まれるか」を試算しましょう。
効果を試算する際、改善対象となる業務プロセスを細かく分解し、各工程がどれだけ短縮されるかを把握すると、効果を正確に算出できます。
プロセス単位で可視化することで、改善幅を見誤るリスクが減ります。
効果試算の段階では、まだ金額に換算せず「どれだけの業務が改善されるか」という物理的な効果を明確にしましょう。
次に、ステップ3で算出した効果を得るために必要な「コスト(投資額)」を計算します。
ベンダーから提示された見積書だけで判断せず、人件費や人材育成費もすべて含めて算出します。
具体例:
経営者としては、初年度の「初期投資額」と、2年目以降の「ランニングコスト」を分けて把握することが重要です。
ステップ3で試算した「効果」を「利益(金額)」に換算します。
具体例:
ステップ3の「工数削減」という効果が、「年間246万円の利益」という、経営判断に使える数値に変わりました。
最後に、ステップ4で算出したコストとステップ5で算出した利益の数字を使い、「ROI(費用対効果)」を算出します。
今回の事例の場合、ROIが47.3%ということになります。
ROIがプラスであり、かつ自社の目標利益率や資本コストを上回っていれば、経営判断として「投資を実行すべき」と判断しやすくなるでしょう。

主に3つの理由があります。
この記事で解説した6つのステップを踏むことで、これら3つの課題は解決できます。
DXの効果が表れるまでの期間は、投資規模や取り組み内容によって変わります。
RPAの活用やSaaSツールの導入による工数削減など、比較的シンプルな改善であれば、3ヶ月〜半年ほどで成果を確認しやすい傾向があります。
一方、データ分析を基盤にした新サービス開発や、事業全体の仕組みの見直しは、成果が出るまでに1年〜3年かかることが多いです。
短期で成果が見込みやすい施策と、中長期で成長に寄与する施策の両方を同時に進めることが、DXを成功させるうえで重要です。
「定量化(数値化)」する工夫が重要です。
例えば「従業員満足度」であれば、DX導入前後に匿名のアンケートを実施し、「業務のしやすさ(5段階評価)」や「会社への満足度(点数)」を比較します。
また、「離職率」や「有給休暇取得率」の変化を測定するのも有効です。
満足度が上がれば離職率が下がり、結果的に「採用・教育コストの削減」という定量的な利益としてROI計算に組み込めます。
例えば、DX導入で離職率が5%改善し、年間の退職者が2名減少したと仮定しましょう。
仮に1名あたりの採用・教育コスト(求人広告費、研修費、OJT担当者の工数など)が100万円かかっていた場合、『年間200万円の利益(コスト削減)』としてROI計算に組み込めるようになります。
はい、エクセルで十分可能です。ROIの計算式自体は「(利益÷投資額)×100」とシンプルです。
重要なのは計算式よりも、「利益」や「投資額」の根拠となる数値をどれだけ正確に洗い出せるかにかかっています。
まずはこの記事の「測定ステップ」に沿って、「コスト計算(初期・運用・人件費)」と「利益計算(工数削減×時給など)」の項目を一覧にしてみてください。
はい、最低でも「投資回収期間(Payback Period)」はセットで見るべきです。
投資回収期間は「投資した資金を何年で回収できるか」を示す指標で、キャッシュフローを重視する中小企業にとってROI以上に重要な場合もあります。
さらに厳密に評価するなら、将来のキャッシュフローの価値を現在の価値に割り引いて計算するNPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)も有効な指標です。
しかし、まずは「ROI(何%儲かるか)」と「回収期間(何年で元が取れるか)」の2つを確実に押さえることから始めましょう。
この記事では、中小企業の経営者がDX投資で迷わないための基準として、費用対効果(ROI)の測り方、投資コストの考え方を解説しました。
DX推進で失敗する企業の多くは、導入前に「数字での評価軸」を持てていないことが共通点です。
まずは、自社で最も非効率だと感じる業務を一つ選び、この記事で紹介した費用対効果の測定6ステップを当てはめてみてください。
工数・コスト・効果を可視化するだけで、DX投資の判断精度は大きく向上するでしょう。
とはいえ、自社だけで費用対効果を設計しようとすると、「どこまでをコストに含めるべきか」「定性効果をどう数値化するか」で悩むケースが少なくありません。第三者の視点を入れたい場合は、DX投資のROI設計や効果測定の整理をサポートすることも可能です。必要に応じて、お気軽にお問い合わせください。
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