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国内外の市場調査や市場参入コンサルティング等を手掛ける、「AXIA Marketing株式会社」のコラム記事、「【2025年最新】人気のコンサルティング会社まとめ 」に当社をご紹介いただきました。
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現役コンサルタントが業務、ITに役立つ情報を発信中
『DXが進まない…』と悩む中小企業の経営者は少なくありません。
変化の激しい市場環境では、DXの遅れはそのまま「競争力の喪失」につながります。
社内からも「頭では分かっているが、現場が動かない」「何から手をつければいいか分からず、後回しになっている」といった声が多く聞かれます。
中小企業のDX推進の鍵となるのが、中小企業基盤整備機構が2024年に発表した調査レポートで明らかになった「DXがうまく進まない中小企業に共通する課題」です。
この記事では、なぜDXが現場で止まってしまうのかを構造的に整理し、中小企業でも実行できる具体策を解説します。
DX推進が「進まない状態」から「少しずつでも前に進む状態」へと変わるための道筋をまとめました。
記事監修者

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が2024年12月に公表した「中小企業のDX推進に関する調査」によると、DXに取り組む上での課題として、人材不足や予算の問題が上位を占めていることが明らかになりました。
日本の中小企業でDXが進まない主な理由は、以下の5つです。
どれか一つだけが原因ではなく、5つが複合的に絡み合うことでDXの取り組みが前に進まなくなってしまいます。
DXが進まない最大の要因は、システム導入や運用を現場レベルで担う「IT人材」の不足です。
中小機構の調査でも、DXに取り組むに当たっての課題として最も多くの企業が挙げたのが「ITに関わる人材が足りない(25.4%)」でした。
社内に専任の情報システム担当者がおらず、総務や経理の担当者が兼任しているケースも少なくありません。
社内に担当者がいないため新しいツールを導入しようとしても、セキュリティ設定やデータ移行といった技術的なハードルを越えられず、検討段階で頓挫してしまうのです。
また、知識がないまま外部のシステム会社(ベンダー)に丸投げしてしまい、自社の規模に合わない高額なシステムを契約してしまう失敗ケースも後を絶ちません。
「分からないから任せる」という姿勢が、結果としてDXを複雑化させているのです。
技術的なスキルを持つIT人材に次いで深刻なのが、プロジェクト全体を牽引する「DX推進人材」の不足です。
中小機構の調査では、24.8%の企業が「DX推進に関わる人材が足りない」ことを課題として挙げており、IT人材不足とほぼ同水準の深刻さとなっています。
DX推進人材は単にツールに詳しいだけでなく、自社の業務フローを深く理解し、現場を説得して抵抗感を和らげるリーダーシップが必要です。
しかし、従来の日本企業では、変革を断行できるタイプの人材が育ちにくい傾向があります。
社長が号令をかけても、現場レベルでプロジェクトを回せる「翻訳者」が不在なため、DX推進の計画が頓挫してしまうのです。
中小企業にとって、即座に売上に直結しないDX投資への予算確保は、経営判断として高いハードルとなります。
調査結果でも「予算の確保が難しい」との回答が24.5%に上り、人材不足と並んでトップ3の課題となっています。
特に老朽化した基幹システムの刷新は高額な投資を伴いますが、現状のアナログ業務でも「なんとか回っている」ため、経営層の意思決定が先送りにされがちです。
投資に踏み切れない状況が続くことで「とりあえず無料ツールで」といった部分的な対応に終始し、全社レベルの変革には結びつきません。
特に中小企業では、目先の資金繰りや固定費の捻出が優先されやすく、中長期視点での投資判断が後回しになりがちです。
経営層や現場がDXに消極的になる大きな心理的要因のひとつは「苦労して導入しても、本当に効果があるのか?」という疑念です。
実際に、DXに取り組む予定がない企業に理由を尋ねたところ「具体的な効果や成果が見えない(23.9%)」が上位の理由として挙げられています。
特に導入初期は、これまでの紙業務と新しいシステム入力の「二重管理」が発生しやすく、一時的に業務量が増える傾向にあります。
導入時期に効果が見えず「前のやり方のほうが早かった」と現場が回帰してしまうのです。
デジタル化の恩恵は、事前に数値で正確に予測することが困難です。
「投資対効果(ROI)」を厳しく問われる中で、担当者が明確な答えを出せず、企画が却下されるという悪循環が多くの企業で起きています。
DX投資における費用対効果の考え方については、「DX化の費用対効果」を解説した記事で詳しく整理しています。合わせてご確認ください。
関連記事:DXの費用対効果は「測れない」は嘘?ROI計算方法と効果測定の6ステップ
ツールや予算が揃っていても失敗する根本的な原因は、変化を拒む「企業文化・風土」にあります。
中小機構の調査の課題ランキングにも「DXに取り組もうとする企業文化・風土がない」という項目が挙げられました。
長年、アナログでの調整で業務を回してきた現場には「今のやり方が一番早い」という強力な現状維持バイアスが働いています。
従来のやり方に囚われる背景には、失敗を許容しない減点主義の評価制度や過去の成功体験への執着があるのが実情です。
現場の理解を得ないままツールだけを導入すると、「また上から押し付けられた」と反発を招き、結果としてツールが定着しないまま形骸化してしまうリスクが高まります。
心理的障壁を取り除かない限り、どんな高機能なツールも定着しません。
弊社に寄せられる相談でも「ツールは入れたが、結局使われなくなった」というケースは多く、原因を掘り下げると、ほとんどが技術ではなく「組織の空気」の問題に行き着きます。

「うちは中小企業だし、アナログでも十分回っている」「ITなんて導入しても、現場が混乱するだけだ」
現場から上がってくる声には、的を射ている部分もあります。目先の業務効率に限って言えば、慣れ親しんだ紙と電話のアナログな手法が最も効率的かもしれません。
しかし、短期的な視点ではなく数年単位で業務効率化を考えると「DXは必要ない」という判断は、企業の存続に直結する重大な判断ミスになります。
DXが進まないことによる3つのリスクを「市場からの退場」「人手不足倒産」「若手人材に選ばれない職場」という観点から整理します。
「今のやり方でも何とか回っている」という感覚こそが、実は気づきにくいリスクであり、少しずつ衰退に向かう入り口になってしまうのです。
競合他社はデジタル活用によって見積もりの回答スピードを半減させ、在庫状況をリアルタイムで顧客に共有できる体制を整えています。
一方、アナログな業務体制の企業では、電話やFAXでの確認業務に多くの時間を割かざるを得ない状況です。
顧客の立場になれば「対応が早い」「手続きがスマホで完結する」企業を選ぶのは当たり前です。
品質や価格に大差がなければ、利便性の高い方へ顧客は流れていくでしょう。
気づかないうちに失注が増え、長年の取引先からも「あそこは対応が遅い」と敬遠され始める可能性があります。
ビジネスのルールがデジタル前提に書き換わっている現代において、アナログへの固執は「現状維持」ではなく「退化」を意味します。
市場から退場を宣告される前に、変化に適応する体質へと転換しなければなりません。
少子高齢化が進む日本において、人手を確保できないことによる「人手不足倒産」が過去最多ペースで増加しています。
実際に帝国データバンクの調査によると、2024年には人手不足倒産が342件に上り、前年比で1.3倍となりました。さらに、2025年度上半期だけでも214件と、上半期として過去最多を記録しています。
これまで人力で回してきた事務作業や在庫管理、配送手配も人手そのものが足りなくなり、従来のやり方では立ち行かなくなる場面が増えていくでしょう。
人手不足が深刻化する状況でDXが果たす役割は、単なる「業務効率化」ではありません。限られた人員でも事業を継続できるようにする「省人化」こそが本質です。
RPAで定型業務を自動化したり、AIチャットボットで問い合わせ対応を省力化したりすることは、単に業務を楽にするためではありません。
人手が不足しても業務が止まらない体制を作るための備えといえます。
若手人材にとって、企業のデジタル環境は、給与や福利厚生と並ぶ重要な選定基準になっています。
スマートフォンやSNS、クラウドツールが当たり前の環境で育った「デジタルネイティブ世代」にとって、アナログな職場環境は想像以上のストレスです。特に手書き書類や電話・FAX中心の業務は負担が大きくなります。
実際に株式会社カミナシが行った調査によると、企業がデジタル化・DXをほとんど進めていない職場では、若手の入社・転職意向が約9割下がるという結果も出ています。
「この会社は時代遅れだ」「ここで働いても市場価値のあるスキルが身につかない」と判断されれば、優秀な若手から敬遠されてしまうでしょう。
面接の逆質問で「リモートワーク環境はありますか?」「どのようなITツールを使っていますか?」と聞かれるケースも増えているようです。
DXへの取り組みは、顧客サービスの向上だけでなく、未来を担う人材に選ばれるための「採用ブランディング」にもなりうるのです。
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リソースに限りのある中小企業が確実に成果を出すためには、身の丈に合った正しい順序で進めていく必要があります。
失敗リスクを最小限に抑えつつ、着実に変革を実現するためのステップは以下の5つです。
それぞれ詳しく解説します。
DXはツール選定から始めるものではありません。
必要なのは、経営層が「なぜDXに取り組むのか」「自社はどこを目指すのか」を明確にし、自分の言葉で社内に発信することです。
目的が曖昧なままでは、現場はDXを「よく分からない追加業務」と捉えてしまいます。
「危機感」と「DXで実現したい未来」をセットで語り、社員にとってのメリットまで具体化することが重要です。
さらに経営層自らがデジタルに触れ、学ぶ姿勢を見せることで、DXは組織全体に浸透していきます。DXの出発点はツールではなく、経営者の意志と行動です。
ビジョンが固まったら、次は業務の棚卸しと課題の見える化です。
どの業務に時間がかかっているのか、どこが属人化・非効率になっているのかを整理し、無駄な業務は、デジタル化する前に「やめる・減らす」といった削減・見直しを行います。
すべてを一気に変えるのではなく「現場の負担が大きく」「効果が見えやすく」「導入しやすい業務」から小さく始めることが重要です。
たとえば勤怠管理や経費精算、簡単なデータ集計などを対象にし「残業が減った」「作業が楽になった」という成功体験を作ることで、DXは社内に広がるでしょう。
中小企業のDX事例を分析すると、成功している企業ほど「完璧な計画」ではなく「小さな一歩の積み重ね」を重視している傾向があります。
DXはツールではなく「人」で決まります。
どれだけ優れたシステムを導入しても、使いこなす人材が育っていなければ成果は出ません。
社内では、デジタルリテラシー向上の研修やノーコードツールの実践教育を通じて、業務とITをつなぐ人材を育成していくことが重要です。
「IT人材がいないから」と外部に丸投げするのは失敗のもとになります。
DXの主導権はあくまで自社が持ち、外部のパートナーにはあくまで伴走してもらう形が理想です。
外部パートナーには運用ノウハウが社内に残るよう依頼し、最終的には自走できる体制づくりを目指しましょう。
「予算がない」からといって、DXを諦める必要はありません。
国や自治体は中小企業のDXを後押しする補助金・助成金を多数用意しており、これらを活用すれば初期投資の負担を大きく軽減できます。
申請には手間がかかりますが、支援機関や専門家の力を借りることで現実的に進められるでしょう。
また、申請に必要な事業計画書の作成は、自社のビジネスモデルや投資対効果を見直す良い機会にもなります。
資金不足を理由に止まるのではなく、使える制度を活用し、DXへの一歩を踏み出しましょう。
DXはツールを導入した瞬間に終わるのではなく、導入してからが本番です。
新しいシステムを入れると、慣れない操作によって一時的に生産性が落ちる「Jカーブ」と呼ばれる現象が起きるケースが少なくありません。
Jカーブの局面で「業務が遅いじゃないか」と諦めるのではなく、「最初の半年」を定着期間と捉え、継続的なフォローを行いましょう。
具体的には、マニュアル整備や現場向けの勉強会、定期的なヒアリングと改善の繰り返しなど、使われ続ける環境を整えることが欠かせません。
DXはツール導入ではなく、業務のやり方と社内文化を変える取り組みです。社員が当たり前にデジタルを使い、改善が日常になる状態こそがゴールです。
定着指標の一例としては「ツール利用率80%以上」「対象業務のデジタル化率70%以上」などをKPIに設定するケースもあります。
導入直後にフォローが途切れると、DXは定着せずに形骸化しやすくなります。DXは一度きりではなく「使いながら育てていくもの」と考えましょう。

5つの要因が複合的に絡み合うことで、「必要性は感じているのに、前に進めない」という状態に陥っている企業が少なくありません。
最近では月額数百円〜数千円で利用できるSaaSや、プログラミング不要で使えるノーコードツールが数多く提供されています。
例えば、勤怠管理、経費精算、顧客管理、社内情報共有などは低コストのクラウドツールでも十分に改善可能です。
まずは身近な業務のデジタル化から着手し、そこで削減できた時間やコストを次の投資に回すことで、無理のない形でDXを段階的に進められます。
DX人材が社内にいない場合は、まず外部の専門家(副業人材・DXコンサルタントなど)の力を借りてプロジェクトを立ち上げることが有効です。
同時に社内からITへの関心や改善意欲の高い若手社員をアサインし、外部人材とペアで動かすことで、OJT形式で育成できます。
重要なのは、外部に「丸投げ」するのではなく、知見を社内に残す形で進めることです。
外部人材とペアで動かす体制をとることで、短期的な推進力と中長期的な人材育成の両立が可能になります。
DXに対する反対は、理屈よりも「不安」や「面倒」という感情が原因で起こる場合が多いです。
まずは一部の部署で小さく試験導入し、「残業が減った」「作業が楽になった」といった具体的な効果を体験してもらうことが最も効果的でしょう。
次に、現場で影響力を持つキーマン(古参社員・リーダー格など)をプロジェクト初期から巻き込み、意見を反映しながら進めることで、「自分たちの仕組みだ」という当事者意識が生まれます。
成功体験とキーマンの協力が揃えば、反対は自然と減り、全社展開がスムーズになります。
建設業なら図面や工程管理のデジタル化、農業ならセンサーを使った水やり・温度管理など、アナログ要素が多い業界ほど「ムダな作業」や「手間のかかっている業務」が残りやすく、改善の余地が大きい傾向があります。
DXの目的は、日々の業務をもっと楽にすることです。
まずは「時間がかかっている作業」「面倒だと感じている作業」から見直すことで、自社なりのDXはどんな業界でも必ず見つかります。
経済産業省の「DXレポート」では、老朽化したシステムの放置により、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告しています。
多くの企業では、古く複雑化した基幹システムがブラックボックス化し、維持費の増大や新技術への対応遅れを招いているのが現状です。
放置すると、DXが進まず、国際競争力の低下につながると指摘されています。
「2025年の崖」はIT部門だけの問題ではなく、経営課題です。早めにシステムと業務の見直しに着手することが重要です。
この記事では、中小機構の2024年のデータに基づき、DXが進まない構造的な理由とその対策について解説しました。
重要なポイントは以下の3点です。
「うちには無理だ」と諦める前に、まずは目の前の小さな業務課題をデジタルで解決することから始めてみてください。
小さな一歩が、やがて会社全体を救う大きな変革へと繋がっていきます。社内の業務を一度洗い出し、「一番ムダな作業は何か」を見極めるところから着手してみるのがおすすめです。
「自社のどの業務から着手すべきか分からない」「現場の説得に自信がない」とお悩みの場合は、専門家の視点を取り入れるという選択肢もあります。
まずは無料相談で、貴社の現状における「DXのボトルネック」を診断することから始めましょう。
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「DXの費用対効果の測り方が分からない…」
「数値での評価方法が分からず、DX推進をためらってしまう…」
DX推進のための投資は決して安価ではないため、目に見える効果が出るのか不安になり、意思決定を先送りにしてしまう経営者も少なくありません。
この記事では、DX投資の費用対効果を数値で評価するための6つのステップを解説します。
紹介するステップに沿って整理すれば、DX推進の費用対効果を明確に測定できるようになります。
費用対効果を明確に測定できれば、DX推進に投資すべきかどうかを自信を持って判断できるようになるでしょう。
記事監修者

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

ここでは、DX投資の「モノサシ」となる基本的な費用対効果の測定方法を整理します。加えて、判断基準となる目安の数値を専門家の視点から解説します。
費用対効果を測る最も代表的な指標が「ROI(Return On Investment:投資利益率)」です。
ROIとは、投じた費用に対してどれだけの利益を生み出したかをパーセンテージで示す指標です。
従来のIT投資(例:サーバーの入れ替え)は、「コスト削減」が主な目的でした。
一方、DX投資は業務効率化だけでなく、「ビジネスモデルの再構築」「新たな顧客価値の創出」といった収益機会を生み出す点が大きな特徴です。
中小企業庁「2024年版中小企業白書」では、DXに取り組む企業がまず期待する効果として「業務効率化(44.5%)」「人件費等の削減(30.3%)」「業務プロセスの改善(30.0%)」といった効率化が上位を占めています。
一方で、売上向上の効果が出ている企業は「既存製品・サービスの価値向上」や「新製品・サービスの創出」など、高付加価値の取り組みにも成果を感じている点が特徴です。
多くの企業はDXをコスト削減のための投資と認識しがちですが、成熟度の高い企業ほど新たな収益源を生み出す投資としてDXを活用していることが分かります。
ROIの計算式は非常にシンプルです。経営者であれば、ROIの計算式は必ず押さえておくべきでしょう。
例えば、800万円を投資して新たな在庫管理システムを導入したとします。
この場合のROIは「(500万円÷800万円)×100=62.5%」です。
DXでは、ROIのみを評価基準とするのではなく、複数の施策を比較して最適な投資先を選定する視点が求められます。
利益率・回収期間・業務改善幅を比較し、「限られた資金をどこに配分すべきか」を明確にすることで、経営判断の質を高められます。
費用対効果を計算する際、効果を「定量(数値化できるもの)」と「定性(数値化しにくいもの)」に分けて考えてください。
| 種類 | 内容の例 | ROIへの算入方法 |
|---|---|---|
| 定量効果 | 工数削減、作業時間短縮、ミス削減、運用コスト削減 | 時給 × 削減時間、削減コストの年間換算 |
| 定性効果 | 満足度向上、離職率改善、ブランド価値向上、顧客体験向上 | 離職コスト削減、LTV改善、CPA改善などに換算 |
中小企業白書でも、DXに取り組む企業の多くがまず「業務効率化」や「コスト削減」といった定量効果を期待していると示されています。
一方で、DXの取組段階が進んだ企業ほど「既存製品・サービスの価値向上」や「新製品・サービスの創出」といった定性的な効果にも注目していると分析されています。
投資判断では、短期のコスト削減だけを重視するのは危険です。定性効果をどこまで数値に落とし込めるかが、DX投資の成否を大きく左右します。
定量効果とは、コスト削減や業務効率化などの数値化しやすい効果のことです。
具体例は以下のとおり。
特に人手不足が続く中小企業では、工数削減によって「増員せずに業務量を維持・拡大できる状態」をつくれる点も、大きな投資対効果と言えます。
定性効果は「数値化が難しい」と言われますが、実務ではほぼすべて数値化できます。
具体例は以下のとおり。
定性効果を数値に落とし込めないまま判断してしまうと、DX投資の本来の価値を見落としてしまいます。
また、DXは業務標準化を進める効果もあります。
担当者によって作業品質が異なる属人化を抑制し、業務のばらつきをなくすことで、長期的な生産性の安定につながるでしょう。
ROIとセットで確認すべきなのが、「投資回収期間(Payback Period)」です。投資回収期間とは、投資した費用を、何年で回収できるかを示す指標です。
「投資額÷年間のキャッシュフロー(利益額)」で計算できます。
ROIと同じ例(投資額800万円、年間の利益額500万円)で投資回収期間を計算してみましょう。
投資回収期間:800万円÷500万円=1.6年
つまり、このシステム投資は約1年半で元が取れる、という計算になります。
中小企業の経営判断では、投資によって得られる利益を示すROIの把握が欠かせません。
同時に投資額の回収年数を示す回収期間も確認することで、キャッシュフロー負荷を適切に評価できます。
「結局、ROIは何%なら投資すべきなのか?」という質問は、私たちがコンサルティング現場で最も多く受ける質問の一つです。
結論から言えば「すべての企業に共通する絶対的な合格ライン」は存在しません。しかし、判断の目安はあります。
IT投資のROIに関して、KPI Depotは「20%を超えると強いパフォーマンス」と示しています。
KPI Depotの基準から見ると、3〜5年で投資回収できるROI20〜33%は実務上の妥当なラインと言えるでしょう。
なお、ガートナーの2024年調査では「ビジネス目標を達成した、あるいは上回った」と評価されたデジタル施策は48%にとどまったと報告されています。
成果を十分に出せるプロジェクトは半数弱であるため、事前にROIや投資回収期間を数値で設計し、「どの施策に資金とリソースを集中させるか」を見極める視点が不可欠です。
DX投資は業務効率化だけでなく、在庫最適化や工程管理の改善によって、投資対効果(ROI)を大きく引き上げています。ここでは、3つの事例を紹介します。
某カード会社に対し、UiPathを活用した業務自動化(RPA導入)支援を行いました。
従来、内部システムの手動操作や判断業務に多くの工数を割いており、属人化や業務負荷の増大が課題でした。
本支援では単なる自動化にとどまらず、データ分析に基づく業務統合までを包括的に推進しました。
「RPA導入の枠組み(自動化→横展開→処理データの可視化・蓄積(データマート構築)→業務統合)」を推進した結果、以下の効果が得られています。
弊社では、本事例のように成果につながる業務整理から着手する導入支援を行っております。
貴社業務における自動化・効率化の可能性について、まずはお気軽にご相談ください。
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金属加工機器メーカーの日酸TANAKA株式会社では、棚卸作業が年2回必要でした。
棚卸作業の際、生産ラインを停止しながら「2日×複数名」で棚卸を実施しており、年間約500万円の機会損失が発生していました。
在庫管理を自動化するスマート棚卸システムを導入した結果、以下の効果が得られたようです。
投資額は非公開ですが、投資額を仮に600万円と仮定すると、ROIは56.6%、投資回収期間は1.7年となります。
引用元:SmartMatCloud
全国のワークマン店舗では、1店舗あたり約10万SKUの商品を店長が毎日手入力で発注しており、1日30分の作業が常態化していました。
AIによる自動発注システムを導入したことで、以下の定量・定性効果が生まれています。
投資額は公開されていませんが、同規模のAI発注システムを想定して投資額を5,000万円と仮定します。
作業時間削減や在庫最適化による年間便益を3,000万円とすると、ROIは60%となり、投資回収期間は約1.7年です。
引用元:IT Leaders

ROI(費用対効果)を計算するうえで、まず費用を正確に把握してください。費用の見積もりを誤ると、ROIの計算がすべて崩れてしまいます。
「DX」と総称しても、目的や進行段階によってコスト規模は大きく異なる状況です。
ここでは、経営者として押さえておくべき「費用の相場観」と「具体的な内訳」を解説します。
DXの成熟度は、経済産業省やIPAの資料でも示されているように、一般的に次の3段階に整理できます。
紙の書類をPDF化したり、Excelによる管理をSaaSツールに置き換えたりするなど、アナログ業務をデジタルに置き換える段階です。
導入にかかるコストは数十万円〜数百万円ほどで、例えば勤怠管理ツールやWeb会議システムの導入がこのフェーズに含まれます。
特定の業務プロセス全体をデジタルで完結させ、効率化を図る段階を指します。
特に受発注や請求処理など、複数部門が関わるワークフローはデジタル化の効果が大きい領域です。
どの工程を自動化し、どの工程を人が判断するのかを整理することで、改善効果を最大化できます。
例えば、受発注から在庫管理、請求までを一気通貫でデジタル化するイメージです。
導入コストは数百万円〜数千万円ほどで、SFA/CRMの導入や、基幹システム(ERP)の刷新がこのフェーズに該当します。
デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルやサービスを生み出し、事業そのものを変革します。
例えば、データ分析を基にした新サービスの開発や、IoTを活用した製品のサブスクリプション化などに当たる内容です。
導入コストは数千万円〜数億円以上となり、極めて大きな投資規模となる段階です。
多くの中小企業が「DX」と認識している内容の多くは、第1段階と第2段階に該当します。
まずは自社の取り組みがどの段階なのかを把握することが重要です。
ITベンダーの見積もりを精査するためにも、コストの「内訳」を理解しましょう。
DXの費用は、大きく以下の3つに分類されます。
特に「人件費」は、ベンダーの見積書に載らないケースがほとんどです。
しかし、投資対効果を厳密に計算する上では、人件費や人材育成費も含めて「総投資額」として捉える視点が、経営者には不可欠です。
また特定ベンダーの独自仕様に過度に依存すると、ベンダーロックインが発生します。
ベンダーロックインが発生すると、将来的な乗り換えコストや追加開発費が増加し、費用対効果を悪化させる要因になります。

DXの費用対効果は以下のステップで測定できます。
| ステップ | 内容 | 具体的にやること |
|---|---|---|
| 1 | 現状の評価 | 現行工数・作業時間・ミス・人件費・機会損失を棚卸し |
| 2 | 目標設定(To-Be) | 削減したい工数・改善したい業務・KPIを数値で設定 |
| 3 | 効果試算(数量ベース) | 削減できる時間・件数などを“数量”で算定 |
| 4 | コスト計算 | 初期費用・運用費・人件費・育成コストを合算 |
| 5 | 利益計算 | 数量ベースの効果を金額に換算 |
| 6 | ROI・回収期間算出 | ROI%と回収年数を計算して投資判断 |
この手順に沿って数字を当てはめるだけで、誰でも論理的な投資判断が可能になるでしょう。
DXの効果を正しく測定するためには、業務の現状を数値で把握する作業が欠かせません。
スタート地点を明確にしなければ、改善幅を判断できず、投資判断も曖昧になるでしょう。
作業時間や担当者の負荷を定量化すれば、業務のどこがボトルネックかを明確にできます。
手入力作業の月間工数や、入力ミスによる手戻り時間を把握すれば、改善後の効果を数値で比較が可能です。
業務負荷と課題を数値で可視化する工程が、DXの投資判断と効果測定の基盤となります。
自社のDXの成熟度を客観的に把握する手段としては、IPAが公表している「DX推進指標」を活用する方法もあります。
自己診断フォーマットに沿って現状をスコアリングしておくと、DX投資の優先度や投資範囲を検討する際の基準として役立つでしょう。
現状を把握したら、次に「目標設定(To-Be)」を行います。
DXで改善したい数値を明確にし、どの水準まで引き上げるかを定義してください。
目標設定では、改善後の状態を具体的かつ測定可能な指標(KPI)に落とし込む作業が重要です。
具体例
「業務効率化」といった曖昧なスローガンではなく、「工数を月72時間削減する」という明確なゴールを設定することが、DX成功の鍵となります。
目標が定まったら、目標を達成することで「どれだけの効果(リターン)が生まれるか」を試算しましょう。
効果を試算する際、改善対象となる業務プロセスを細かく分解し、各工程がどれだけ短縮されるかを把握すると、効果を正確に算出できます。
プロセス単位で可視化することで、改善幅を見誤るリスクが減ります。
効果試算の段階では、まだ金額に換算せず「どれだけの業務が改善されるか」という物理的な効果を明確にしましょう。
次に、ステップ3で算出した効果を得るために必要な「コスト(投資額)」を計算します。
ベンダーから提示された見積書だけで判断せず、人件費や人材育成費もすべて含めて算出します。
具体例:
経営者としては、初年度の「初期投資額」と、2年目以降の「ランニングコスト」を分けて把握することが重要です。
ステップ3で試算した「効果」を「利益(金額)」に換算します。
具体例:
ステップ3の「工数削減」という効果が、「年間246万円の利益」という、経営判断に使える数値に変わりました。
最後に、ステップ4で算出したコストとステップ5で算出した利益の数字を使い、「ROI(費用対効果)」を算出します。
今回の事例の場合、ROIが47.3%ということになります。
ROIがプラスであり、かつ自社の目標利益率や資本コストを上回っていれば、経営判断として「投資を実行すべき」と判断しやすくなるでしょう。

主に3つの理由があります。
この記事で解説した6つのステップを踏むことで、これら3つの課題は解決できます。
DXの効果が表れるまでの期間は、投資規模や取り組み内容によって変わります。
RPAの活用やSaaSツールの導入による工数削減など、比較的シンプルな改善であれば、3ヶ月〜半年ほどで成果を確認しやすい傾向があります。
一方、データ分析を基盤にした新サービス開発や、事業全体の仕組みの見直しは、成果が出るまでに1年〜3年かかることが多いです。
短期で成果が見込みやすい施策と、中長期で成長に寄与する施策の両方を同時に進めることが、DXを成功させるうえで重要です。
「定量化(数値化)」する工夫が重要です。
例えば「従業員満足度」であれば、DX導入前後に匿名のアンケートを実施し、「業務のしやすさ(5段階評価)」や「会社への満足度(点数)」を比較します。
また、「離職率」や「有給休暇取得率」の変化を測定するのも有効です。
満足度が上がれば離職率が下がり、結果的に「採用・教育コストの削減」という定量的な利益としてROI計算に組み込めます。
例えば、DX導入で離職率が5%改善し、年間の退職者が2名減少したと仮定しましょう。
仮に1名あたりの採用・教育コスト(求人広告費、研修費、OJT担当者の工数など)が100万円かかっていた場合、『年間200万円の利益(コスト削減)』としてROI計算に組み込めるようになります。
はい、エクセルで十分可能です。ROIの計算式自体は「(利益÷投資額)×100」とシンプルです。
重要なのは計算式よりも、「利益」や「投資額」の根拠となる数値をどれだけ正確に洗い出せるかにかかっています。
まずはこの記事の「測定ステップ」に沿って、「コスト計算(初期・運用・人件費)」と「利益計算(工数削減×時給など)」の項目を一覧にしてみてください。
はい、最低でも「投資回収期間(Payback Period)」はセットで見るべきです。
投資回収期間は「投資した資金を何年で回収できるか」を示す指標で、キャッシュフローを重視する中小企業にとってROI以上に重要な場合もあります。
さらに厳密に評価するなら、将来のキャッシュフローの価値を現在の価値に割り引いて計算するNPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)も有効な指標です。
しかし、まずは「ROI(何%儲かるか)」と「回収期間(何年で元が取れるか)」の2つを確実に押さえることから始めましょう。
この記事では、中小企業の経営者がDX投資で迷わないための基準として、費用対効果(ROI)の測り方、投資コストの考え方を解説しました。
DX推進で失敗する企業の多くは、導入前に「数字での評価軸」を持てていないことが共通点です。
まずは、自社で最も非効率だと感じる業務を一つ選び、この記事で紹介した費用対効果の測定6ステップを当てはめてみてください。
工数・コスト・効果を可視化するだけで、DX投資の判断精度は大きく向上するでしょう。
とはいえ、自社だけで費用対効果を設計しようとすると、「どこまでをコストに含めるべきか」「定性効果をどう数値化するか」で悩むケースが少なくありません。第三者の視点を入れたい場合は、DX投資のROI設計や効果測定の整理をサポートすることも可能です。必要に応じて、お気軽にお問い合わせください。
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「どれが正しいのか」「どこを信じるべきか」
多くの発注担当者が最初にぶつかる壁です。
しかし、正しい見積もりの見方を知っていれば、もう迷う必要はありません。
見積もりの妥当性判断は、内訳と根拠を確認する「正しい見方」を知るだけで可能です。
この記事では、開発受託のプロが見積もりの内訳項目から、妥当性を判断する5つのチェックポイントを徹底解説します。
最後まで読めば、自信を持って見積もりを精査し、社内稟議を通せるようになるでしょう。
記事監修者

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

システム開発に含まれる主な費用の内訳は以下のとおりです。
主要な6つの内訳項目と、それぞれの費用の目安について、開発受託チームの視点から詳しく解説します。
以下が費用内訳の早見表です。参考にしてください。
| 項目 | 役割 | 目安比率 | よくある落とし穴 | 確認質問(発注側) |
| 要件定義 | 目的・要件の確定 | 6%~10% | すり合わせ不足→手戻り | 「要求・制約・非機能の抜けはありませんか?成果物は要件定義書+業務フロー+データ定義まで含みますか?」 |
| 基本/詳細設計 | 外部/内部設計 | 34% | 画面だけ確定・内部曖昧 | 「API・ERD・例外系まで明文化されていますか?受入観点表は誰が作成し合意しますか?」 |
| 開発(製造) | 実装 | 33% | 人月定義が曖昧 | 「人員×期間×稼働率=合計人月は見積の人月と一致しますか?レビュー基準は?」 |
| テスト | 品質担保 | 33% | ケース不足・短縮 | 「単体/結合/総合/受入の責任分担は?不合格時の再テスト費用は?」 |
| PM(管理) | 進捗/品質/課題管理 | 10%~15% | 「一式」で実態不明 | 「体制表(ロール/稼働率)は?課題・変更管理プロセスは文書化されていますか?」 |
| 保守・運用 | 障害/更新/運用 | 年間5%~15%(開発費比) | 範囲未定義・時間外 | 「SLA(応答/復旧)・時間外料金は?対象外作業は何ですか?」 |
※設計・開発・テストの比率は「開発工程=100%」の内訳です。要件定義・PM・保守運用は別枠の加算であり、合算で100%にする設計ではありません。
要件定義は、システム開発の中でも最も重要な工程の一つです。業務課題の整理、機能設計、データ構造や運用フローの明確化などを行い、プロジェクト全体の方向性を決定します。
多くの開発会社では、要件定義費を開発工程(設計・開発・テストの合計)費用の6%~10%を目安として算出するのが一般的です。
要件定義では専門知識を要するため工数が大きくなりますが、精度の高い要件定義によって、後工程での手戻りや追加費用を防げます。
例えば、開発工程(設計~テスト)の合計が500万円の開発では、30万円から50万円が目安です。
設計費は、開発工程(設計~テスト)における工数の約34%が適正な目安とされ、開発の品質を左右する重要工程です。設計工程では、要件定義書を基にシステムの構造を明確化します。
基本設計で画面レイアウトや操作方法を定め、詳細設計で内部の動作やデータ処理を設計します。作業内容が多岐にわたり、専門知識を持つ技術者の工数が必要になるため、一定の費用が発生するでしょう。
設計費の相場は全体の34%程度です。IPA『ソフトウェア開発分析 データ集 2022』によると、基本設計18.2%、詳細設計17.2%で、設計全体は工数の約35%。費用が全体の3割前後となります。
開発費は開発工程(設計~テスト)における工数の33%が目安で、工数とコストが集中する主要工程です。
開発工程では、設計書を基にエンジニアがプログラミングを行い、機能を実装します。
複数の技術者が長期間関わるため、費用が大きくなります。妥当性を判断する際は、エンジニアのスキルに応じた人月単価が重要です。
人月単価は、エンジニア1人が1か月作業した場合の費用を示す指標です。
一般的なプログラマーで月60万~100万円、システムエンジニアで月80万~120万円が目安とされています。相場範囲に収まっていれば、費用は概ね適正だと言えるでしょう。
テスト費は、開発工程(設計~テスト)における工数の33%を占める妥当な水準であり、品質を保証するうえで欠かせない工程です。
テスト工程では、開発されたシステムが要件定義や設計内容に沿って正しく動作するかを検証します。
バグや不具合を早期に発見することで、リリース後の障害や改修コストを防止できます。品質を維持するためには、十分なテスト工数が必要です。
費用の相場は全体の33%程度です。機能が複雑なシステムほどテスト項目が増えるため、費用も上昇します。
相場より極端に低い見積もりは、検証工程が不足している可能性があり、品質リスクにつながります。
プロジェクト管理費は、開発工程費用(設計~テスト)に対する10%~15%を占める水準であり、進行と品質を安定させるために不可欠な費用です。
プロジェクト管理費には、進捗管理、品質管理、課題管理などを担うプロジェクトマネージャー(PM)の人件費が含まれます。
PMは開発全体を統括し、スケジュール遅延や品質低下を防ぐ役割を担います。適切な管理体制を整えることで、開発の効率を高め、安定した成果を維持できるでしょう。
見積もりを確認する際はPMやPMOの人数、関与時間などが明記されているかを確認すると、費用の妥当性を判断しやすくなります。
保守・運用費は、開発費の年間5%~15%を占める水準であり、システムの安定稼働を維持するために不可欠な費用です。
保守は、障害対応やOS・ミドルウェアの更新対応など、システムの継続利用を支える業務を指します。運用は、データ監視や日常的なオペレーション代行など、運営を安定させる作業を含みます。
リリース後も継続的に作業が発生するため、一定のコストが必要です。
費用の目安は、開発費の年間5%~15%程度になります。例えば、1,000万円で開発したシステムでは年間50万円~150万円が一般的な水準です。
契約時には、対応範囲を明確にし、見積もりの根拠を確認してください。

システム開発の見積もりは、開発会社が用いた算出方法によって金額や精度が変わってきます。
システム開発で主に使われる見積もりの算出方法は以下のとおりです。
プロジェクトの段階や目的に応じて使い分けられるため、それぞれの特徴を知ることが、妥当性判断の第一歩と言えるでしょう。
トップダウン見積は、過去に実施した類似プロジェクトの実績を基に、全体の開発費用を大まかに算出する方法です。初期段階で概算を把握したい場合に適しています。
過去の開発実績を参照することで、要件定義や設計が固まっていない段階でも、予算の目安を迅速に提示できます。社内の稟議や予算計画を立てる際に、早い段階で金額感を把握できることが、発注担当者にとっての大きな利点です。
トップダウン見積はスピード面で優れていますが、精度が低く、参考となる過去データがない場合には適用が難しい方法です。正式な見積もりを行う前の参考情報として活用するようにしましょう。
ボトムアップ見積は、開発に必要な作業を細かく分解し、それぞれの工数と単価を積み上げて全体費用を算出する方法です。現在最も一般的で、精度の高い見積もり手法とされています。
作業内容をWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)によって詳細に洗い出し、工程ごとに必要な時間と単価を掛け合わせて積算します。
作業単位で見積もりを行うため、作業の抜け漏れが少なく、根拠が明確な見積もりを提示できる点が大きな特徴です。
ボトムアップ見積は精度が高い一方で、作業の分解と工数算出に時間がかかるため、要件定義や設計内容が固まった段階での利用が適しています。
詳細見積もりの際には、ボトムアップ見積が採用されているかを確認しましょう。
パラメトリック見積は、過去の開発データや統計情報をもとに、一定の「パラメータ(要因)」を使って費用を算出する方法です。
トップダウン見積よりも客観性が高く、短時間で概算を出したい場合に適している手法です。
開発規模や画面数、機能数、行数、ステップ数といった定量的な要素を基準に、過去プロジェクトの実績データを分析して単価や係数を設定します。
例えば「1画面あたりの平均開発コスト」や「1機能あたりの平均工数」をもとに、全体の費用を推定します。データに基づくため、再現性が高く、見積もりのばらつきを抑えられる点が特徴です。
一方で、正確な過去データや統計モデルが整備されていない場合には、精度が下がるという課題があります。
開発会社が過去のデータを蓄積・分析して見積精度を高めているかも、信頼性を見極めるポイントです。

システム開発の見積もりの妥当性を判断するためにチェックすべきポイントは以下の5つです。
妥当性を判断するチェックポイントを知ることで開発会社の言いなりにならず、対等な立場で交渉を進められるようになるでしょう。
見積もりの妥当性を判断する際は、作業範囲(スコープ)が明確に定義されているかを最初に確認することが重要です。
スコープの定義が不十分な場合、見積金額の根拠を正確に判断できません。
対象業務の範囲があいまいなまま契約すると、契約後に「見積もり対象外の作業」として追加費用を請求されるリスクが高まります。
見積書には、作業の対象となる範囲と、対象外となる範囲を明確に記載してもらう必要があります。
作業範囲を具体的に整理することで、発注内容と金額の妥当性を正しく判断できるでしょう。
スコープの明確化は、見積もりの妥当性を判断するうえで最も基本的かつ重要な確認項目です。
見積もりの妥当性を判断するためには、提示された工数(人月)が適切であるかを確認する必要があります。
工数は見積金額の基盤です。設定が多すぎれば費用が膨らみ、少なすぎれば品質の低下や納期の遅延を招き、最悪の場合はプロジェクトが破綻します。
工程別の費用割合(例:開発費33%)と、見積もり内の工数配分を比較し、偏りの有無を確認することが重要です。
機能単位で工数が多い場合は、根拠資料としてWBS(作業分解構成図)の提示を求め、内容を精査しましょう。
見積もりの妥当性を判断する際は、提示されたエンジニア単価(人月単価)が業界相場と比較して適切かを確認することが重要です。
単価が高すぎればコストの無駄につながり、安すぎればスキルや経験が不足した人材が担当する可能性があり、品質面でのリスクが生じます。
システムエンジニアの相場は月80万円~120万円です。
相場から大きく外れた単価が提示されている場合は、理由や根拠を必ず確認する必要があります。
単価の妥当性を確認することは、コスト構造の透明性を高め、プロジェクト品質を確保するうえで欠かせないポイントです。
見積もりの妥当性を判断する際は、見積書の末尾に記載された前提条件を熟読することが重要です。
前提条件は、条件不成立時に追加費用や納期変更を認める免責事項として機能します。
自社で実施すべき作業や負担範囲を精査し、実行不可能な要件や合意できない制約が含まれていないかを確認します。
前提条件への合意は契約への合意に極めて近い意味を持つため、解釈の相違が生じないように文言レベルで擦り合わせてください。
前提条件の整合確認は、コスト・スケジュール・品質リスクを抑えるための必須チェック項目です。
見積もりの妥当性を判断する際は、リスク(バッファ)が適切に含まれているかを確認してください。システム開発では、予期せぬトラブルや課題が発生することが多く、リスク対応を考慮していない見積もりは危険です。
PMIの資料ではITサービス案件で15~25%を固定率で積む手法が紹介されており、ソフトウェア開発の例として20%を用いるケースも示されています。
バッファがまったくない見積もりは、軽微な仕様変更やトラブルでも即座に追加費用や納期遅延が発生する可能性があります。
一方で、過剰なバッファは不当なコスト増加につながるため、妥当な範囲で設定されているかを見極めることが必要です。
リスクを考慮した適切なバッファの有無を確認することは、見積もり全体の信頼性を判断するうえで欠かせない視点です。

5つのチェックポイント(スコープ、工数、単価、前提条件、リスク)を分析すると、見積もり金額が高額または低額と判断される場合があります。
ただし、金額の大小だけで判断するのは危険です。価格差には必ず要因があり、背景を理解することで、より正しく判断できるでしょう。
以下では、相見積もりで提示された高額見積もりと低額見積もりの要因を整理し、発注判断に必要な視点を解説します。
相見積もりを取った際に、「高すぎる」見積もりが出てくるのには必ず理由があります。
単純に利益を多く乗せている場合もありますが、多くは「高い技術力や品質管理体制の裏付け」か、「発注側の要求が曖昧すぎるための過剰なリスク回避」のどちらかです。
例えば、RFP(提案依頼書)が曖昧だと、開発会社は不測の事態に備えて工数を多めに積まざるを得ません。
一方で、高度なセキュリティ要件や大規模なアクセスに耐えうるシステムなど、高い技術力が求められる場合も金額は上がります。
見積もりが高い理由を突き詰めれば、相手の技術力やプロジェクトへの理解度を見極められます。
発注担当者として最も注意すべきは、「高すぎる」見積もりよりも「安すぎる」見積もりです。
安いのには必ず裏があり、多くは「必要な工程(特にテスト)の大幅な省略」や「スキルや経験の浅い人材の投入」に起因します。
相場より極端に安い場合、最初は安価に受注し、プロジェクトが始まった後で次々と「追加費用」を請求する算段である可能性も否定できません。
また、テストが不十分なまま納品され、リリース後に障害が多発してビジネスが停止するリスクもあります。金額の安さだけで選定することは、プロジェクト失敗への最短ルートだと心得ましょう。

要件が固まっていない段階では、概算見積(トップダウン見積またはパラメトリック見積)を依頼することが可能です。
要件が未確定な段階で提示される見積もりは、精度が低い点に注意してください。正式な金額ではなく概算であることを理解し、要件定義フェーズ完了後に改めて精緻な見積もりを求めるようにしましょう。
初期段階から詳細な見積もりを求めると、開発会社が不確定要素に備えてリスク工数を上乗せする場合があります。
予算感を把握したい場合は、概算見積を活用し、要件定義後に精度の高い見積もりを取得する流れが適切です。
「一式」という表記には注意が必要です。「一式」は作業範囲を明確に定義せず、複数の作業や成果物をまとめて金額を算出している状態を表します。
作業範囲が不明確なまま契約を締結すると、契約後に「見積範囲外の作業」と判断され、追加費用が発生するおそれがあります。
「一式」と記載された項目は、作業内容・成果物・範囲外作業を明文化して提示してもらうことが重要です。
特に「データ移行一式」や「テスト一式」といった項目は、解釈の幅が広く誤解が生じやすいため、契約前に詳細を確認する必要があります。
見積金額が増加する主な要因は、要件変更と前提条件の不一致です。
見積もり時点で想定していなかった仕様変更が発生した場合や、発注側が準備する予定であったデータや作業環境の整備が遅れた場合には、追加工数が発生します。
契約前に、要件変更や追加対応時の費用算定ルールを文書で定義しておくことが重要です。
変更管理の取り決めを明確にしておくことで、金額に関する認識のずれを防ぎ、トラブルの発生を抑えられます。
契約形態は、費用の考え方とリスクの所在に直結します。
請負契約は、成果物の完成を目的とします。開発会社は完成責任を負うため、予期せぬトラブルに備えて一定のリスクを工数に含めるのが一般的です。
要件が明確な場合に適していますが、リスクを工数に乗せる分、見積もり金額は高めになる傾向があります。
準委任契約は、作業時間を提供することを目的とします。開発会社は完成責任を負いません。
リスクは発注者側が負担するため、バッファが乗らない分だけ人月単価が請負より安く見える場合があります。要件が不明確な場合やアジャイル開発では準委任が選ばれやすいです。
開発手法によって見積もりの「出し方」と「性質」が大きく変わってきます。
「ウォーターフォール開発」は、開発開始前にすべての仕様を確定させるため、ボトムアップ(工数積み上げ)で見積もりを算出しやすく、初期段階で総額見積もりを提示しやすい手法といえます。
一方、「アジャイル開発」は仕様の変更を前提に、短期間の開発サイクル(スプリント)を繰り返す手法です。
アジャイル開発では全体像が見えにくい特性上、初期段階での総額見積もりが難しく、スプリント単位での契約や概算見積もりとなるケースが一般的です。
「人月(にんげつ)」とは、1人のエンジニアが1か月間フル稼働した場合の作業量を指します。例えば「3人月」とは、エンジニア3名が1か月間作業する、または1名が3か月間作業する量に相当します。
ただし、実際の稼働率は常に100%ではありません。一般的に80~90%程度を想定し、休暇・打ち合わせ・調整期間(バッファ)も含めて見積もられます。
見積もり金額の妥当性を確認する際には、1人月を何時間で算定しているのか、稼働率を何%で見積もっているのかを必ず確認することが大切です。
前提条件を具体的に把握することで、見積もり内容の信頼性と比較の正確性が高まります。
結論として、3社が最も現実的で効果的な数と言えます。
1社だけでは、その見積もりが妥当かどうかの比較対象がありません。
逆に、5社や6社とあまりに多く取りすぎると、RFPの説明や質疑応答、提案の比較検討にかかる発注者側の工数が膨大になり、現実的ではありません。
3社あれば「高すぎる会社」「安すぎる会社」「平均的な会社」というように、金額の「軸」と「相場観」を把握することが可能です。
大切なのは単なる金額比較ではなく、RFPへの理解度や提案内容の質を比較することです。
見積もり金額の調整は可能ですが、単価を下げる交渉よりも「作業範囲(スコープ)の見直し」のほうが効果的です。
単価を無理に下げると、担当者の稼働時間や品質管理にしわ寄せが生じ、結果的に品質リスクが高まる恐れがあります。
一方で優先度の低い機能を次フェーズに回すスコープ調整や、発注側で対応できる作業を明確にすれば、実質的に見積もりを圧縮できます。
「費用を下げる=品質を落とす」ではなく、要件を整理し、リスクを最小化する交渉が妥当なコスト削減につながるでしょう。
今回は、システム開発見積もりの妥当性を判断する方法を、内訳項目と5つのチェックポイントを通して解説しました。
システム開発の見積もりの妥当性を判断する5つのチェックポイントは以下のとおりです。
見積もりは“金額”ではなく“根拠”で判断することが大切です。内容を一つずつ精査し、開発会社と対等に議論できるようになれば、プロジェクト成功の確率は格段に上がります。
信頼できる開発パートナーをお探しの方は、まずはご相談ください。見積書の比較やRFP作成支援も無料でサポートしています。迷ったときは、第三者の専門家に相談するのが最短です。
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