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社内システムが使いにくい!原因は?改善の進め方と対処法を解説

今の社内システムに対して「動作が遅くてイライラする」「画面が見づらくて入力ミスが頻発する」といった不満を抱えていませんか。

システムに関する知識がない経営者や担当者にとって、何が原因でシステムが使いにくくなっているのかを特定するのは容易ではありません。

しかし、使いにくいシステムを放置すると、業務効率が下がるだけでなく、従業員の士気低下や重要な経営判断の遅れにつながる恐れがあります。

本記事では、社内システムが使いにくくなる根本的な原因と、リスクを回避して「本当に使えるシステム」を構築するための具体的な手順を解説します。

この記事を読めば、自社の課題をどのような視点で解決し、プロジェクトを進めればよいかが明確になるでしょう。

記事監修者

DX開発パートナー

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

なぜ社内システムは「使いにくい」と感じるのか?

多くの企業がDXを推進する中で、導入したシステムが現場に定着せず、かえって混乱を招くケースが後を絶ちません。

高額な費用をかけて導入したのに、現場からは不満ばかり聞こえてくるという悩みを持つ経営者は非常に多いのが実情です。

なぜ、業務を効率化するためのシステムが、逆に現場の負担になってしまうのでしょうか。

システムが使いにくいと感じる背景には、単なる操作性の良し悪しだけではありません。

経営層と現場、そして開発側の三者間における認識の乖離が大きな要因です。

特に中小企業においては、IT担当者が不在であったり、兼務であったりすることが多く、専門的な視点での設計が不十分になりがちです。

ここでは、システムが「使いにくい」と感じられる背景と、その実態について深掘りしていきます。

現場の生産性を著しく低下させる「使いにくさ」の正体

システムが使いにくいと感じる最大の要因は、ユーザーが期待する操作感と実際の挙動との間に生じる「摩擦」にあります。

例えば、一つの注文データを入力するために何度も画面を切り替える必要がある場合、その手間は小さなストレスとして蓄積されます。

このような操作の摩擦は、単なる「慣れ」の問題ではなく、明確な「時間的コスト」として経営に跳ね返ってくるのが現実です。

システム導入による定量的な効果として「工数削減」が期待されますが、使いにくいシステムは逆に工数を増大させます。

具体的には、直感的に操作できないためマニュアルを何度も確認したり、システムの反応速度が遅く待ち時間が発生したりします。

無駄な時間は、本来であれば顧客対応や商品開発といった「利益を生み出す業務」に充てられるべき貴重なリソースです。

使いにくさの正体とは、従業員の思考と時間を奪い、企業の競争力を削ぐ「見えないコスト」そのものであるといえます。

社内システムが使いにくくなる3つの根本原因

システムが使いにくくなるのには、必ず明確な理由が存在します。

理由は、技術的な問題だけでなく、開発プロセスやコミュニケーションのあり方に起因することがほとんどです。

ここでは、社内システムが使いにくくなってしまう3つの根本的な原因について、専門的な観点から解説します。

  • UI/UXデザインの欠如と「開発者目線」の設計
  • 業務フローとシステムの「ミスマッチ」
  • システムの老朽化と継ぎ足しによる「複雑化」

UI/UXデザインの欠如と「開発者目線」の設計

使いにくいシステムの多くは、実際にシステムを利用するユーザーの視点(UX:ユーザー体験)が欠落したまま設計されています。

開発を担うエンジニアは、機能要件を満たすことを最優先に考える傾向があり、使いやすさは二の次になりがちです。

IPAの「組込みソフトウェア開発における品質向上の勧め[ユーザビリティ編]」によれば、多くの組込みエンジニアが機能実装に注力する一方で利用者視点が置き去りになることから、ユーザビリティ低下を招き得るとの指摘があります。

結果、機能としては正しく動作しても、現場の業務フローに合わない「開発者目線」のシステムが出来上がってしまいます。

品質の良いシステムとは、単にバグがないだけでなく、ユーザーにとって使いやすく、将来の拡張性があることも含まれるのです。

デザインの専門家が関与せず、機能実装だけでプロジェクトを進めてしまうと、現場の実状とかけ離れたシステムが生まれる原因となります。

業務フローとシステムの「ミスマッチ」

システム開発において最も重要なのは、何を作るかではなく業務をどう変えたいかという目的を明確にすることです。

しかし、発注側と開発側のコミュニケーションが不足していると、業務の細部に関する認識のズレが生じます。

発注側が「言わなくても分かるだろう」と考えている業務の常識は、外部の開発者には伝わっていないことがほとんどです。

この認識のズレが解消されないまま開発が進むと、完成したシステムが実際の業務フローと噛み合わない事態が発生します。

業務の実態を深く理解しないままシステム化を進めることは、使いにくいシステムを生み出す大きな要因です。

システムの老朽化と継ぎ足しによる「複雑化」

長年にわたって同じシステムを使い続けている場合、老朽化と度重なる改修(継ぎ足し開発)が使いにくさを招くケースがあります。

ビジネスの変化に合わせて機能を追加することは必要ですが、全体の設計を見直さずに機能だけを追加し続けると、システム内部が複雑化します。

いわゆる「スパゲッティコード」の状態になり、動作が重くなったり、一部の修正が他の機能に悪影響を及ぼしたりするようになるのです。

さらに、経済産業省の「DXレポート」によると、このようなシステムはレガシーシステムと呼び、レガシーシステムの本質は自社システムの中身がブラックボックス化されることを指しています。

システムが複雑になりすぎると、新しい技術やUIを取り入れることが難しくなり、結果として現場は古い使い勝手のまま我慢を強いられます。

さらに、特定のベンダーに依存しすぎる「ベンダーロックイン」の状態になると、改修に多額の費用と時間がかかり、改善が困難な悪循環に陥ってしまうのです。

使いにくい社内システムを放置することで生じるリスク

使いにくいシステムを使い続けることは、単なる不便さにとどまらず、企業経営に深刻なリスクをもたらします。

放置することで発生するデメリットを正しく理解し、早期の対策を検討しましょう。

ここでは、使いにくいシステムが引き起こす具体的な2つのリスクについて解説します。

従業員満足度の低下と「シャドーIT」の蔓延

使いにくいシステムは、従業員にとって日々のストレス源となり、仕事へのモチベーション(従業員満足度)を低下させます。

DXの成果として、従業員満足度の向上や離職率の低下といった定性効果も重要な評価指標となります。

システムが使いにくいと、従業員は「会社は現場のことを分かっていない」と感じ、組織への信頼を失うきっかけになりかねません。

さらに深刻なのが、会社が許可していない無料ツールを勝手に使い始める「シャドーIT」の蔓延です。

正規のシステムが使いにくいと、現場は業務を遂行するために、個人のクラウドストレージやチャットツールを使い始めます。

結果、情報漏洩のリスクが飛躍的に高まり、企業の社会的信用を一瞬で失墜させる可能性を秘めているのです。

ヒューマンエラーの増加とデータの信頼性欠如

UIが分かりにくいシステムや、操作手順が複雑なシステムは、入力ミスや操作ミスといったヒューマンエラーを誘発します。

例えば、似たようなボタンが隣接していたり、必須項目の表示が曖昧だったりすると、誤ったデータが登録される確率が高まります。

入力ミスによる手戻りの修正作業には多くの時間がかかり、年間で見ると相当な損失になることも珍しくありません。

また、システム内のデータに誤りが増えると、経営判断に必要なデータの信頼性が失われます。

DXの目的はデータを活用してビジネスを変革しようと、データ自体の精度が低ければ、正しい意思決定を行うことは不可能です。

不正確なデータに基づいた経営は、誤った投資や在庫管理を招き、大きな損失を出すリスクがあります。

失敗しない「使いやすい社内システム」構築の進め方

では、現場が満足し、経営にも貢献する使いやすいシステムを構築するにはどうすればよいのでしょうか。

システム開発を成功させるためには、外部に丸投げするのではなく、発注者が主体的にプロジェクトに関わることが不可欠です。

ここでは、失敗しないための具体的な進め方を3つのステップで解説します。

  • 現場ユーザーを巻き込んだ「要件定義」の徹底
  • デザイン思考を取り入れたUI/UX設計のプロセス
  • 導入後の「利用定着化(デジタルアダプション)」支援

現場ユーザーを巻き込んだ「要件定義」の徹底

使いやすいシステムを作るための第一歩は、実際にシステムを利用する現場ユーザーを巻き込んで要件定義を行うことです。

経営層やシステム担当者だけで仕様を決めてしまうと、現場の実態と乖離したシステムになりがちです。

まずは現場の担当者にヒアリングを行い、現在の業務フローにおける課題やボトルネックを数値で把握します。

具体的には月間の入力工数を何時間削減するといった、具体的な数値目標(KPI)を設定します。

この目標設定の段階で現場の声を取り入れることで、本当に必要な機能と優先順位が明確になるのです。

現場の意見を聞くことは、導入後の「自分たちのシステムだ」という当事者意識(オーナーシップ)の醸成にもつながります。

デザイン思考を取り入れたUI/UX設計のプロセス

要件が固まったら、次はどのように画面や操作に落とし込むかを設計します。

この段階では、プロトタイプ(試作品)を作成して検証する「デザイン思考」のプロセスが重要です。

いきなり完成品を作るのではなく、画面のイメージ図を現場のユーザーに触ってもらい、フィードバックを早期に得るようにします。

ボタンの配置はここで使いやすいかといった確認を繰り返すことで、開発後の大きな手戻りリスクを最小限に抑えられます。

また、単に言われた通りに作るだけでなく、ビジネスの課題を理解して提案してくれる伴走型のパートナーを選定することが大切です。

導入後の「利用定着化(デジタルアダプション)」支援

システムは完成して終わりではなく、現場で使われて初めて価値を生み出します。

新しいシステムに慣れるまでには時間がかかるため、開発段階から導入後の教育やサポート体制を計画に含めておかなければなりません。

導入コストを計算する際は、システム構築費だけでなく、社員研修の人件費といった「隠れコスト」も考慮すべきです。

開発会社との契約においても、リリース後の保守・運用サポートが含まれているかを確認します。

使い方が分からない時にすぐに質問できる体制や、現場の要望に応じて細かな改善を継続できる体制が定着率を左右させるのです。

システムが定着し、業務が標準化されれば、属人化が解消され、長期的な生産性の向上につながります。

よくある質問(FAQ)|社内システムが使いにくいと感じた方々の声に回答

Q1. システムの「使いにくさ」を具体的に数値化する方法はありますか? 

A1. 現場の作業時間を「改善前」と「改善後」で比較し、人件費換算することをお勧めします。 

例えば、特定の入力作業に1名あたり毎日30分かかっている場合、月間(20日)で10時間のコストが発生しています。

従業員100名の企業であれば、月間1,000時間が「使いにくいシステム」によって失われている計算になるのです。

経済産業省のDXレポートによると、レガシーシステムによる経済損失が指摘されており、この時間を人件費に換算することで、改善に向けた合理的な投資判断が可能になります。

Q2. UI(デザイン)を改善するだけで、本当に生産性は上がるのでしょうか? 

A2. はい、劇的に向上する可能性があります。 

使いやすいUIは、ユーザーの「認知負荷(情報を理解するための脳の負担)」を軽減させるのです。

デザインの改善は単なる「見た目の変更」ではなく、業務フローの最適化そのものであると捉えてください。

Q3. 開発会社に「伴走型」で依頼すると、費用がかなり高くなるのではありませんか? 

A3. 短期的には高額に見えますが、長期的な「トータルコスト」は抑えられる傾向があります。 

安価な「言われた通りに作るだけ」の会社に依頼すると、導入後に使い勝手が悪く、大規模な改修が必要になるリスクが高まるでしょう。

最初からビジネス課題を理解するパートナーと組むことで、手戻り(作り直し)のコストを最小限に抑えられ、最終的な費用対効果(ROI)は高くなります。

Q4. 現場から「新しいシステムは覚えるのが面倒」と反対されないか心配です。 

A4. 開発の初期段階から現場のキーマンをプロジェクトに巻き込むことが最も有効な対策です。 

「会社から押し付けられたツール」ではなく「自分たちの意見が反映されたツール」と認識してもらうことが重要です。

要件定義の段階でヒアリングを行い、プロトタイプ(試作品)を触ってもらうプロセスを経ることで、導入時の心理的ハードルを下げ、スムーズな定着(デジタルアダプション)を促せます。

Q5. 既存システムが古すぎて、何から手をつければいいか分かりません。 

A5. まずは、現在のシステムが業務のどの部分で「ボトルネック(障害)」になっているかを可視化しましょう。 

すべての機能を一度に刷新するのはコストもリスクも高いため、最も現場の負担が大きい機能から段階的に改修する手法(マイクロサービス化など)も検討できます。

専門家に現状のシステム診断を依頼し、リスクと優先順位を明確にすることから始めるのが合理的です。

Q6. 中小企業でも、大手のようなデザイン思考を取り入れた開発は可能ですか? 

A6. もちろんです。むしろ意思決定の早い中小企業こそ、相性が良い手法です。 

デザイン思考とは、巨額の予算をかけることではなく「徹底的にユーザー視点に立つ」という姿勢を指します。

短期間で試作と検証を繰り返すアジャイル型の開発スタイルを採用しているパートナーを選べば、限られた予算の中でも「本当に現場が求める使い勝手」を追求できます。

Q7. 開発パートナーを選ぶ際、何を基準に「信頼性」を判断すべきですか? 

A7. 過去の制作実績だけでなく、「自社の業界や業務フローに対する理解度」を重視してください。 

単にIT技術に詳しいだけでなく、経営課題や現場の悩みに寄り添った提案をしてくれるかを確認します。

メリットだけでなく、あえてデメリットやリスクを提示してくれる会社は、誠実で根拠のある提案をしている可能性が高いです。

また、導入後のサポート体制が具体的に示されているかも重要なチェックポイントになります。

Q8. システムを改善した後、その効果をどうやって測定すればよいですか? 

A8. 導入前に設定したKPI(重要業績評価指標)の達成度を確認してください。 

例えば「月間の残業時間の削減数」や「入力ミスによる手戻り件数の減少率」など、具体的な数値で比較します。

また、定性的な効果として社内アンケートによる満足度の変化を測定することも有効です。

まとめ|「使いにくいシステム」から企業のDXを加速させる「使いやすいシステム」へ

本記事では、社内システムが使いにくい原因と改善の進め方について解説しました。

社内システムが使いにくくなる3つの根本原因

  • UI/UXデザインの欠如と「開発者目線」の設計
  • 業務フローとシステムの「ミスマッチ」
  • システムの老朽化と継ぎ足しによる「複雑化」

失敗しない「使いやすい社内システム」構築の進め方

  • 現場ユーザーを巻き込んだ「要件定義」の徹底
  • デザイン思考を取り入れたUI/UX設計のプロセス
  • 導入後の「利用定着化(デジタルアダプション)」支援

システムの課題を放置することは、生産性の低下だけでなく、セキュリティリスクや経営判断の遅れといった深刻な事態を招きます。

自社だけで解決することが難しい場合は、専門家の知見を借り、合理的な根拠を持ってプロジェクトを進める形をお勧めします。

さらに、使いやすい社内システムの外注のリスクや対策について詳しく知りたい方は、こちらの記事を併せてご覧ください。

関連記事:

システム開発を外注に丸投げするのは危険?リスクと対策を徹底解説 – ビュルガーコンサルティング株式会社

まずは現在のシステム利用状況に関する社内アンケートを実施し、現場のリアルな声を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

正しい決断を下すために、メリットとデメリットの両方を提示してくれるプロに相談し、納得のいく改善を進めてください。

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関連コラム

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【徹底比較】アウトソーシングと外注の違い!失敗しない選び方

「業務の一部を外部に任せたいけれど、アウトソーシングと外注の使い分けがわからない」といった悩みを持つ経営者やIT担当者の方は多いのではないでしょうか。

特に、競合に負けないよう迅速にIT化を進めるプレッシャーを感じる中で、高額な大手Slerを信頼しつつも、費用面から手を出しにくいことが多くの企業が抱える共通の課題です。

言葉の定義があいまいなまま外部パートナーを選定すると、予期せぬコスト管理責任のトラブルが発生するリスクが高くなります。

アウトソーシングと外注は、依頼する業務の「範囲」「目的」「期間」において、明確な違いがあるのです。

本記事では、この二つの手法を契約形態や費用、リスクの観点から徹底的に比較します。

本記事を読むことで、貴社が抱える課題に対し、最も合理的で根拠のある外部依頼先を選定するための明確な指針を得られ、自信を持って次のステップに進められるでしょう。

記事監修者

DX開発パートナー

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

アウトソーシングと外注(業務委託)の基本的な違い

アウトソーシングと外注という用語は、日常会話やビジネスの場においてしばしば混同されますが、その意味合いには大きな違いがあります。

この基本的な定義を理解することで、費用対効果が高く、戦略的な相談ができるプロを選べるようになります。

それぞれの定義と、経営戦略上での位置づけを専門的に解説します。

「外注(業務委託)」の定義と一般的なイメージ

外注、または業務委託とは、特定の時期に発生する、明確に定義された単一の業務や作業を外部の専門家や企業に依頼する契約形態を指します。

外注は、「一時的に自社に不足する専門スキルを補う」ことを主な目的として利用されます。

つまり、迅速に専門家の力を活用できるメリットがあります。

例えば、「新しいサービスのロゴやウェブサイトのデザイン作成」や「特定の期間限定イベントで利用するシステムの開発」など、成果物と納期が明確なプロジェクトベースの依頼が典型となるのです。

契約形態としては、成果物の完成を目的とする請負契約や、労働力の提供を目的とする準委任契約が多く採用されます。

外注は、業務の進め方や時間管理は基本的に委託先に任せますが、指揮命令権は発注者から発生しない点に注意が必要です。

「アウトソーシング」の定義と経営戦略上の位置づけ

アウトソーシング(Outsourcing)とは、今まで自社で行ってきた業務プロセス全体を、長期かつ継続的に外部の専門企業へ移管することを指します。

野村総合研究所 (NRI)によれば、「ノンコア業務を切り離し、経営資源をコア業務(本業)へ集中させる」という、より戦略的な経営判断として位置づけられます。

例えば、総務部門の給与計算やIT部門のシステム運用・保守といった、定型的で継続的な業務が対象です。

アウトソーシングの目的は、単に人手不足を解消するだけでなく、外部の専門ノウハウを取り入れることで、業務品質の向上やコストの恒久的な削減を図る点にあります。

契約期間は年単位の長期になることが一般的で、社員の採用・教育コストの削減にも貢献します。

決定的な違い:依頼する業務の範囲と目的

アウトソーシングと外注の最も決定的な違いは、依頼する業務の「範囲」と「目的」にあります。

外注は「タスク単位」での依頼であり、アウトソーシングは「部門・プロセス単位」での依頼だと理解してください。

外注は、「このシステムを作ってください」「このデータを入力してください」といった、具体的な作業を依頼するものです。

一方、アウトソーシングは、「給与計算業務全般をすべてお願いします」「ITインフラの運用すべてを任せたい」といった、業務全体の責任と管理を含めて依頼します。

目的も、外注は専門性の短期的な補完であるのに対し、アウトソーシングは継続的な業務効率化や経営資源の最適化という、より広い戦略的意図を持ちます。

この「丸ごとの依頼」が、アウトソーシングの特徴です。

類似の用語:BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)との関係性

アウトソーシングと非常に近い意味で使われる用語にBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)があります。

BPOはアウトソーシングのより戦略的かつ専門的な形態です。

経済産業省の『DX支援ガイダンス』によると、BPOは、給与計算や経理処理、コールセンター業務など、特定の業務プロセスを外部に委託するだけでなく、そのプロセスの企画・設計・改善までを外部パートナーに委ねる手法です。

BPO事業者は、単に作業を代行するだけでなく、その業務に関するノウハウを豊富に持っており、業務効率化の提案や最新テクノロジーの導入までを一括して行います。

中小企業がバックオフィス業務を依頼する際は、多くの場合、このBPOが選択肢になります。

業務の改善や効率化を目的とする場合は、単なるアウトソーシングではなく、BPOサービスを検討すべきです。

類似の用語:オフショアとの関係性

アウトソーシングや外注が「業務を外部に任せる手段」であるのに対し、「オフショア(Offshore)」は業務を依頼する「場所」を指す言葉です。

オフショアとは、システム開発などの業務を海外の企業に委託することで、人件費の差を利用した大幅なコスト削減を主な目的とする手法です。

ただし、「言葉の壁」や「商習慣の違い」によるコミュニケーションリスクが高まり、品質管理が難しくなるという大きなデメリットも伴います。

一方、ニアショア(Nearshore)は、比較的時差が少ない近隣の海外諸国や国内の地方都市に依頼することで、コストとリスクのバランスを取る手段です。

費用対効果を追求する中小企業は、国内か海外かという場所の選択肢も同時に検討する必要があります。

アウトソーシングと外注、契約形態・期間・範囲から見る実践的な比較

中小企業の経営者やIT担当者が外部パートナーを選ぶ際は、目先の費用だけで判断してはいけません。

契約期間中のリスクや自社に残るノウハウなど、より実践的な視点から両者を比較検討する必要があります。

迅速なIT化のプレッシャーがある中で、自社の課題と開発イメージが一致する費用対効果の高いプロを見つけるためにも、この実践的な比較は不可欠です。

このセクションでは、アウトソーシングと外注を、契約期間、知見の移転、コスト構造など、実務における重要な側面から詳細に比較します。

契約期間と依頼の継続性

アウトソーシングと外注では、契約期間や依頼の継続性において明確な傾向が見られます。

外注は短期間の「点」の契約であり、アウトソーシングは長期間の「線」の契約となるのが一般的です。

外注は、システム開発やデザイン作成といった単発のプロジェクトが多いため、契約期間は数ヶ月から長くても一年程度になります。

このため、プロジェクトごとにパートナーを変えたり、協力者を変更したりするといった柔軟な対応が可能です。

一方、アウトソーシングは、業務プロセスを丸ごと任せるため、安定したサービスの提供が前提となり、契約は数年間にわたることが多くなります。

長期契約のアウトソーシングでは、契約の見直しや解約に関する条項を初期段階で明確にし、将来の変更に対応できる柔軟性を確保することが重要となります。

ノウハウ・知見の移転

外部に業務を依頼する際に、「自社にノウハウが残るかどうか」は、将来的な自立や競争優位性を維持する上で非常に重要な論点です。

外注はノウハウの移転が限定的であり、アウトソーシングはノウハウが外部に蓄積されやすいという傾向があります。

外注は、特定の成果物を受け取るのみで、その作成過程の技術的ノウハウは外注先に残りがちです。

ウェブサイトのコードをすべて自社で理解したり、使いこなしたりすることは難しい場合があります。

一方、アウトソーシングでは、業務プロセス全体を外部に任せるため、業務改善の知見や運用ノウハウが外部パートナー側に蓄積されていくのです。

将来的な内製化も視野に入れるなら、アウトソーシングの契約時に「ノウハウの共有」や「引き継ぎ期間」について具体的に取り決める必要があります。

業務プロセスの改善提案

外部パートナーからの業務プロセスの改善提案を期待できるかどうかは、依頼する手法の定義によって大きく異なります。

結論として、アウトソーシング(特にBPO)は業務改善提案を期待できるのに対し、外注では基本的に提案は期待できません。

外注の目的は特定の作業の完了であるため、依頼された範囲外の業務改善について提案したり、新しいテクノロジーの導入を提案したりすることは通常ありません。

対照的に、アウトソーシングは業務効率化や品質向上を目的としているため、外部の知見を活かした継続的な改善提案がサービスに含まれていることが一般的です。

貴社が戦略的なアドバイスを求めているなら、改善提案が契約に含まれるアウトソーシングを選ぶ必要があります。

管理責任の所在とリスク負担

業務を外部に依頼する際、業務の管理責任やトラブル発生時のリスクがどこにあるのかを明確にすることは非常に重要です。

外注は管理責任が貴社に残るのに対し、アウトソーシングは委託先の責任範囲が広くなるのです。

外注は、依頼した成果物に対して責任を負いますが、その業務全体のプロセス管理は発注者である貴社が引き続き行います。

一方、アウトソーシングは、業務プロセス全体を委託するため、品質管理やセキュリティ管理に関する責任の多くが委託先に移ります。

リスク回避のためには、アウトソーシング契約において、情報漏洩やサービスレベルの未達が発生した場合の損害賠償やペナルティについて、明確に取り決めることが不可欠です。大手であろうと無名な会社であろうと、契約書の内容がすべてです。

導入コストとトータルコストの違い

アウトソーシングと外注は、コスト構造にも大きな違いがあり、トータルコストで評価しなければ正しい判断はできません。

外注は初期費用として一括で支払う形が多く、アウトソーシングは月額の固定費用や従量課金となることが多いです。

外注は単発プロジェクトのため、見積もりが比較的容易で費用対効果を測りやすい傾向があります。

一方、アウトソーシングは月額費用が安価に見えても、契約期間が長いためトータルコストが膨らむ可能性があるのです。

さらに、アウトソーシングは変動費化できるメリットがある一方で、契約終了時の引き継ぎコストや新しいパートナーへの移行コストが発生することもあります。

短期的な予算でなく、数年間の総費用で比較検討すべきです。特に費用を抑えたい中小企業は、このトータルコストの視点を忘れてはなりません。

どちらを選択する?アウトソーシングと外注の失敗しない選択基準は?

アウトソーシングと外注のそれぞれの特徴を理解した上で、貴社が抱える具体的な課題を解決するためにどちらの手法を選ぶべきか、その判断基準を明確することが必要です。

「情報が多くてわからない」「どの提供者も選ぶメリット・デメリットがある」という不安を解消するため、このセクションでは、費用対効果(ROI)とリスクを最小限に抑えながら、合理的で成功に繋がる選択をするための具体的な判断基準を解説します。

「外注」が適しているケース:専門性の高い単発プロジェクト

外注、すなわち業務委託が最も適しているのは、自社にはない高度な専門性が必要とされる単発のプロジェクトです。

「特定のスキルを一時的に補う」ことが目的であれば、外注が最も効率的で低コストな選択となります。

例えば、「新しいサービスのロゴやUI(ユーザーインターフェース)のデザイン作成」や「複雑な機能を持つカスタムシステムの初期開発」といったケースが該当します。

以上の業務は、自社で専門人材を雇用したり、スキルを育成したりするよりも、外部のプロに一時的に依頼する方が、時間と費用のムダを抑える最善策になるのです。

さらに、成果物の完成をもって契約が終了するため、長期的な管理負担もありません。

ただし、単発の外注であっても、自社の課題とイメージを伝えるための準備は不可欠です。

「アウトソーシング」が適しているケース:定型的なノンコア業務

アウトソーシング(BPO含む)が適しているのは、定型的で継続的ながら、自社のコア業務ではないノンコア業務です。

「継続的な業務の効率化と品質維持」が目的であれば、アウトソーシングが最も戦略的な選択となります。

例えば、「毎月の給与計算・社会保険手続き」「ITシステムの保守・監視」「経理伝票の処理」といった、手間はかかるが売上に直結しない業務が該当するのです。

業務を外部に任せることで、経営資源を売上や顧客満足度に直結するコア業務に集中させられます。

外部パートナーの持つ業務改善ノウハウを活用し、人手不足の解消と業務品質の安定化を同時に実現することも可能です。

効果を最大化するための依頼前の準備事項

外部パートナーへ依頼する際に、最大限の効果を引き出し、失敗を避けるためには、依頼前に「何を解決したいのか」という自社の課題とゴール数値(KPI)で明確化することが不可欠です。

外注する場合でも、業務をアウトソーシングする場合でも、「現状の業務フロー」と「自動化や効率化で達成したい具体的な目標値」を文書化してください。

この準備ができていれば、外部パートナーの提案が貴社の課題に一致しているかを合理的に判断できます。

よくある質問(FAQ)|アウトソーシングと外注を見比べている方々の声に回答

Q1. 外注とアウトソーシングを併用することは可能ですか?

A1. はい、可能です。コア業務を外部に委託しない限り、戦略的に併用することで柔軟性とコスト効率を両立できます。

多くの企業は業務の性質に応じて両者を使い分けています。

例えば、「人事・経理といった定型的なバックオフィス業務全体(ノンコア業務)はアウトソーシング」し、「新商品のキャンペーンサイト制作や特定機能のシステム開発(専門的な単発プロジェクト)は外注」するといった使い分けが一般的です。

この併用戦略の鍵は、自社のコア業務を明確に定義し、そこに最も経営資源を集中させることです。

Q2. アウトソーシング契約の「サービスレベル合意書(SLA)」とは、具体的にどのような内容を確認すべきですか?

A2. SLAは、委託先が提供するサービスの具体的な「品質」と「責任範囲」を数値で保証するもので、特に「罰則」の有無を確認すべきです

SLA(Service Level Agreement)は、アウトソーシングの成否を分ける重要な文書です。

確認すべき具体的な内容は、「稼働率(システムのダウンタイム許容範囲)」や「問い合わせへの応答時間」といった品質に関する目標値に加え、その目標値が達成できなかった場合の「ペナルティ(罰則)」が盛り込まれているかどうかが重要になります。

罰則がない場合、委託先がサービスの改善に積極的でなくなるリスクがあります。事前に計測可能な数値として合意することが、アウトソーシングで期待通りの成果を得るための根拠となります。

Q3. オフショア開発を検討する際、コスト削減効果とコミュニケーションリスクのバランスをどう評価すべきですか?

A3. 削減できるコスト(人件費差額)が、コミュニケーションミスによる「手戻りコスト」と「納期遅延リスク」を上回るかを定量的に試算すべきです。

オフショアの最大のメリットはコスト削減ですが、コミュニケーションリスクは必ず発生すると認識すべきです。

失敗を避けるためには、国内の窓口担当者(ブリッジSE)の質を最重要視してください。

さらに、コスト削減額が20%未満であれば、リスクに見合わない可能性が高くなります。

オフショアの評価は、人件費の比較だけでなく、「品質管理体制」「文化的な理解度」「日本語対応の質」といった定性的な要素も合わせて、トータルコストとトータルリスクの観点から判断することが合理的です。

Q4. システム開発の発注の場合、外注先が提案してくる「準委任契約」と「請負契約」は、発注側にとってどのような違いがありますか?

A4. 成果物に対する責任の所在が異なります。リスクを抑えたいシステム開発では「請負契約」を基本とすべきです。

請負契約は「システムを完成させる」という成果物の納品に対して責任が発生するため、発注側は完成品を受け取ることのみに責任を負います。

一方、準委任契約は「エンジニアの労働力や作業時間を提供すること」に対して費用を支払う契約であり、成果物に対する責任は原則として発生しません。

つまり、システムが未完成でも費用を支払うリスクがあります。システム開発では、「完成」という明確なゴールがあるため、発注側のリスクが低い請負契約を優先的に採用することが、賢明な判断と考えられます。

Q5. アウトソーシングによってノウハウが外部に流出することを防ぐには、どのような対策が必要ですか?

A5. 契約書に「秘密保持契約(NDA)」と「知財帰属」を明記するとともに、「業務マニュアルの共同作成」を義務付けるべきです。

ノウハウ流出を防ぐ最も重要な対策は、契約による法的拘束力の確保です。

業務上知り得た情報や顧客データの取り扱いに関するNDA(Non-Disclosure Agreement)は必須です。

加えて、アウトソーシングによって改善された業務プロセス自体を、共同でマニュアル化し、その知的財産権の帰属を自社に残すよう契約で定めてください。

結果、契約終了時もノウハウを失わずにスムーズな引き継ぎが可能となり、将来的な内製化にも対応できるようになります。

Q6. 「外注」を選んだ場合、パートナーからの戦略的な業務改善提案は本当に期待できないのでしょうか?

A6. 一般的には期待はできません。もし提案が欲しいなら、依頼内容を「業務改善コンサルティング+外注」として切り分けて契約すべきです。

外注(請負契約)の範囲は「依頼された特定のシステムを納期内に完成させること」に限定されます。

そのため、外注先に「どうすればもっと業務が効率化するか」といった戦略的な提案を期待することは、契約の範囲外の要求になります。

もし戦略的な知見を求めるなら、契約を「コンサルティングフェーズ(準委任)」と「開発フェーズ(請負)」に分け、コンサルティング費用を別途支払うべきです。

Q7. アウトソーシング契約を途中で解約する場合、トータルコストはどのように変化しますか?

A7. 契約期間が満了していない場合、残存期間の月額費用の一部または全額が「違約金」として発生することが一般的です。

アウトソーシングは長期契約が前提のため、委託先は初期投資として貴社専用の環境構築や人材採用を行っています。

そのため、中途解約は委託先にとって大きな損害となるため、契約書に中途解約時の違約金が定められていることがほとんどです。

トータルコストを評価する際は、「月額費用×契約期間」だけでなく、「解約違約金の条件」と「次の委託先への引き継ぎ費用」も必ず含めて検討してください。

Q8. 大手Slerと中小の開発会社を比較する際に、特に重視すべき判断基準は何ですか?

A8. 大手は「安定性と信用力」、中小は「自社の課題への一致度」と「開発ノウハウの専門性」を重視すべきです。

大手Slerは経営の安定性や豊富な実績に裏打ちされた高い信用力が最大のメリットですが、高額な費用になりがちです。

一方、中小の開発会社は、特定の技術分野や業種に特化していることが多く、自社の課題と開発イメージが一致しているならば、大手よりも費用対効果が高くなる可能性を秘めています。

選定の根拠としては、「過去の類似案件の実績」「提案内容の具体的かつ合理的な根拠」「担当者との戦略的な相談が可能な関係性」を重視し、中小であっても専門性の高いプロを選ぶことが、正しい決断をするための基準となります。

まとめ|アウトソーシングと外注の違い!失敗しない選び方

本記事では、アウトソーシングと外注(業務委託)の基本的な違いから、契約期間、ノウハウの移転、コスト構造に至るまで、実践的な視点から徹底的に比較しました。

アウトソーシングは長期的な業務プロセスの移管による経営資源の最適化を目的とし、外注は単発のプロジェクトにおける専門性の補完を目的とすることが、それぞれの決定的な違いになります。

アウトソーシングと外注の違いのまとめ表

比較項目外注(業務委託)アウトソーシング
定義・単位単一の「タスク・作業」単位業務の「プロセス・部門」単位
主な目的一時的な専門スキル・人手の補完コア業務への集中、恒久的な効率化
契約期間短期・単発(点の契約)長期・継続(線の契約)
管理責任発注者にプロセス管理責任が残る委託先がプロセス全体の責任を負う
業務改善提案基本的に期待できない専門知見による継続的な提案がある
ノウハウの蓄積限定的(成果物のみ受け取る)外部に蓄積されやすい(共有の工夫が必要)
コスト構造プロジェクトごとの一括・スポット費用月額固定・従量課金(トータルでの評価が必要)
典型的な例ロゴデザイン、特定システムの開発など給与計算事務、ITインフラ運用保守など

この記事で得た知識を武器に、ぜひ自信を持って外部パートナーの選定を進め、貴社の競争優位性を確立する一歩を踏み出してください。

DX

DXの費用対効果は「測れない」は嘘?ROI計算方法と効果測定の6ステップ

「DXの費用対効果の測り方が分からない…」

「数値での評価方法が分からず、DX推進をためらってしまう…」

DX推進のための投資は決して安価ではないため、目に見える効果が出るのか不安になり、意思決定を先送りにしてしまう経営者も少なくありません。

この記事では、DX投資の費用対効果を数値で評価するための6つのステップを解説します。

紹介するステップに沿って整理すれば、DX推進の費用対効果を明確に測定できるようになります。

費用対効果を明確に測定できれば、DX推進に投資すべきかどうかを自信を持って判断できるようになるでしょう。

記事監修者

DX開発パートナー

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

DXの費用対効果の測定方法と目安数値

ここでは、DX投資の「モノサシ」となる基本的な費用対効果の測定方法を整理します。加えて、判断基準となる目安の数値を専門家の視点から解説します。

費用対効果(ROI)とは?DX投資における基本概念

費用対効果を測る最も代表的な指標が「ROI(Return On Investment:投資利益率)」です。

ROIとは、投じた費用に対してどれだけの利益を生み出したかをパーセンテージで示す指標です。

従来のIT投資(例:サーバーの入れ替え)は、「コスト削減」が主な目的でした。

一方、DX投資は業務効率化だけでなく、「ビジネスモデルの再構築」「新たな顧客価値の創出」といった収益機会を生み出す点が大きな特徴です。

中小企業庁「2024年版中小企業白書」では、DXに取り組む企業がまず期待する効果として「業務効率化(44.5%)」「人件費等の削減(30.3%)」「業務プロセスの改善(30.0%)」といった効率化が上位を占めています。

一方で、売上向上の効果が出ている企業は「既存製品・サービスの価値向上」や「新製品・サービスの創出」など、高付加価値の取り組みにも成果を感じている点が特徴です。

多くの企業はDXをコスト削減のための投資と認識しがちですが、成熟度の高い企業ほど新たな収益源を生み出す投資としてDXを活用していることが分かります。

ROIの計算式と結果の見方

ROIの計算式は非常にシンプルです。経営者であれば、ROIの計算式は必ず押さえておくべきでしょう。

  • ROI(%)=(利益額÷投資額)×100
  • 利益額=投資によって得られた効果(コスト削減額+売上増加額など)
  • 投資額=DXにかかった総費用(初期費用+運用費用+人件費など)

例えば、800万円を投資して新たな在庫管理システムを導入したとします。

  • 効果:在庫管理の工数削減(年間200万円)、過剰在庫の削減(年間300万円)
  • 利益額:200万円+300万円=500万円
  • 投資額:800万円

この場合のROIは「(500万円÷800万円)×100=62.5%」です。

DXでは、ROIのみを評価基準とするのではなく、複数の施策を比較して最適な投資先を選定する視点が求められます。

利益率・回収期間・業務改善幅を比較し、「限られた資金をどこに配分すべきか」を明確にすることで、経営判断の質を高められます。

DXで得られる定量・定性効果

費用対効果を計算する際、効果を「定量(数値化できるもの)」と「定性(数値化しにくいもの)」に分けて考えてください。

種類内容の例ROIへの算入方法
定量効果工数削減、作業時間短縮、ミス削減、運用コスト削減時給 × 削減時間、削減コストの年間換算
定性効果満足度向上、離職率改善、ブランド価値向上、顧客体験向上離職コスト削減、LTV改善、CPA改善などに換算

中小企業白書でも、DXに取り組む企業の多くがまず「業務効率化」や「コスト削減」といった定量効果を期待していると示されています。

一方で、DXの取組段階が進んだ企業ほど「既存製品・サービスの価値向上」や「新製品・サービスの創出」といった定性的な効果にも注目していると分析されています。

投資判断では、短期のコスト削減だけを重視するのは危険です。定性効果をどこまで数値に落とし込めるかが、DX投資の成否を大きく左右します。

定量効果

定量効果とは、コスト削減や業務効率化などの数値化しやすい効果のことです。

具体例は以下のとおり。

  • 人件費の削減(例:RPA導入で月50時間の作業を自動化→50時間×時給×12ヶ月)
  • 運用コストの削減(例:クラウド移行でサーバー維持費を年間100万円削減)
  • ミスによる損失削減(例:入力ミスによる手戻りコストを年間50万円削減)

特に人手不足が続く中小企業では、工数削減によって「増員せずに業務量を維持・拡大できる状態」をつくれる点も、大きな投資対効果と言えます。

定性効果

定性効果は「数値化が難しい」と言われますが、実務ではほぼすべて数値化できます。

具体例は以下のとおり。

  • 顧客満足度向上 → 解約率低下 → LTV向上
  • 従業員満足度向上 → 離職率低下 → 採用・教育コスト削減(例:1名100万円)
  • ブランド価値向上 → 新規獲得単価(CPA)低下

定性効果を数値に落とし込めないまま判断してしまうと、DX投資の本来の価値を見落としてしまいます。

また、DXは業務標準化を進める効果もあります。

担当者によって作業品質が異なる属人化を抑制し、業務のばらつきをなくすことで、長期的な生産性の安定につながるでしょう。

投資回収期間(Payback Period)の考え方と計算例

ROIとセットで確認すべきなのが、「投資回収期間(Payback Period)」です。投資回収期間とは、投資した費用を、何年で回収できるかを示す指標です。

「投資額÷年間のキャッシュフロー(利益額)」で計算できます。

ROIと同じ例(投資額800万円、年間の利益額500万円)で投資回収期間を計算してみましょう。

投資回収期間:800万円÷500万円=1.6年

つまり、このシステム投資は約1年半で元が取れる、という計算になります。

中小企業の経営判断では、投資によって得られる利益を示すROIの把握が欠かせません。

同時に投資額の回収年数を示す回収期間も確認することで、キャッシュフロー負荷を適切に評価できます。

DX投資は何%なら“合格”なのか?ROIの目安

「結局、ROIは何%なら投資すべきなのか?」という質問は、私たちがコンサルティング現場で最も多く受ける質問の一つです。

結論から言えば「すべての企業に共通する絶対的な合格ライン」は存在しません。しかし、判断の目安はあります。

IT投資のROIに関して、KPI Depot「20%を超えると強いパフォーマンス」と示しています。

KPI Depotの基準から見ると、3〜5年で投資回収できるROI20〜33%は実務上の妥当なラインと言えるでしょう。

なお、ガートナーの2024年調査では「ビジネス目標を達成した、あるいは上回った」と評価されたデジタル施策は48%にとどまったと報告されています。

成果を十分に出せるプロジェクトは半数弱であるため、事前にROIや投資回収期間を数値で設計し、「どの施策に資金とリソースを集中させるか」を見極める視点が不可欠です。

実際の事例:DX投資でROIを高めた企業の例

DX投資は業務効率化だけでなく、在庫最適化や工程管理の改善によって、投資対効果(ROI)を大きく引き上げています。ここでは、3つの事例を紹介します。

弊社実績:カード会社 | 業務自動化によりROI995%を達成

某カード会社に対し、UiPathを活用した業務自動化(RPA導入)支援を行いました。

従来、内部システムの手動操作や判断業務に多くの工数を割いており、属人化や業務負荷の増大が課題でした。

本支援では単なる自動化にとどまらず、データ分析に基づく業務統合までを包括的に推進しました。

「RPA導入の枠組み(自動化→横展開→処理データの可視化・蓄積(データマート構築)→業務統合)」を推進した結果、以下の効果が得られています。

  • 投資対効果:直近ROI 995%を達成し、極めて高い効果を創出(削減工数・人件費ベースで算出)
  • 業務プロセスの最適化:「システム改修・RPA・ハイブリッド」の最適な使い分け基準を確立
  • 運用管理の適正化:効果の低い業務や特殊な「例外業務」を明確に区分し、管理コストを抑制

弊社では、本事例のように成果につながる業務整理から着手する導入支援を行っております。

貴社業務における自動化・効率化の可能性について、まずはお気軽にご相談ください。

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日酸TANAKA株式会社|棚卸工数の75%削減・年間340万円のコスト改善

金属加工機器メーカーの日酸TANAKA株式会社では、棚卸作業が年2回必要でした。

棚卸作業の際、生産ラインを停止しながら「2日×複数名」で棚卸を実施しており、年間約500万円の機会損失が発生していました。

在庫管理を自動化するスマート棚卸システムを導入した結果、以下の効果が得られたようです。

  • 棚卸工数:6人×1.5日へ短縮(約75%削減)
  • 年間コスト削減額:約340万円

投資額は非公開ですが、投資額を仮に600万円と仮定すると、ROIは56.6%、投資回収期間は1.7年となります。

引用元:SmartMatCloud

ワークマン|AI発注により作業時間93%削減・在庫最適化を実現

全国のワークマン店舗では、1店舗あたり約10万SKUの商品を店長が毎日手入力で発注しており、1日30分の作業が常態化していました。

AIによる自動発注システムを導入したことで、以下の定量・定性効果が生まれています。

  • 発注作業:30分 → 2分(93%削減)
  • 欠品率の低下
  • 不良在庫の削減

投資額は公開されていませんが、同規模のAI発注システムを想定して投資額を5,000万円と仮定します。

作業時間削減や在庫最適化による年間便益を3,000万円とすると、ROIは60%となり、投資回収期間は約1.7年です。

引用元:IT Leaders

DX推進段階における費用目安と内訳

ROI(費用対効果)を計算するうえで、まず費用を正確に把握してください。費用の見積もりを誤ると、ROIの計算がすべて崩れてしまいます。

「DX」と総称しても、目的や進行段階によってコスト規模は大きく異なる状況です。

ここでは、経営者として押さえておくべき「費用の相場観」と「具体的な内訳」を解説します。

DX推進における段階別のコスト

DXの成熟度は、経済産業省IPAの資料でも示されているように、一般的に次の3段階に整理できます。

第1段階:デジタイゼーション(部分的な電子化)

紙の書類をPDF化したり、Excelによる管理をSaaSツールに置き換えたりするなど、アナログ業務をデジタルに置き換える段階です。

導入にかかるコストは数十万円〜数百万円ほどで、例えば勤怠管理ツールやWeb会議システムの導入がこのフェーズに含まれます。

第2段階:デジタライゼーション(プロセス全体の最適化)

特定の業務プロセス全体をデジタルで完結させ、効率化を図る段階を指します。

特に受発注や請求処理など、複数部門が関わるワークフローはデジタル化の効果が大きい領域です。

どの工程を自動化し、どの工程を人が判断するのかを整理することで、改善効果を最大化できます。

例えば、受発注から在庫管理、請求までを一気通貫でデジタル化するイメージです。

導入コストは数百万円〜数千万円ほどで、SFA/CRMの導入や、基幹システム(ERP)の刷新がこのフェーズに該当します。

第3段階:デジタルトランスフォーメーション(ビジネス変革)

デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルやサービスを生み出し、事業そのものを変革します。

例えば、データ分析を基にした新サービスの開発や、IoTを活用した製品のサブスクリプション化などに当たる内容です。

導入コストは数千万円〜数億円以上となり、極めて大きな投資規模となる段階です。

多くの中小企業が「DX」と認識している内容の多くは、第1段階と第2段階に該当します。

まずは自社の取り組みがどの段階なのかを把握することが重要です。

DX推進にかかるコストの内訳

ITベンダーの見積もりを精査するためにも、コストの「内訳」を理解しましょう。

DXの費用は、大きく以下の3つに分類されます。

  • システム導入費(初期費用)【例:SaaSツールの初期設定費など】
  • システム運用費(ランニングコスト)【例:SaaSツールの月額利用料など】
  • 人件費・人材育成費(隠れコスト)【例:DX推進担当者の人件費など】

特に「人件費」は、ベンダーの見積書に載らないケースがほとんどです。

しかし、投資対効果を厳密に計算する上では、人件費や人材育成費も含めて「総投資額」として捉える視点が、経営者には不可欠です。

また特定ベンダーの独自仕様に過度に依存すると、ベンダーロックインが発生します。

ベンダーロックインが発生すると、将来的な乗り換えコストや追加開発費が増加し、費用対効果を悪化させる要因になります。

DXの費用対効果の測定ステップ

DXの費用対効果は以下のステップで測定できます。

ステップ内容具体的にやること
1現状の評価現行工数・作業時間・ミス・人件費・機会損失を棚卸し
2目標設定(To-Be)削減したい工数・改善したい業務・KPIを数値で設定
3効果試算(数量ベース)削減できる時間・件数などを“数量”で算定
4コスト計算初期費用・運用費・人件費・育成コストを合算
5利益計算数量ベースの効果を金額に換算
6ROI・回収期間算出ROI%と回収年数を計算して投資判断

この手順に沿って数字を当てはめるだけで、誰でも論理的な投資判断が可能になるでしょう。

1.現状の評価

DXの効果を正しく測定するためには、業務の現状を数値で把握する作業が欠かせません。

スタート地点を明確にしなければ、改善幅を判断できず、投資判断も曖昧になるでしょう。

作業時間や担当者の負荷を定量化すれば、業務のどこがボトルネックかを明確にできます。

手入力作業の月間工数や、入力ミスによる手戻り時間を把握すれば、改善後の効果を数値で比較が可能です。

業務負荷と課題を数値で可視化する工程が、DXの投資判断と効果測定の基盤となります。

自社のDXの成熟度を客観的に把握する手段としては、IPAが公表している「DX推進指標」を活用する方法もあります。

自己診断フォーマットに沿って現状をスコアリングしておくと、DX投資の優先度や投資範囲を検討する際の基準として役立つでしょう。

2.目標設定

現状を把握したら、次に「目標設定(To-Be)」を行います。

DXで改善したい数値を明確にし、どの水準まで引き上げるかを定義してください。

目標設定では、改善後の状態を具体的かつ測定可能な指標(KPI)に落とし込む作業が重要です。

具体例

  • 受発注システムの導入により、手入力の工数(月80時間)を90%削減し、月8時間にする。
  • 入力ミスによる手戻り(月10時間)をゼロにする。

「業務効率化」といった曖昧なスローガンではなく、「工数を月72時間削減する」という明確なゴールを設定することが、DX成功の鍵となります。

3.効果試算

目標が定まったら、目標を達成することで「どれだけの効果(リターン)が生まれるか」を試算しましょう。

効果を試算する際、改善対象となる業務プロセスを細かく分解し、各工程がどれだけ短縮されるかを把握すると、効果を正確に算出できます。

プロセス単位で可視化することで、改善幅を見誤るリスクが減ります。

効果試算の段階では、まだ金額に換算せず「どれだけの業務が改善されるか」という物理的な効果を明確にしましょう。

4.コスト計算

次に、ステップ3で算出した効果を得るために必要な「コスト(投資額)」を計算します。

ベンダーから提示された見積書だけで判断せず、人件費や人材育成費もすべて含めて算出します。

具体例:

  • システム導入費(初期):300万円
  • 月額利用料(運用):5万円/月(=年間60万円)
  • 社員研修・教育費:40万円
  • DX推進担当の人件費:120万円
  • 投資額(1年目)=300万円+60万円+40万円+120万円=520万円
  • 投資額(2年目以降)=年間60万円

経営者としては、初年度の「初期投資額」と、2年目以降の「ランニングコスト」を分けて把握することが重要です。

5.利益計算

ステップ3で試算した「効果」を「利益(金額)」に換算します。

具体例:

  • 削減効果:合計82時間/月
  • 担当者の平均時給(諸経費含む):2,500円
  • 年間の利益額=82時間/月×2,500円/時×12ヶ月=246万円

ステップ3の「工数削減」という効果が、「年間246万円の利益」という、経営判断に使える数値に変わりました。

6.ROIの算出

最後に、ステップ4で算出したコストとステップ5で算出した利益の数字を使い、「ROI(費用対効果)」を算出します。

  • 利益額(年間):246万円
  • 投資額(初年度):520万円
  • ROI(%)=(246万円÷520万円)×100=47.3%

今回の事例の場合、ROIが47.3%ということになります。

ROIがプラスであり、かつ自社の目標利益率や資本コストを上回っていれば、経営判断として「投資を実行すべき」と判断しやすくなるでしょう。

DXの費用対効果に対するよくある質問

Question1:なぜDXの費用対効果は「測れない」「測りにくい」と言われるのですか?

主に3つの理由があります。

  • 効果が長期にわたる:ビジネスモデル変革など、効果が発現するまでに1〜3年かかる場合があるため。
  • 定性効果が多い:従業員満足度や顧客体験の向上など、すぐには金額換算しにくい効果が多いため。
  • 目標が曖昧:「DX推進」自体が目的化し、具体的な数値目標(KPI)を設定していないため。

この記事で解説した6つのステップを踏むことで、これら3つの課題は解決できます。

Question2:DXの効果が出るまで、どれくらいの期間がかかりますか?

DXの効果が表れるまでの期間は、投資規模や取り組み内容によって変わります。

RPAの活用やSaaSツールの導入による工数削減など、比較的シンプルな改善であれば、3ヶ月〜半年ほどで成果を確認しやすい傾向があります。

一方、データ分析を基盤にした新サービス開発や、事業全体の仕組みの見直しは、成果が出るまでに1年〜3年かかることが多いです。

短期で成果が見込みやすい施策と、中長期で成長に寄与する施策の両方を同時に進めることが、DXを成功させるうえで重要です。

Question3:定性的な効果(社員の満足度など)は、具体的にどう評価すれば良いですか?

「定量化(数値化)」する工夫が重要です。

例えば「従業員満足度」であれば、DX導入前後に匿名のアンケートを実施し、「業務のしやすさ(5段階評価)」や「会社への満足度(点数)」を比較します。

また、「離職率」や「有給休暇取得率」の変化を測定するのも有効です。

満足度が上がれば離職率が下がり、結果的に「採用・教育コストの削減」という定量的な利益としてROI計算に組み込めます。

例えば、DX導入で離職率が5%改善し、年間の退職者が2名減少したと仮定しましょう。

仮に1名あたりの採用・教育コスト(求人広告費、研修費、OJT担当者の工数など)が100万円かかっていた場合、『年間200万円の利益(コスト削減)』としてROI計算に組み込めるようになります。

Question4:ROIの計算はエクセルでもできますか?

はい、エクセルで十分可能です。ROIの計算式自体は「(利益÷投資額)×100」とシンプルです。

重要なのは計算式よりも、「利益」や「投資額」の根拠となる数値をどれだけ正確に洗い出せるかにかかっています。

まずはこの記事の「測定ステップ」に沿って、「コスト計算(初期・運用・人件費)」と「利益計算(工数削減×時給など)」の項目を一覧にしてみてください。

Question5:投資判断の基準として、ROI以外に見るべきものはありますか?

はい、最低でも「投資回収期間(Payback Period)」はセットで見るべきです。

投資回収期間は「投資した資金を何年で回収できるか」を示す指標で、キャッシュフローを重視する中小企業にとってROI以上に重要な場合もあります。

さらに厳密に評価するなら、将来のキャッシュフローの価値を現在の価値に割り引いて計算するNPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)も有効な指標です。

しかし、まずは「ROI(何%儲かるか)」と「回収期間(何年で元が取れるか)」の2つを確実に押さえることから始めましょう。

まとめ | DXの費用対効果は必ず測定しよう

この記事では、中小企業の経営者がDX投資で迷わないための基準として、費用対効果(ROI)の測り方、投資コストの考え方を解説しました。

DX推進で失敗する企業の多くは、導入前に「数字での評価軸」を持てていないことが共通点です。

まずは、自社で最も非効率だと感じる業務を一つ選び、この記事で紹介した費用対効果の測定6ステップを当てはめてみてください。

工数・コスト・効果を可視化するだけで、DX投資の判断精度は大きく向上するでしょう。

とはいえ、自社だけで費用対効果を設計しようとすると、「どこまでをコストに含めるべきか」「定性効果をどう数値化するか」で悩むケースが少なくありません。第三者の視点を入れたい場合は、DX投資のROI設計や効果測定の整理をサポートすることも可能です。必要に応じて、お気軽にお問い合わせください。

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DX

オフショア開発会社12選【2026】DXを加速する信頼のパートナー

「コストを抑えたいが、品質の低下や納期遅延は絶対に避けたい」「過去にオフショアでコミュニケーションの壁にぶつかり、失敗した経験がある」とオフショア開発を検討する際、このような不安を抱えている担当者の方は少なくありません。

本記事では、単なる「安さ」の追求ではなく、日本特有のビジネス習慣や品質基準を熟知した信頼できる開発パートナー12社を厳選してご紹介します。

本記事を読み終える頃には、自社のプロジェクトに最適なパートナーの選び方が明確になります。 コスト削減と高品質な開発を両立させ、失敗のないオフショア活用への第一歩をここから踏み出しましょう。

記事監修者

DX開発パートナー

DX開発パートナーは、20年以上の実績を持つリーダーを中心に、
多様なバックグラウンドを持つ若手コンサルタント、PM、エンジニアが連携するチームです。
柔軟で先進的な発想をもとに、DXの課題発見からシステム開発・運用までを一貫して支援しています。クライアントの「DX・システム開発」に関する課題やお悩みをもとに、役立つ情報を発信しています。

信頼できるオフショア開発会社12選

株式会社Fabbi Japan(ベトナム):日本品質と高度な技術力の融合

株式会社Fabbi Japanはベトナムの若く優秀なエンジニア集団でありながら、代表をはじめ日本での実務経験が豊富なメンバーが中心となっているのが特徴です。

2023年の日本ベストベンチャー100選に選出された唯一のベトナム企業でもあります。クラウド技術やAI(人工知能)を活用した開発に強みを持ち、単なる実装だけでなく、上流工程からの提案力を備えています。

日本国内にも拠点を持ち、密なコミュニケーションが可能なため、初めてのオフショアでも「丸投げ」のリスクを抑えたプロジェクト進行が期待できます。

VNEXT JAPAN株式会社(ベトナム):先端技術と品質管理を両立するパイオニア

VNEXT JAPAN株式会社は15年以上にわたり日本市場に特化し、400名超のエンジニアが在籍するIT総合サービス企業です。

AIやブロックチェーン領域に早くから着手しており、600件以上の実績に基づく高度な技術提案が強みです。ISTQBゴールドパートナーとしての厳格な品質管理体制により、日本クオリティを維持した「ラボ型開発」を実現しています。

技術的な難易度が高いDXプロジェクトにおいて、戦略から実装まで任せられる信頼のパートナーです。。

GMO-Z.com RUNSYSTEM株式会社(ベトナム):GMOグループの信頼と20年の実績

GMO-Z.com RUNSYSTEM株式会社はGMOインターネットグループの一員として、20年以上にわたり日本市場向けオフショア開発を牽引しています。

CMMIレベル3やISMSに準拠した厳格な管理体制により、金融などの高セキュリティ案件でも「日本品質」を維持できるのが最大の強みです。

自社AIプロダクト開発で培った高度な技術力に加え、日本の商習慣を熟知したブリッジSEが円滑な連携をサポートします。大手ならではの安定感と技術力を兼ね備えた、失敗できないDXプロジェクトにおける最良のパートナーです。

フジネット・システムズ株式会社(ベトナム):日本市場に特化した圧倒的な安心感と3,000件超の実績

フジネット・システムズ株式会社は2000年の創業以来、売上の9割以上を日本市場向けが占める「日本専念型」の老舗オフショア企業です。最大の特徴は、日本の商習慣や「そこを何とか」といった細かなニュアンスまで汲み取れる深い理解力があり、日本人スタッフや日本語堪能なエンジニアによる円滑な連携が強みです。

約700名の精鋭が在籍し、大規模な基幹システムからWeb、モバイル、マイグレーションまで、3,000件以上のプロジェクトを完遂してきた豊富な知見を誇ります。

CMMIレベル3やISMSといった国際基準を全社で徹底しており、日立グループや三菱電機グループなどの大手企業からも長年選ばれ続ける「日本クオリティ」です。

合同会社Solashi Japan(ベトナム):事業成長を第一に考える『伴走型』

合同会社Solashi Japanは、ベトナム・ハノイを拠点に「日本品質」と「ビジネス視点」を融合させた開発を提供する、成長著しいITパートナーです。2025年には「ベトナム優秀IT企業トップ10」に選出されるなど、高い技術力を誇ります。

最大の特徴は、単なる受託開発に留まらず、顧客の事業ロードマップから逆算して最適な開発体制を提案する「コンサルティング型」の姿勢にあります。

日本人プロジェクトマネージャーが上流工程から伴走するため、抽象的なアイデアを動くプロダクト(MVP)へと落とし込むスピードと精度が非常に高いのが強みです。

株式会社クライド(フィリピン):フィリピン拠点の高いコストパフォーマンス

株式会社クライドは、アドテクノロジー領域で実績を持つ上場企業グループ(フリービットグループ)のノウハウを背景に、フィリピン・セブ島を拠点としたオフショア開発を提供しています。

最大の強みは、日本人の上級エンジニアやブリッジSEが徹底したプロジェクト管理を行うことで、オフショアにありがちな品質のばらつきや納期遅延のリスクを最小限に抑えている点です。

フィリピン拠点は英語圏である利点を活かし、最新の技術ドキュメントへの迅速なアクセスやグローバルな開発基準の採用が容易で、柔軟かつスピーディーな体制構築を得意としています。

株式会社LIG(フィリピン・ベトナム):デザインの知見を活かしたユーザー中心の開発

株式会社LIGは、国内屈指のWeb制作実績で培ったクリエイティブ力を武器に、フィリピン・ベトナムでのオフショア開発を展開しています。

最大の特徴は、単なる工数提供ではなく、顧客と共に最適なチームを創り上げる「BiTT(Build Team Together)」という独自のスタイルです。UI/UXデザインから実装まで一気通貫で対応できるため、ユーザー体験を重視する新規事業やサービス開発において圧倒的な強みを発揮します。

コミュニケーション能力の高いブリッジSEが介在することで、仕様の背景にある「目的」を共有し、オフショア特有のズレを防ぐ柔軟な開発が可能です。

株式会社Sun Asterisk(ベトナム・フィリピン他):ビジネス・デザイン・技術を融合させたプロ集団

株式会社Sun Asteriskはベトナムを中心とした約2,000名規模のグローバルリソースを擁し、単なるシステム受託を超えた「事業共創」を掲げるデジタル・クリエイティブスタジオです。東証プライム上場の確かな経営基盤のもと、新規事業の立ち上げから大規模なDX推進まで、今まで1,000件以上のプロジェクトを成功に導いてきました。

上流工程のコンサルティングからUI/UXデザイン、本開発、そしてリリース後のグロース支援までを一気通貫で提供できる点が特徴です。

デザインシンキングやアジャイル開発を主軸とし、ビジネス視点を持ったコンサルタントと精鋭エンジニアが密に連携するため、変化の激しい現代の市場において「勝てるプロダクト」をスピーディーに形にできます。

トッパジャパン株式会社(ベトナム):AI・ロボット・日本企業の窓口で安心の『突破』力

トッパジャパン株式会社は、ベトナムの精鋭エンジニア集団「TOPPA SOLUTIONS」と強固に連携し、日本国内基準の品質とオフショアのコストメリットを両立させる実力派企業です。

単なるWeb制作に留まらず、複雑なアルゴリズムの実装やC++を用いたエンジン開発など、難易度の高いプロジェクトを完遂する実力を持っています。また、教育関係のシステム開発実績が豊富な点も大きな特徴です。

株式会社コウェル(ベトナム):QA(品質保証)への並外れたこだわり・安定したラボ型開発

株式会社コウェルはベトナムを主要拠点に400名超の体制を誇る、日本のオフショア開発シーンにおける「品質重視派」の筆頭格です。

最大の特徴は、単なるプログラミングに留まらず、ソフトウェアテスト(QA)の専門領域においてグローバルレベルの認定(ISTQB Global パートナー)を受けている点です。

さらに、日本企業が最も懸念する「品質」に対して極めて論理的・組織的なアプローチも持っています。

主力である「ラボ型開発」では、経験豊富な日本人ブリッジSEが上流工程から深く関与し、コミュニケーションロスを徹底的に排除します。

株式会社モンスターラボホールディングス(世界20カ国):世界20ヵ国の知見を結集したDXのハイエンド・オフショア

株式会社モンスターラボホールディングスは世界20ヵ国33都市(2025年時点)に広がる巨大な拠点ネットワークを駆使し、低コスト開発を超えた「グローバル水準のDX推進」を提供するデジタルコンサルティング企業です。

最大の強みは、上流工程のビジネスデザインやUI/UX設計を日本のコンサルタントが担当し、世界中の多様な専門人材をプロジェクトごとに最適にアサインできる点です。

AI、IoT、AR/VRといった先端技術や、海外展開を見据えた多言語・多文化対応のプロダクト開発において圧倒的な優位性を持ちます。

オフショア開発会社選びで失敗しないポイント

オフショア開発を成功させるためには、パートナーとなる開発会社の選定が最も重要になります。 

コスト削減だけを目的にして、単価の安さだけで会社を選んでしまうと、プロジェクトは失敗に終わる可能性が高いです。 

なぜなら、開発の現場では技術力だけでなく、円滑なコミュニケーションや管理能力が問われるからです。 

選定の際は、見積もりの金額だけでなく、信頼できる体制を持っているかを慎重に見極めなくてはいけません。 

自社の課題を深く理解し、解決策を具体的に提案してくれる会社を選ぶ姿勢が重要です。 

複数の会社を比較検討したり、担当者と直接話したりして、相性を確認することが大切です。 

コミュニケーション体制とブリッジSEの質を確認する

海外の開発会社を選ぶ際は、コミュニケーション体制とブリッジSE(エンジニア)の能力を最優先で確認すべきです。 

オフショア開発における失敗の多くは、言葉の壁や文化の違いによる認識のズレから生じるからです。 

日本語が通じるというだけでなく、日本の商習慣や細かなニュアンスまで理解できる人材がいるかが鍵を握ります。 

例えば、仕様書の行間を読んで質問してくれたり、リスクを事前に察知して報告してくれたりするブリッジSEは優秀です。 

また、チャットツールでのレスポンスの速さや、定期的なビデオ会議の開催頻度についても確認しておきましょう。 密に連絡を取り合ったり、情報を透明化したりする仕組みが整っている会社であれば、安心して任せられます。 

言葉の不安を解消できる強固な体制がある会社を選ぶことが、プロジェクトをスムーズに進めるための条件です。

自社の課題解決に似た「実績」と提案力を見極める

候補となる会社が、自社の解決したい課題と似たプロジェクトを成功させた実績を持っているかどうかも重要です。 

類似の実績が豊富な会社には、過去の経験に基づいたノウハウが蓄積されており、効率的に開発を進められるからです。 

例えば、同規模のシステム構築事例を見せてもらったり、直面した課題への対処法を質問したりしてみます。 

自社の業界特有のルールや業務フローを理解しているかどうかも、判断のための大きなポイントになるでしょう。 

さらに、言われた通りに作るだけでなく、より良い解決策を積極的に提案してくれる姿勢があるかも確認しましょう。 受け身ではなく、ビジネスの成功を目指して伴走してくれるパートナーを選ぶことが、投資対効果を高めます。 

成功の鍵を握る「リスク管理」の全貌を知る

オフショア開発には、国内開発にはない特有のリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。 

会社選びのポイントを押さえた後は、実際に起こりうるトラブルの正体とその回避策を具体的に知る必要があります。

リスクを事前に把握しておくことで、開発会社との交渉や契約をより有利に進めることが可能になります。 

例えば、セキュリティ対策の甘さや、予期せぬコスト増加といった問題は、事前の準備で防ぐことができます。 

さらにオフショア開発のリスクや国別の特徴について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。

自社のDX戦略を共に描けるパートナーを見つけ、事業成長を加速させていきましょう。

よくある質問(FAQ)|オフショア開発会社について詳しく知りたい方々の声に回答

Q1. 言葉や文化の壁が心配です。日本語は通じますか?

A1. 「ブリッジSE」が在籍する企業を選べば、日本語での円滑な進行が可能です。 

多くのオフショア企業には、日本語と現地の言葉、そして技術知識を持つ「ブリッジSE」が在籍しており、彼らが翻訳と管理を行います。 

ただし、文化の違いによる「認識のズレ」はゼロではありません。

これを防ぐためには、チャットツール等で「密なコミュニケーション」を取り、小さな疑問もその都度解消する姿勢が重要です。

Q2. 日本国内への発注と比べて、本当にコスト削減になりますか?

A2. 単価は下がりますが、トータルの費用対効果(ROI)で判断する必要があります。 

オフショア開発の人月単価は日本より安価な傾向にありますが、目先の開発費だけで判断するのは危険です。

「コスト削減」だけでなく、浮いた予算でより高機能なシステムを作る、あるいは国内では採用困難な「専門技術を持つエンジニア」を確保するといった、投資に対する利益(ROI)の最大化を目的とすることをおすすめします。

Q3. オフショアだと品質が悪くなるイメージがありますが、大丈夫でしょうか?

A3. 「丸投げ」をせず、品質基準を具体的に合意すれば高品質な開発が可能です。

品質低下の主な原因は、オフショアかどうかよりも、発注側が仕様を曖昧にしたまま「言わなくても分かるだろう」と開発会社に任せきりにすること(丸投げ)にあります。

どのような品質を求めるかを明確にし、定期的にデモを確認するなどの「主体的なプロジェクト管理」を行うことで、品質はコントロールできます。

Q4. 開発会社選びで失敗しないための「最大のポイント」は何ですか?

A4. 会社の規模や安さよりも、自社との「相性」と「提案力」を重視してください。

パートナー選定の成否は、システム開発の成功を9割左右します。 

単に言われた通りに作るだけでなく、貴社のビジネス課題を深く理解し、「本当に必要な機能は何か」や「業務効率化のヒント」まで提案してくれる「伴走型」のパートナーを選ぶことが成功への近道です。

Q5. ITの専門知識がないのですが、依頼しても問題ありませんか?

A5. はい、可能です。大切なのはIT知識よりも「ビジネスの目的」です。

技術的な翻訳はプロである開発パートナーが行います。発注者側で重要なのは、「なぜシステムが必要なのか」「システムで何を達成したいのか(例:工数を◯時間削減したい)」という目的と計画を明確にすることです。 

目的さえ明確であれば、専門家が最適なシステムの形を提案してくれます。

Q6. セキュリティ面や情報漏洩のリスク対策はどうなっていますか?

A6. 国際的なセキュリティ基準(ISMSなど)を持つ信頼できる企業を選びましょう。

開発データの管理や情報漏洩は確かにリスクの一つです。 

そのため、国際規格(ISMS認証など)を取得しているか、契約時に秘密保持契約(NDA)を締結できるか、そして開発環境のセキュリティ対策が十分かなどを事前に確認し、信頼できるパートナーを選ぶことが不可欠です。

Q7. 開発後の「保守・運用」も対応してもらえますか?

A7. 多くの企業で対応可能です。開発段階から計画に含めておきましょう。

システムは作って終わりではなく、運用開始後も改善やトラブル対応が必要です。

納品後の「無償保証期間」や、その後の「保守運用契約」について事前に確認し、契約に含めておくことで、リリース後も安心してシステムを利用し続けられます。

Q8. 開発期間はどれくらい見ておけば良いですか?

A8. 規模によりますが、余裕を持ったスケジュール設計が重要です。

小規模なものであれば2〜3ヶ月、大規模なものは1年以上かかる場合もあります。

重要なのは、開発パートナーと「いつまでに、どの機能が必要か」をすり合わせ、現実的なスケジュールを立てることです。

また、仕様変更や手戻りが発生する可能性も考慮し、リリース時期にはバッファ(余裕)を持たせておくのが賢明です。

まとめオフショア開発会社は慎重に選ぼう

オフショア開発を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)は、コストを抑えつつスピード感を持って事業を成長させるための強力な手段となります。 

本記事では、日本品質を深く理解し、確かな技術力を持つ厳選された12社をご紹介しました。 

どの企業も単なる外部委託先ではなく、貴社のビジネスを共に創り上げる戦略的なパートナーになり得る実力を持っています。

開発会社を選ぶ際は、提示された見積金額の安さだけで判断をしてはいけません。 なぜなら、プロジェクトの成否はブリッジSEの能力や、過去の類似実績に基づく提案力の差で決まるからです。 

意思疎通がスムーズに進み、自社の課題に寄り添ってくれる体制があるかを見極める姿勢が大切です。

まずは気になる数社に相談をして、担当者の対応や提案の質を直接確かめることから始めてみてください。自社に最適なパートナーが見つかれば、DXによる業務改善や新規事業の立ち上げは大きく加速します。 

正しい知識と信頼できる仲間を手に入れて、失敗のないDX推進を実現しましょう。